vs騎士団長④
「もう一戦?」
私はその言葉に驚いていたのだが、彼は当然と言わないばかりの形相でこう言ってきたのだ。
「おい...、なぜあの黒い魔法を使わなかったんだ?、本気でやってくれよ...」
その言葉に訓練場がどよめく。
「まさか...魔法使いなのに魔法なしでグレイブ騎士団長とあそこまで張り合っていたのか?」
とか。
「女の身でありながらなんて奴だ...」
とか。
「手を抜いていたって事か?」
などと言われてしまい息が苦しくなってしまう私。
「それは...」
そこまで言いかけて口ごもる。
言えない...。
いや...、言いたくない。
通常状態の私が魔法を一切使わずに戦ってもここまで僅差の戦いを強いられているのだから、彼は私が魔法を使って戦った場合の結果はわかっているのだとは思う...。
彼では私に絶対に勝てないと言う事に...。
しかし、私はそんな彼の経歴に泥を塗りたくなくてわざと魔法を使わなかったのだ。
そうすればいい感じの勝負になる事は何となく分かっていたので、平たく言えば手を抜いていたという事になる。
グレイブはきっと手を抜かれた事にイラだっているのだろう。
そう思うと胸が痛い。
私は大きく息を吸った後にこう答えた。
「いいよ、本気でやってあげる」
「ケロナ...」
彼は私の名前を呼びながら第2戦の為に構えているのでした。




