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静かなる怒り

 地に倒れ伏し安らかに眠る【テンペストウルフ】に目をやっていると、ディールが声をかけてきた。


「やったな! 嬢ちゃん、というかあんたあんなに強かったんだな! まるで高レベルの【魔女】かかなりの修行を積んだ【聖女】並の魔法力だったぞ!」


 そう答えられても嬉しくなどない。


「取り逃がした...!」


 ギュッと拳を握りしめながら聖典を逃してしまった事に後悔の念を抱く私。


 そんな私を見て動揺している彼にとって、なぜこんなにも私が怒っているのか分からないだろう。


 彼にしてみれば【テンペストウルフ】を倒しただけでも充分な収益があるのだろうが、私にとってそれだけでは不充分なのだ。


「なんで嬢ちゃんがそんなに怒ってるか知んないけどよ、取り敢えずこいつをギルドに運ぼうぜ、きっと大騒ぎするだろうよ、【テンペストウルフ】のレベルは40〜60程度の大物だからな! この辺には生息するはずがない生き物だから報奨金も物凄いだろうし、レベルもかなり上がるかもしれんぞ!!」


 ウキウキしながら死体を運び用意を整えるディールとは対照的に、私の心境は静かなる怒りで燃え盛っている。


(...逃してしまった)


 その言葉が何度も頭の中で連鎖するのだが、彼の一言で少しだけ考えが変わる。


「まあなんだ、嬢ちゃんがあの綺麗な本に何かしらの執念を燃やしているのはよくわかったが、今は頭を落ち着かせて休もうぜ、報奨金は絶対沢山とってくるって約束するからそれで美味いものでも食べような!」


「...そうだね」


 私はふうっと一息吐いて自分を落ち着かせた。


 彼のおかげで行き場のない怒りを鎮められたのだ。


 しかし、あの本のせいで私達の村が崩壊したのは紛れもない事実なので、いつかは破壊してやると胸に誓うのでした。

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