【赤眼の白豹】
「サラはここで待っていて!」
そう叫んだ後で私が外に出てみると、そこはもう戦場でした。
魔法が飛び交い剣の打ち合う音がそこら中で響く様はこの世の終わりを暗示しているかのようです。
よ〜く周りの様子を伺ってみると、この前倒したのと同じ【テンペストウルフ】の大群が町の中で暴れ回っていました。
1体でもレベル50を超えるこいつらが群れをなして襲ってくるとこんなにも恐ろしいのかと思わずにはいられません。
さっきまで平和だったはずの【城塞都市クレイトン】はまるで魑魅魍魎の跋扈する地獄へと姿を変えている事に今になって気がつきました。
「こいつら...いったいどこからわいてきやがった!!」
「知るか!! 口より手を動かせ!!」
そんな現状でも戦う者達の声がそこら中から聞こえてくるのだが、戦況はあまり良くないように見える。
それもその筈だ。
【テンペストウルフ】がこれだけいたのでは戦局が良くなる筈もない。
しかも野良のモンスター達も今が好機とばかりに町に攻め入っているらしく、弱い一般市民達から順に死んでいくと言う酷い有様だ。
「ちっ!」
私は思わず舌打ちをしながら冒険者達の獲物を横取りする。
本来ならばマナー違反だが、現状が現状なので多めに見てもらおう。
バンっ!!! と私が【テンペストウルフ】に回し蹴りをお見舞いすると一撃で崩れ去った。
それを見ていた冒険者達が「すげぇ...」と次々に口ずさむ。
「油断しない!! まだまだ敵は沢山いるよ!!」
私の言葉と行動を見た瞬間から勢いづく者達もいる。
「誰に物を言ってんだ!! レベル1の癖に!!」
「俺たちは冒険者だぞ!! 自分たちの町くらい自分たちで守る!!」
「ウォォォォォ!!! ケロナに続けぇ!!」
まあ、勢い着いたからと言ってもこの町に住む冒険者達のレベルは低いんだけどね...。
そう思いつつも戦局を見て苦戦している者達に手を貸し続ける。
しかし、意外な事に善戦している者達も少なからず存在していた。
1匹の【テンペストウルフ】を相手に10人がかりで挑めば案外なんとかなっているのもチラホラ見えている。
しかも城の方から高レベルの騎士達が出撃し始めているので、時間はかかるだろうが徐々に鎮圧できると私は踏んだ。
だからこそ、私は城の頂上の上で余裕ぶっている【赤眼の白豹】に視線を移す。
「後は...、遠くで余裕ぶってる白豹にとどめを刺すだけね!!」
バンッ!! と地を蹴って城の頂上へと足を踏み入れるのでした。




