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虹色の翼

「【変異(ヴァリエーション)】」


 そう呟いた彼の背中から美しく七色に輝く翼が生える。


 私達はその綺麗な羽に見惚れながらもただ恐怖を全身で感じていました。


 足が震えて呼吸は乱れ、思考が定まらない。


 全身に不快感を感じながらも、絶対的な捕食者に抗わなくてはいけないと言う状況が私を襲う。


(私がどうにかしないと...、ケロナはきっともう動けないし、キィアには期待できない...、だから私が...!)


 どうにかして自分を落ち着けたいと言うのに足が震えてしまっていました。


 落ち着こうとすればするほど脳内はパニックを起こし真っ白になる。


 彼の不敵な笑みを見ているだけで今すぐにでもここから逃げ出したいと言う欲求に駆られてならない!


 そう思った矢先、ケロナは無理やり体を動かして彼に斬りかかった!!


「ウォォォォォ!!」


 魂の叫び声を放ちながら刀を振り回す彼女の姿は、まるでその一撃の為に命そのものを捨てるかのような気迫を感じる!


(でもあの体でこれ以上の無茶をしたら...!)


 命の保証は今度こそできません。


 いくらケロナの生命力が人並み外れているとは言え、彼女の体は人間の物なのですから...。


「ケロナっ!! それ以上の無茶はダメです!!」


 ...そうは言っても恐らくケロナの耳に私の声は聞こえないでしょう。


 なぜなら、彼女の体を突き動かしているのは最早体力ではなく気力だと思えたからです。


 ただ目の前の【眷属】を殺す。


 その目的を達する為に彼女の体が動き続けているのですから、今更それを止めることなどできはしないのです。


 蒼刀を振り上げて一太刀浴びせようとした彼女でしたが、その切先がアポロに届くことはありませんでした。


 なぜなら、アポロは翼を翻すとそのまま私たちを放置してこの場を去ったからです。


 なぜ彼がこの絶好の機会を見逃したのかは知りませんが、今はその事について考えるよりもただ生き残れた事を喜びたい。


「は...はぁ...」


 全身に張り詰めていた緊張感が一気に解き放たれ、私はその場に倒れました。


(生きてるって...素晴らしい事ですね...)


 死の実感を常に側に置いていると、その感覚から解き放たれるだけで開放感が物凄い。


 私がただその場に倒れていると...。


「ケロナお姉ちゃん!!」


 と叫びながらすぐ様ケロナに回復魔法をかけるサラの姿が見えるのでした。

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