第11話 お風呂
晩ご飯も食べて、夜やるべきことと言えばあとは一つ。
お風呂だ。
「シロ。お風呂入ろっか」
勉強を終えてそう声を掛けてみると、勉強机で突っ伏していたシロがこちらを見た。
少し勉強させてみた感じ、どうやら学習面に関しての知識はバッチリ脳にインプットされているらしいので、彼女が勉強する必要性は無いと判断した。
とはいえ、私だけが勉強していると、ずっと退屈そうにしていたけれど。
「おふろ?」
「うん。シロお風呂入るの初めてでしょ? 色々また教えたりしないと……」
「美雪とお風呂!?」
私が全部説明し終わるより先に、シロは満面の笑みで立ち上がる。
しばらく立ったまま目をキラキラさせていたけど、やがて、頬を紅潮させながらピョンピョンと飛び跳ね始める。
その様子に苦笑しつつ、私は自分の分とシロの分の着替えを用意し、彼女の手を引いてお風呂に案内する。
階段を下りて一階の廊下を歩いていた時、お風呂の方向から、ちょうどお風呂上りの美香がタオルで頭を拭きながらこちらに歩いて来るのが見えた。
彼女は一度私とシロの顔を見てから前を向き、もう一度私達の顔を見た。
綺麗な二度見だ。
「え、は……お姉ちゃん達、もしかして、一緒入るの!?」
「えっ……そうだけど?」
私の言葉に、美香の目が大きく見開かれる。
そして、シロを見て、もう一度私を見た。
「……ゃんは……」
その時、何か小さく呟いた。
何を言ったのか聞き取れず、聞き返そうとしたが、それより前に美香は私の横を通り過ぎて階段を上がっていった。
「何アイツ……」
「美雪~。早くお風呂入ろ?」
私の腕を掴みながら言うシロに、私は「う、うん……」と頷いた。
そして二人でお風呂の前の脱衣場にて、服を脱いでいく。
……否、私が脱がしていく。
「それじゃあシロ、バンザーイ」
「バンザーイ!」
私の言葉に、シロは嬉しそうに両腕を上げる。
部屋着なので緩い服にしていたため、脱がすことは容易かった。
服を脱がせ、同じようにインナーとズボンも脱がせると、残るは下着だけ。
そう……下着……。
「ぅ……」
「……? 美雪どうしたの~?」
キョトンと首を傾げながら言うシロに、私は深呼吸をする。
落ち着け、私。シロは犬だぞ? オマケにこの世界ではイトコだぞ?
まずは深呼吸だ……。
すー……はー……おーけい。
「ごめんごめん。じゃあ下着脱がすね」
まずこちらに背を向けさせて、ブラのホックを外していく。
やがて外すと……。
「……シロ、ブラの必要無くない?」
「ふぇ……?」
見事なまでのまな板。
いや、それでも女子としては、しっかりこういうのは身につけさせないと……。
私はブラを洗濯機に放って、最後の難関に差し掛かる。
……ショーツ。
これを脱がせるのには、相当度量がいる。
そこで、一瞬、シロにやり方を教えて脱がせればいいのでは、と考える。
しかし、そこで確実にシロが脱げる保証もないし……。
「……えいっ」
目を閉じて、私はシロのショーツに手を掛け、一気に下ろした。
なんとかシロに足をどかすように指示を出し、さっさとショーツを洗濯機にしまう。
すでに裸になっていた私は、できるだけシロと目を合わせないようにしながら、彼女の背中を押して浴室に促す。
「ホラ、早くお風呂入ろ」
「わーい。美雪とお風呂~」
鼻歌混じりにそう言いながら、浴室に踏み込むシロ。
私はそれを見ながら、自分の胸にソッと手を当てた。
なんでこんなに心臓がバクバク言うんだろう。
なんでこんなに顔が熱くなるんだろう。
なんでこんなに……幸せなんだろう。




