表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
犬の恩返し  作者: あいまり
岡井美雪編
12/132

第12話 入浴

 シロを洗うのは想像以上に疲れた。

 いや、別に彼女が暴れたりとかしたわけではない。

 ただ、やはり人を洗う経験というのを初めてしたので、なんていうか、精神面で疲れた感じだ。

 力加減とかも気を付けないといけないし、結構神経を使う。


「あ、明日は頑張って自分で洗うねっ」

「んー……」


 恐らく疲れが表情に出ているのだろう。シロが慌てた様子でそう言って来た。

 しかし、それに真面目に返す気にもなれず、私は生返事をした。


「ほ、ホントだよ?」

「分かったから……今日は色々疲れた」


 そう言いつつ、私は体から力を抜いて浴槽の壁に体重を預ける。

 すると、ずっとその様子を見ていたシロがゆっくり私に近づき、抱きしめて来た。


「わ、ちょっと……」

「私も疲れた~」


 ヘラヘラと笑いながら、シロは私の体を強く抱きしめる。

 肌が直接触れ合って、なんだか居心地が悪い。


「ちょ、シロ……!」

「えへへ、美雪あったかい」

「それはお風呂が温かいから……! はぁ……」


 何を言っても無駄だと思い、私はため息をついた。

 すると、シロはニマニマと笑って、私に背中を預けて来た。

 目の前に白い髪がある。

 私は彼女の華奢な体を後ろから抱いて、彼女の肩に顎を乗せる。


「……シロはさぁ、こっちの世界でしたいこととかあんの?」


 なんとなく気になって、そう聞いてみた。

 すると、シロは「んー」と声を漏らす。


「美雪と一緒にいたいくらいかなー」

「あっそ」


 相変わらずのシロに私はそう返した。

 すると、彼女は私の腕の中で身を捩り、私と顔を合わせた。

 彼女の肩に顎を乗せるために顔を前に出していたため、かなり近い位置に彼女の顔がある。


「わッ……」

「美雪はさ、私としたいこととか無いの?」


 その言葉に、私は頬を引きつらせた。

 シロとしたいこと、か……。


「……無い、かな……」

「えー」


 えーと言われても仕方がないじゃないか。

 突然人間になって目の前に現れて、おまけの今日だけで色々わけがわからないことだらけなのだから。

 せめて考える時間が欲しい。


「まぁ私も、シロと一緒にいられるだけで幸せだよ?」

「ホント!?」


 目をキラキラさせるシロに、私は「もちろん」と言って笑って見せた。

 すると、彼女はさらにパァァァと顔を輝かせて、「美雪大好き!」と言って抱きついて来る。

 結構動きが大きかったためか、水しぶきが上がり、浴槽の中のお湯がザブンザブンと波を立てる。


「わ、ちょ、シロ! こんな狭い場所で暴れたら危ないでしょ!」

「えへへ~。美雪~」


 私の注意を聞き流し、シロは嬉しそうに私を抱きしめる。

 まぁ、初めてのお風呂だし、今回ばかりは大目に見るか。


「ハイハイ、私も大好きだよ」


 そう言いつつ抱きしめ返すと、シロは嬉しそうに笑った。

 それからしばし抱擁し合った後で、のぼせるといけないので風呂を上がった。

 シロに服を着せていると、ちょうどトイレに行くところだった美香が私達のことを見ていた。

 色々迷った挙句に「シロがのぼせた」と答えて見ると、渋々納得してくれた。

 かなり苦い顔をしていたけれど、気にしない気にしない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ