第23話 赤
美雪と黒田さんをくっ付けるために必要なステップは、私の予定では残り一つ。
ちなみに、美雪が黒田さんのことを好きなのは分かっているけど、黒田さんが美雪をどう思っているのかは知らない。
でもまぁ、好きでしょ。うん。
もし美雪の告白を断ったりしたら容赦しない。
その時は闇討ちをしよう。そうしよう。
まぁそんな冗談はさて置き、その最後のステップのために情報収集がしたかった。
というわけで、本日私は、美雪が図書室に本を返して借りに行っている間に、情報収集をすることにした。
「ねぇねぇ、ちょっと」
教室から出て、下校しようと廊下を歩いていた手近な男子に声を掛けた。
名も知らぬ男子は、私を見て顔を赤らめた。
「し、白田さん!? お、俺に何か用?」
「用って言うかぁ、聞きたいことがあるんだけど」
私の言葉に、男子は「聞きたい事?」と素っ頓狂な声で聞き返してくる。
それに私は頷き、続けた。
「あのね、もし好きな人と出かけるならどこが良い?」
「え……そうだなぁ……俺は遊園地とか良いんじゃないかと思う」
「遊園地?」
「うん。あそこなら純粋に楽しめるんじゃないかなって」
なるほど……と、私は納得する。
恩返しの最終ステップ。それは、美雪と黒田さんにデートをしてもらうのだ。
一緒にお出かけして距離を縮めて、そのまま告白……すれば良いんだけどなぁ。
まぁやらなかったら、その時はその時だ。
やはり、二人で遊ぶというのは重要なことだ。
私も美雪と一緒に遊ぶのはかなり楽しかったから。
「あ、あのさぁ……」
美雪との楽しかった記憶を思い出していると、男子が顔を赤らめながら聞いてくる。
それに私は首を傾げて「なぁに?」と尋ねた。
すると男子は「えっと……」と顔を赤くして、少し目を伏せる。
おい、このまま恥ずかしがっていてもお前の童貞が露呈するだけだぞ。
「し、白田さんは、その……デートに誘いたい好きな人が、いたりするの?」
彼の言葉に、私の頭に美雪の顔が過った。
それと同時に、出会った頃のことを忘れられていたことと、美香ちゃんとのやり取りを思い出した。
……嫌なこと思い出しちゃったや。
私は先ほど思い出したことを一度忘れ、「え~」と言いながら顔を赤らめて見せる。
この男も美雪に惚れる可能性がある。
ここは、墜としておいて損は無い。
「好きな人とか……いないよぉ」
「で、でも、白田さん美人だし、結構モテるんじゃ」
「うーん……そういうのはよく分からないけど、でも……」
そう言いながらモジモジしつつ、顔を背けながらもチラチラと男子に視線を向けてみせる。
髪の先を指先で弄り、私は続けた。
「でも……モテたい人はいるよ」
そう答えた瞬間、男子の顔が真っ赤になった。
はい、堕ちた。
まぁこの程度の童貞なら余裕だったな。
そう内心笑いつつ、私ははにかんで見せる。
「じゃ、じゃあ、私もう行くねっ! また明日!」
そう言いつつ手を振って見せると、男子も顔を真っ赤にして手を振り返してくる。
さて、流石にもう他の男子は帰っちゃったかな。
まぁ、私の内心でも遊園地でほとんど確定しているし、別に良いかなぁ。
そう思って教室に入った時だった。
「白田さん。ちょっと良い?」
「うん?」
声を掛けられ顔を上げると、そこには……クラスでも派手な部類のギャル達が、私を見ていた。




