表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
君臨するは我にあり! ~菓子姫平定録~  作者: ペンギンフレーム
一章 ダンジョンアサルト編
6/114

episode1-6 ユニーククラス

 召喚系スキルによって呼び出された召喚獣は召喚士の命令に絶対服従だ。

 俺の号令を合図に、それまで静かに待機していたゼリービーンソルジャーズが迅速に動き出す。ブルーとホワイトの2体だけを俺たちの近くに残し、あとの5体が足音の方向へ駆けていく。


 同時に俺は少しだけ前に出て沖嶋たちが背後に来るよう位置を変える。


 あの紫色の光は異世界の侵略者たちが常用している光魔石という光源特有の色だ。俺たちの世界で言うところの懐中電灯、もっと遡ればランタンや松明にあたる道具ということになる。

 もちろん、今沖嶋が持っているように敵の光源を奪った人間ということも考えられ、近づいて来ているのが必ずしも敵とは限らない。

 だがどちらでも問題ない。こいつらはあの犬の怪物を倒した後、沖嶋たちに襲い掛かりはしなかった。敵と味方の区別、すなわちモンスターと人の区別がついているということだ。


 もしも相手が人間だった場合のことを考えあえてゼリービーンソルジャーズへの号令は声を張ったのだが、それに対する反応は人語ではなく甲高い笛の音だった。


 この音、そういえばさっきも……。


「沖嶋、お前らを襲ってた2匹の犬が笛を吹いてなかったか?」

「吹いた。俺たちに襲い掛かってくる前に1回だけ」


 やっぱりか。恐らくそれは会敵を知らせる合図。そして二度目の笛の音がなかったから、様子見に次のモンスターが駆け付けた、ってところか。 

 地図もないダンジョンを探索するのに走り回るというのは考えにくいし、ゼリービーンソルジャーズの召喚で大きな音を立ててしまったことからも、近づいて来ているのはモンスターの可能性が高いというのはわかっていたが案の定だな。


 しかしわざわざ簡易的な連絡に笛を使っているとなると、モンスター共もダンジョンの中で起きている全てを把握できているというわけではないようだ。ダンジョン内を自由にワープしたり、侵入者の位置をダンジョンが自動で探知するような機能はないという噂は聞いていたが、本当らしいな。


 走り出した5体のゼリービーンソルジャーズはすぐ暗闇に溶けるように見えなくなったが、数秒の後、近づいてくる集団の光源によって再びその姿を現す。


「あれ大丈夫なの? 結構な数に見えるけど……」


 如月の言う通り敵の数が多い。目視できる範囲にざっと10体前後といったところか。俺たちを護衛している2体を除くと、単純な数はゼリービーンソルジャーズの2倍。相手は全て先ほどと同じ犬の怪物、コボルトだ。


 コボルトとは異世界からの侵略者の中でも偵察や索敵を主として行動するいわゆる斥候だ。侵略軍の一員であるため戦闘能力がないわけではないが、それでも異世界の兵士モンスターの中では弱い方に分類される。


「問題ない」


 情報を整理しつつ不安そうな如月に力強く答える。

 さっきの戦いの様子からして、全てのゼリービーンソルジャーズが同一の強さを持っているのならたかだか2倍程度のコボルトに負けることはない。


 よし、大分冷静になってきた。ちゃんとこれまで調べて来たことも思い出せる。


「俺はあんまり冒険者のこと詳しくないけど、召喚獣ってあんなに強いものなのか? 氷室って、冒険者になったばっかりなんだよな?」

「そうだな……」


 俺の予想通り、5体のゼリービーンソルジャーズはコボルトの集団を圧倒していた。

 レッドは敵の装備ごと相手を真っ二つにしているし、グリーンの一撃を食らったコボルトは頭部が陥没してぶっ倒れている。イエローは自分の身の丈ほどもある盾でまとめてコボルトを壁に押し込んで潰し、パープルは鋭く長い槍で相手の喉笛を切り裂き、ブラックは身の丈以上の大鎌を振り回してまとめてコボルトを切り裂いている。


 会敵から壊滅までは本当にあっと言う間だった。


「ハッキリ言ってこいつらは普通じゃない」


 召喚系のスキルを最初から使えるのはノーマルクラスでは召喚士のみだが、一般的に召喚士の召喚スキルだけでモンスターとやり合おうとする場合、スキルレベル3相当、3番目に解放される召喚獣でなければ安定して勝つことは出来ないと言われている。

 レベル1やレベル2相当の召喚獣でも状況や工夫を凝らすことで勝つことは出来るが、安全マージンを確保するのなら最低でもスキルレベル3が必要というわけだ。

 もちろんそれだって敵の数や種類、冒険者の才能によっていくらでも変動するが、一般的かつ平均的に見た場合、召喚士が戦力として使い物になるのはスキルレベル3から。大器晩成型のクラスと言える。


「強い。強すぎるくらいだ」


 それに対して、このゼリービーンソルジャーズはどうだ。

 いくら相手が弱めのモンスターだとは言っても、スキルレベル1相当の召喚獣でありながらタイマンでそれを圧倒する強さ。複数を相手にしてもなんら問題ないことも実証された。さらに命じられるまでもなく敵味方の区別がつく賢さ。突撃と護衛の役割分担を自分たちで行っていたため、俺に聞き取れないだけで恐らく本人たちは意思の疎通が出来ている。敵が光源を持っているとはいえそこにたどり着くまでの暗闇でも普通に移動出来ていることから、五感以外の感覚器官を持っている可能性もある。


 理屈は知らないがモンスターは時間経過によって徐々に強くなっていくらしいから、一般的に冒険者が戦うモンスターと比較すると今戦ったコボルトは弱い状態なんだと思う。しかしそれを加味した上でも、やっぱり盛り過ぎだろう。


「だから多分、」


 今すぐに思いつくだけでもスキルレベル1どころか3でも過剰な能力を備えていることがわかるが、俺が何よりも規格外だと感じているのは、一度のスキル発動によって7体が召喚されるということ。

 普通の召喚士の中にも群体型の召喚獣を呼べるタイプはいる。あるいは単体型であってもスキルの同時使用により複数を呼び出すことは出来る。

 だが、前者の場合群体を前提とした強さで1体1体はそれほど強くないものだし、後者の場合はそれ専用のスキルが要求される。

 にもかかわらず、ゼリービーンソルジャーズはそれぞれがスキルレベル1の召喚獣とは思えない強さを持ち、特殊なスキルも必要としない。

 なりたての冒険者には1体だけでも勿体ないほどの性能だというのに、それが7体。


 明らかな異常。それが意味することとはつまり


「俺はユニーククラスなんだろうな」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ