フィアナ、暇を持て余す
あけましておめでとうございます!
今年もよろしくお願いします!!
(こ、これは――テロリストが襲撃してきて、有耶無耶にしちゃえ大作戦!)
(なんて、大胆な!!)
私は、感動に打ち震えていました。
たぶんこの人たちは、テストが嫌で嫌で仕方がなかったのでしょう。
たしかにテロリストが銃を持って押し寄せてくれば、テストどころではありませんからね。
(私も少しだけ考えたことはありますが、まさか本当に実行に移す人がいるなんて!)
私がそう判断したのには、いくつかの理由がありました。
まず本物のテロリストにしては、あまりに動きが素人過ぎるのです。
魔導具頼りな時点でナンセンスですし、魔法銃を構える動きも隙だらけ。
(う~ん、どうしましょう――)
テロリスト役の生徒は、全部で5人ほど。
その気になれば10秒で制圧できそうですが、私は動きを決めかねていました。
(気持ちは分かる……、とってもよく分かります!)
(テストなんて、この世から消え去って欲しいですよね! このままテロリストごっこに乗っかっちゃいましょうか。……でも、テスト勉強頑張りましたし、やっぱり現実逃避だけじゃなにも産みません。ここは涙を飲んで、前を向いて進まないと――)
悩ましい葛藤です。
そうこうしているうちに、私たちは教室の壁際に集められていました。
銃を構えた男が教室を闊歩するその光景は、まさしく久しぶりに感じる非日常そのもの。
覚えていた年号たちは、スポーンと頭から飛び立ってしまいました。
「こちら、チームイプシロン。特進クラスの制圧を終了――指示を求む」
(わぁ、随分と本格的です!)
もはや今からテストをされても、碌な結果にはなりません――そんなこんなで、私は状況を見守ることにしました。
テロリスト役の生徒たちの行動は機敏で、今日のために練習してきたことを伺わせます。
誰かと通話していたテロリストリーダーの男は、
「この中に、フィアナという者はいるか?」
「へ?」
――まさかの私を指名してきたのでした。
(へ……? ストライキに私も巻き込もうとしてるんですかね!?)
(テストを有耶無耶にできるなら、あり? いやいやいやいや、せっかくセシリアさんとエリンちゃんが、勉強教えてくれたのに!)
そんな葛藤も一瞬のこと。
私は、最終的にその言葉に乗っかることにしました。
「私が、フィアナです!」
理由は、その方が楽しそうだったから。
せっかく健康な体を手に入れたのです。
テロリストごっこなんてしてないで、現実を見ようなんて諭すのはナンセンス!
お祭りは、全力で楽しんでなんぼなのです。
「「なっ!?」」
「フィアナさん、なんで名乗り出ちゃうんですか……」
「そうですわ。もしかすると敵の狙いは――」
立ち上がった私に驚きの声を上げるのは、エリンちゃんとセシリアさんでした。
「狙いは私ですか?」
「ほう、随分と勇気があるじゃないか」
「それほどでも。私が狙いなら従いましょう――その代わりクラスメイトには、絶対に手を出さないで下さいね」
ノリノリで、テロリストごっこに便乗する私。
「やけに余裕だな。まさか俺たちが本気でないとでも?」
「まさか。こんな大それたことをする勇気に敬意を――いくら私でも、ここまでするとは考えてもみませんでした」
もし失敗すれば、下手すれば退学になるんじゃないでしょうか。
それともエリシュアンでは、生徒の自主生に重んじて、こういう形のテスト対策も認められているのでしょうか?
それなら私は、次回からは毎日テロを起こします。
「何をニコニコしてやがる。くそっ、不気味なやつめ」
「そ、そう怒らないで下さい。ちゃんとやりますから!」
私は、両手を差し出します。
テロリストの男が、私の両手をぐるぐると縛り上げました。
何人かの男が私に銃を突きつけ、そのまま私は教室前方に連れて行かれます。
簡単に言えば、人質役です。
「今回のことは、随分と前から計画していたんですか?」
「ああ。腐ったこの国を変えるには、多少の痛みは必要。あの方に付いていけば、必ずこの国は良い方向に向かっていくはずだ」
私の疑問に、そう答えるリーダー風の男。
(ふむふむ。そこの設定までちゃんと作り込んでるんですね!)
私は、感心して頷きます。
「ふん。しかし国が誇るエリートの集団といっても口ほどにもないな。こんなアッサリと制圧できるとは――国の未来が不安になる」
「軽口を叩くな。おまえたちは、こいつらを体育館に連れていけ。いいな、油断はするなよ」
「へいへい」
そんな囁きを交わし合うテロリスト役の生徒たち。
どうやら今回の事件は、他にも参加者がいるようで――いったい何人の生徒が、このテロ作戦に参加しているのでしょう。
その後、テロリストたちは2手に分かれることにしたようです。
私を監視するグループと、クラスメイトたちを連行するグループの2つで、
「フィアナさん! 必ず、必ず助けに戻りますから!」
「私は大丈夫です。そちらこそ決して無茶はしないで、冷静に行動して下さい!」
「もう。フィアナちゃんは、こんなときまで――」
泣きそうな顔で、そう言うエリンちゃん。
セシリアさんたちとは、別れ際にそんな言葉を交わし(まるで演技だとは思えないぐらいに、気迫のこもった言葉でした)
「ほら、早く進め! 余計なことしたら、ぶっ殺すからな!」
脅すような言葉に急かされ、クラスメイトたちは体育館に向かっていくのでした。
***
教室の片隅、縛られたまま立たされている私。
舞台の中心から遠ざかってしまった気がします――端的に言えば暇なのです。
「…………で、私は、いつまでこうしていれば良いんですか?」
「は?」
教室に残されたのは、覆面テロリスト2人と私の3人です。
いい加減、待っているのにも飽きた私は、
「何言ってんだ、こいつ。恐怖で頭がおかしくなったのか?」
「油断するな。なにせ相手は、エリシュアンの魔王の名を恣にする生徒だ――おい、お前。怪しい動きをしたら、即射ち殺すからな」
緊張感のない私の言葉に、苛立った様子で返してくる覆面男たちですが、
「その銃、もうちょっと工夫したほうが良いですよ。そんなにずっと突きつけられたら、細工し放題ですからね」
「は?」
私の言葉に、ギョッと銃に視線を落とすのでした。





