旅立ち
〜翌日〜
私達は出来るだけ村に残っていた物資を集めて旅の支度をしていた。
前日の騒動で殆ど荒れ果ててしまってはいるのだが、まだまだ使えそうな物も多数残っているのでありがたく使わせて頂こう。
...どうせもう私とサラ以外に生きている村人はいないのだから。
しばらく物色をしながら私は彼女に声をかけた。
「本当にいいんだよね? サラ」
「うん! ケロナ姉ちゃんと旅するの今から楽しみだよ」
この数日間サラの笑顔を見ていなかっただけに、今の彼女を見ていると少しだけ安心する。
(よかった、ちょっとだけ元気になってくれてる)
私は静かに笑みを浮かべると彼女と自分の服を新調していた。
今までは村で生きていくために充分な布で作られた服だけを着用していたのだが、流石に旅に出るとなるとそれだけでは心許ない。
なので子供用の旅服と私が流れ着いた時に着ていた合羽を着用する事にする。
「お姉ちゃん...、まだその服持ってたの?」
ジト目で古くなっている私の青い合羽を見て不満そうな声を垂れ流す彼女。
「別にいいでしょ、これくらいしか記憶喪失前の私が持っていた物なんてないんだから」
そこまで自分で呟いた瞬間に思い出す。
「おっと、もう一つ私が身につけてた物があったね」
サラと私の住んでた家の残骸から赤いマフラーを見つけ出して首に巻きつけた。
大分痛んでしまっているかと思っていたのだが、まるで新品同様な清潔感に驚く私。
「うん! やっぱりこれを首に巻きつけてるだけでなんとかなりそうな気がしてくる!」
そう言って片手でガッツポーズを決める私を見て2度目のジト目を繰り出すサラ。
「ケロナお姉ちゃんって意外と過去に縛られるタイプだよね...」
「うるさいなぁ、サラは」
「あっ! お姉ちゃんが怒った!」
きゃっきゃっと騒ぐ彼女との旅立ちは意外と明るい物になるのでした。




