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003 異世界転生?

「お顔の色が冴えませんね。お食事をお持ちしましょう。クラルテ様のお好きな物をご用意させて頂きます」


 ダンテさんは、執事の鏡といった雰囲気全開で、演技というより、まるでゲームから飛び出して来たみたい。


「え……。あの」

「大丈夫です。きっと、記憶を無くされても、味覚は変わらないでしょう。少々お待ちくださいませ」

  

 言葉をかける隙もなく、ダンテさんは素早く部屋を出て行った。


 部屋に一人残されると、急に不安が込み上げてくる。アレクもダンテさんも、やっぱり演技には見えない。まるで本当に私が王女だと言わんばかりに振る舞っていて――。


 私は、ベッドから降り鏡台へと足を向けた。

 床は石造りで冷たく、歩く度に擦れるネグリジェは滑らかなシルクの柔らかさ。すべての感覚がリアルなのに非現実的で、心の奥に浮かんだ疑念を否定しながら鏡に向き合った。

 そして、そこに映る自分を見て、ホッとした。


「何だ。やっぱり私だわ」


 鈍臭そうで和風な顔立ちの自分がいる。

 この顔で王女だと言うなら、やっぱり企画だからとしか考えられない。そう安心しかけた時、私はあることに気が付いた。


「な、何で……」


 私も、アレクと同じ様に瞳の色が青い。

 でも、違うのは瞳の色だけ。

 それ以外は普通に自分のまま。

 まさかと思い、私は慌てて窓辺へと走り、カーテンを勢いよく開け放った。


 外は、海も空も、沈みかけた夕日で赤く染められていた。

 ここは、海に面した高台の宿のようだ。

 眼下に広がる白い町並みには、微かにオレンジ色の明かりが灯っている。夜を迎える支度をしているのだろうか。


 私が想像していた、トルシュの灯の世界観、そのままの情景が広がっていた。

 ああ。私の聖地に来たのだと、心が弾む。


「イメージ通りだわ。でも、初日に泊まるのは、空港近くの宿で、都会の筈なのに……。あら?」


 夕日を背に、船が見えた。黒い影が向きを変え、見覚えのある形になる。


「あの帆の形……まるで海賊船? まさか。に、似てるだけよね」


 『トルシュの灯』には、海賊が登場する。その海賊船とそっくりな影が見えたが、外国ならあんな船が普通にあるのかもしれない。そう理由付けて平静を保とうとした時、北の方から大きな羽音が聞こたえた。

 暗くなりかけた空に、三羽の鳥の影が舞い上がる。

 鳥、と思ったけれど、よく見ると違った。

 それは、もっと大きくて――。


「きょ、恐竜!?」


 私は驚いて腰が抜け、その場に尻もちをついてしまった。空飛ぶ恐竜なんて、いくらハイスペックなツアーだとしても、用意できる筈がない。

 それに、あのずんぐりとした風体は、恐竜というより、ドラゴンの様に見える。

 まさか。本当に――。


「私、異世界に……もしかして、流行りの異世界転生……とか? 私、飛行機で寝ていた筈なのに」


 あの時、火山の小規模噴火が起きて――もしかしたら、私は死んでしまったのかもしれない。

 


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