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「その他大勢」に転生したので、定時退勤を死守します

最終エピソード掲載日:2026/02/11
前世で過労死した女は二度目の人生でたった一つだけ決めたことがある。
鐘が六つ鳴ったら帰る。

異世界の宮廷書記局で五年間働いた。
誰にも気づかれない場所で書類を整え仕組みを直し続けた。
提出した改善案は二百四十七件。
けれどその全てに自分の名前はない。

上司が奪った。
昇進を三度潰された。
それでも記録だけは残し続けた。
正確に。一日も欠かさず。

ある日この宮廷で断罪の儀が開かれるという噂が届く。
王子が令嬢を裁くらしい。
けれど担当書記官として台帳を開いた彼女はすぐに気づいてしまう。

申請書が出ていない。

手続きの不備を見つけただけだった。
正義感でも使命感でもなく書記官としての仕事をしただけだった。
それなのに宮廷は静かに揺れ始める。

五年ぶんの記録は誰の目にも届かない場所に眠っている。
たった一人だけ退勤時刻にすれ違う無表情の監査官がいる。
三年間毎日同じ挨拶だけを交わしてきたその人が初めて足を止めた日から何かが変わり始める。

奪われた名前は取り戻せるのか。
鐘が鳴っても関係のない世界で彼女はどこまで自分の時間を守れるのか。
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