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絶望

「ガハッ!!」


「キィア様!!」


 遂に勇者達が押され始める。


 しかもマーカイルは戦ってもいないのに...だ。


 奴は空中に佇んでただただ私たちが力尽きるまでの流れを楽しんでいるように見える。


「どうしたんですか? まさか勇者様ともあろうお方が【傀儡使】ごときに敗北を喫するとでも言うのかな?」


 煽り性能の高い言葉を選びキィアの怒りを買っている彼は悪魔のようにケラケラと笑う。


「くそっ...」


 跪くキィアに僧侶の娘が回復魔法をかける。


「大丈夫ですか!? キィア様!!」


「サンキュー、ステラ」


 金髪の僧侶に回復させて貰ったキィアは再び剣を取り周りの人形を破壊していく。


 しかし、次の瞬間にサラが声を上げた。


「勇者様!! その人形は壊しちゃダメ!!」


「何っ!?」


 彼女の声に一歩退く勇者。


「なぜだ!? ケロナの妹よ」


 私はキィアが切り裂こうとした人形をよ〜く眺めているとその理由が分かった。


「あれは...トミーおじさん?」


 私は目を疑ったがそうにしか見えない。


 トミーおじさんとは私がくるまでの短い間だったが両親のいないサラの面倒を見てくれた気のいい人だ。


 血のつながりがなくても幼いサラのことを放っておけなくてなんとなく面倒を見ていたらしい。


 私が生活の基盤を安定させるまでつきっきりで村の仕事を教えてくれたのもトミーおじさんなので私達にしてみれば頭の上がらない人物である事に間違いない。


 そんなトミーおじさんが今やマーカイルの傀儡となって私たちに襲いかかってくると言う現実に目を逸らしたくなる。


「くそっ! これじゃ戦えない!」


 トミーおじさんの人形に手も足も出ない様子の勇者様を見てニヤつくマーカイル。


「くくく...、貴様ら人間はいつもそうだ、大事な人間を人形にして襲わせれば何もできずに死んでいく...、何という愚かな種族なのだ...と笑わずにはいられないな」


 まるで人間の心がないかのような笑い声をあげる彼を見て勇者はある作戦を立てるのでした。

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