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フィアナ、悲鳴をあげる

 ある日の放課後の教室にて。



「た、た、た、た、大変です~!!」


 私――フィアナは、エリンちゃんとセシリアさんに泣きついていました。


「どうしたんですの?」

「うん。まずは落ち着いて」


 スー、ハーと深呼吸。

 担任のティナ先生の悪魔の宣告を思い出し、


「もうすぐ定期テストがやって来てしまいます~!!」


 私は、そう悲鳴をあげるのでした。



 誰もが避けられない試練――それが学期末にある期末試験なのです!

 おまけにティナ先生が言うには、


「期末試験の成績不振者には、補講があるらしいんです。せっかくの夏休みが、せっかくの夏休みが――補講漬けに~!!」

「フィアナちゃん?」


 涙目で叫ぶ私を見て、


「授業中に寝てるからです。補講、一緒に受けましょう」

「エリンちゃ~ん!?」


 エリンちゃんは、天使のような顔でバサリとそう切り捨てます。


「いいもん、いいもん。テストなんて知りません――この学園は実技がすべてだって、マティ先生もそう言ってましたもん!」

「はいはい、馬鹿なこと言ってないで勉強しますわよ!」


 教室から脱走しようとする私をむんずと掴み、セシリアさんは私をズルズルと図書館に引っ張っていくのでした。




***


 数分後。

 私の前には、うず高く参考書の山が積まれていました。


「うう、助けて下さい。お父さん、お母さん――(魂が抜けた顔)」

「頑張りましょう。眠くなったら、私が奇跡で起こしてあげますからね」


 にっこり笑顔で、恐ろしいことを言うのはエリンちゃん。


 聖女の奇跡の無駄遣い――これで何日でも徹夜で勉強ができますね!

 絶対に、嫌です!!


 同じ平民だし、エリンちゃんも勉強は苦手なはず、と失礼な期待をしていました。

 しかし蓋を開けてみれば、コツコツ努力家なエリンちゃんは座学の成績はトップクラスであり、



「うわ~ん! 裏切り者~!」

「……?」


 思わずそう思ってしまう私です。


「ねえ。エリンちゃん、もうすべて忘れてクエストに行こ?」

「そんな目をしても駄目です。来年もフィアナちゃんと一緒の学年になるため――私、心を鬼にして頑張ります!」

「ヒーン!?」


 私が、エリンちゃんにビシバシしごかれていると、


「セシリアさま、学習書持ってきました!」

「ヘレナ、マーガレット、ご苦労さまです!」


「そ、そこの2人――助けて!」

「大丈夫です。セシリアさまの地獄の合宿にかかれば、赤点ギリギリの私たちですら成績上位者の常連になれましたから!」


「地獄の合宿!? 待って、それって何が――」

「あれは……、嫌な事件でしたね」

「気になるんですけど!? ねえ、すっごく気になるんですけど~!?」


 私がギャーギャー騒いでいると、


「あのぉ、他の生徒の迷惑になるのでお静かに――」

「はい……」


 司書の先生に叱られてしまい、私はひっそり教科書に戻り、



「スピー、スピー」

「「起きて下さい(まし)!?」」


 う~ん、う~んと悪夢にうなされる私なのでした。





***


 そうして時は進み、あっという間にテスト前の最終週になりました。


 テストへの対策期間は、土日を残すのみ。

 来週の頭から、いよいよ怒涛の試験ラッシュが始まってしまいます。

 テスト対策の進捗は――絶望的です!


 60点が合格ラインのテストで、予測問題で私の点数は30点ぐらい。

 これでも0点から30点なので、大いなる進歩ですね!



「こうなったら、せめて予測問題集だけでも完全暗記を――」

「フィアナさんを別荘に幽閉して、48時間みっちり基礎から叩き込めば今からでも――」


 ぶつぶつと据わった目で、何かを呟くエリンちゃんとセシリアさん。

 付きっきりで勉強を見てくれている2人には申し訳ないと思いつつ、これ以上は、もう私の精神が持ちません!


「い、息抜きも。こういうことは、息抜きだって大事だと思うんです!」

「息抜き?」


「はい、大食い大会でも言うじゃないですか。食べ終わった後は、消化のためにも適度な運動が大事だって――それと同じです!」

「まったく違う気がしますが」


 セシリアさんが、ぱちくりと目をまたたきます。

 エリンは、そっと参考書を私のテーブルに追加しました。


 助け舟は、意外な方向からもたらされました。



「セシリアさま、私も息抜きは大事だと思います」

「同意見です。何事でも、集中力には限界がありますからね」


「十分、休んでると思いますわよ?」

「それはセシリアさま基準ですわ」


 ヘレナさんたちも、そうセシリアさんを説得してくれます。

 彼女たちも成績は合格ギリギリの駆け込み組であり、私とも近い感性を持っています――ただし点数は、遥かなる高みにいますが。



「そうだ! エリンちゃん、お泊り合宿しましょう!」

「お泊り合宿?」

「はい。2人で近くの宿に泊まって、息抜きしながら勉強するんです!」


 分からないところがあればすぐに教えてもらえるし、実技試験対策なら私も協力できます。

 きっと効率がいいはずです――私は、身振り手振りを交えてそうアピール。



 決して、お泊りで遊びに行きたいだけ……、なんてことはありません!


「お泊り!」

「昼間は、パーッと街に遊びに行きましょう!」


「お勉強もちゃんとしないとダメですよ?」

「ま、まあ? そんな日もあるってことで!」

「遊ぶ気まんまんじゃないですか。あっちゃダメです――」


 ジトーっとした目で、こちらを見てくるエリンちゃん。



「えーっと、えーっと――」


 そんなやり取りをしていると、セシリアさんが何やらソワソワしていました。

 そわそわ、そわそわ、と口を開けては閉じてを繰り返し、


「あ、セシリアさんもどうですか?」

「フィアナちゃん、さすがにお貴族様を平民の安宿に招くわけには――」

「行きます、行きます、行きます――行きますわ!!」


 セシリアさんは、ものすごい勢いでコクコクと頷き、


「それじゃあ明日、時計塔の下に集合しましょう!」



 そう約束して、私たちは解散するのでした。

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