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犬の恩返し  作者: あいまり
岡井美雪編
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第13話 睡眠

 風呂から上がった後は、髪を乾かす。

 部屋にあるドライヤーで、私はシロの髪を乾かす。

 白い髪が風に揺れるのを見ながら、指でワシャワシャとして、彼女の髪をまんべんなく乾かす。

 そこで、とあることに気付き、私は口を開いた。


「そういえばシロ。シロの見た目って、自分で選んだの?」

「んーん。私は美雪と同い年の女の子が良いって言っただけだよー?」


 その言葉に、私は顎に手を当てる。

 つまり、彼女の見た目は神様が決めたということになる。

 気付いたこと、というのは、シロの髪が少し短いことだ。

 ショートヘア、と表すのが正しいか。

 おまけにシロの顔が整っている分中性的に感じる部分があったので、二年生に上がる直前くらいに転校した子のことを思い出したのだ。


 彼女はイジメを受けていたようで、三学期くらいの時期に髪を切られ、恐らくそれが決定打となり転校した。

 同じクラスでもなかったし、あまり関わらなかったが、かなり中性的な顔立ちをしていたのを覚えている。

 そして髪を短く切られた姿はかなりボーイッシュで……正直言うと、かなり似合っていたのだ。


 もしシロの見た目が神様の好みだとしたら、まさか彼女の事件は……。

 ……いや、流石にそんなわけないか。うん。

 私は首を振って先ほどの考えを忘れ、シロの髪を乾かす。

 やがて、完全に乾いた彼女の髪を櫛で整え、私は息をついた。


「はい、終わり」


 私の言葉に、シロは興味津々といった様子で自分の髪を両手でポフポフと触る。

 そして綺麗に整っているのを見て、パァァァと顔を輝かせた。


「美雪ありがとー!」

「いえいえ。それじゃあどいて。私が髪乾かすから」

「あ、はーい」


 素直に椅子から立ち上がるシロに笑いつつ、私は自分の髪を乾かす。

 自分の髪を乾かすのは、毎日のことなので慣れっこだ。

 隅から隅まで髪を乾かした後は、寝るための準備をするのだけれど……。


「シロ~。ベッドと布団、どっちがいい?」


 押し入れを開けつつそう聞いてみる。

 すると、シロは「ん~」と声を漏らした後で、私を見た。


「美雪はどっちがいい?」


 ……私を優先すると言うのか。


「えっ……私は、毎日寝慣れてるベッドが良いかな」

「じゃあ私もベッドで寝る~」

「えっ?」

「えっ?」


 シロの言葉の意味が分からず、私はしばらく呆ける。

 そんな私を見て、彼女は「ん~?」と言いながら首を傾げる。

 しばらく思考を整理してから、私は口を開いた。


「それはつまり……一緒に寝る、と?」

「うん。そうだよ?」

「……なんで?」


 私がそう聞いてみると、シロは悲しそうな顔をした。

 それに、私はついギョッとする。


「……美雪は私と寝るの、嫌?」

「や……別に嫌じゃないけど……」

「ホント!?」


 私の返答に、先程とは一変、キラキラした目で言うシロ。

 相変わらず喜怒哀楽が激しいことで……。


「じゃあ分かったから、さっさと寝よ? 今日色々あったから眠い」

「うん分かった!」


 その言葉が聴こえると同時に、体に衝撃を感じた。

 数瞬後、バフッという音と共に、私とシロはベッドに寝転んだ。


「ちょ、シロ!?」

「美雪と一緒~」


 私に抱きつきながら嬉しそうに言うシロ。

 なんか、何度か同じようなやり取りをしているからか、私も正直慣れてきた。

 試しに頭を撫でて見ると、気持ちよさそうに目を細めた。

 もし彼女に尻尾でも生えていたら、今頃尻尾は横にブンブン大きく振れていたことだろう。


「分かったから、ホラ、ちゃんと枕に頭乗せて」

「はーい」


 シロが嬉しそうにパフッと私の枕に頭を乗せるのを見つつ、私も枕に……というところで、私の分の枕がないことに気付く。

 あぁ、そっか……せめてシロ用の枕を……いや、取りに行くのも面倒だな。

 まぁ一日くらい枕無しでも良いかと思いつつも、私はシロを強く抱きしめた。


「美雪?」

「ベッド狭いから……近づかないと」


 私の言葉に、シロは「あ、そっか」と言って、私を抱きしめ返す。

 少し暑いけど、十月ともなれば大分涼しくなってきたので、気にならない。

 私は手探りで電気のリモコンを握り締め、電源を落とした。

 部屋が暗くなると、途端に眠くなる。

 私はリモコンを適当な棚の上に置き、静かに瞼を閉じた。

 そして意識は、闇に潰える……。

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