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【エリーゼ号】

 エリーゼと共に停泊場に戻ると、受付係から【エリーゼ号】の出港準備が整ったと言われたので港に向かう私達。


 〜港〜


「これが【エリーゼ号】...か」


 私の目に飛び込んできたのは豪華客船をモチーフにしたような個人用ボートだった。


「お父様が遊泳用に購入した物ですが、船としての性能は一級品です、沖合でも走れる馬力が備わっている魔石を搭載し、風が不安定な時でも自身の周りに30メートルに限り風を操作できる特殊なフィールドを常に発生させる機能まであるんですよ」


 自信満々に説明する彼女に私達は以下のような反応を見せる。


「へえ...、よくわからないけどすごそうね」


「これほどのボートを遊泳用に用意できるとは...、【シュライン公爵】の財力は侮れません...」


「もちゃもちゃ...、そんな事より...もちゃもちゃ...、早く出港しないと...もちゃもちゃ...、追っ手がきちゃうよ」


 サラがイカ焼きを食べながらそう言ってきたので早速船に乗り込む。


 と言うか普通イカ焼きを食べていて【もちゃもちゃ】なんて言う音でるかな?。


 そう思いながらも私達は出港するのでした。


 運転手はもちろん...。


「エリーゼ運転を頼む!」


 と私が言うと変な表情を浮かべる彼女。


「えっ? 私は船の免許なんて持ってませんよ?」


「はっ? じゃあ誰が運転するの?」


「「「「...」」」」


 私達は全員が同時に顔を見合わせる。


 そう...、それは当然のことでした。


 まさかここまできて運転手がいないという当たり前の危機に直面する事になろうとは...。


 今この瞬間になるまで誰も気がついていないのでした。

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