1回戦です
「居合い術。
お嬢さんイーストエッジの人間か。
珍妙な格好で出場したものだ、そんななりで戦えるのかね?」
「剣士なら口で語らず、その剣で語ってはいかがか」
「は、それはごもっともだ」
守護結界の魔法が張られてから会場内の歓声がマシになったおかげか、スミレと対戦相手の声が聞こえた。
いや、もしかしてこれも別の魔法か?
風系統の魔法で会場の歓声を緩和して、不正行為防止、いや、どちらかというと行き過ぎた挑発行為防止の為か、はたまた対戦者同士の言葉も拾ってエンターテイメントとしているのか。
面白い試みだな。
観客席からも見てみたいな。
なにはともあれ、スミレと相対する男が駆け出した。
ロングソードを両手で構え、スミレへと一直線に向かう。
「ブレイブハートの先鋒が突っ込んだ!
体格差で一気に追い込む算段か!?」
アナウンサーの実況も先程に比べれば大分抑えられてるな。
邪魔にならないように対戦者へ配慮しているのだろうか。
スミレの対戦者はとくに大柄と言うわけではないが、スミレが小柄なので大きく見える。
その対戦者がスミレ目掛けて剣を振り上げた。
しかし、そこまでだ。
スミレは振り上げられた剣を待つことなく、踏み込んで相手の脇腹に、入居合い一閃、一撃の元卒倒させた。
「い、一撃ぃぃい!
ステラのスミレ選手、相手を一撃の元屠りましたあ!!
今何をしたのでしょうか!?
申し訳ございません、私には見えませんでしたあ!!」
いや、屠ってないよ死んでないよ!?
そうかあアナウンサーの人には見えなかったかあ。
お、いや、凄いなこの水鏡の魔法。
スローでリプレイまで再生されるのか!?
「凄まじい速度で居合い一閃!
いつ踏み込んだ!?いつ刀を抜いた!?
速い!速すぎてスローでも追いきれていません!」
アナウンサーさんが興奮している。
どうですうちの戦闘メイド、中々強いでしょう。
「続いてブレイブハート、次の選手の入場です!」
次の対戦相手は弓使いか。
相手の顔に冷や汗が滲んでいる。
まあアレ見た後じゃなあ。
弓使いの男が弓をつがえ、スミレに放つ。
遠距離武器の場合、手加減とか出来ないけど、そのあたりの対策はどうなっているのだろうか。
ふむふむ、スミレが避けた矢が地面に刺さらない。
矢じりの先を潰しているのか。
う~んでも当たると痛そうだなあ。
まあスミレには当たらないか。
矢継ぎ早に矢を放つ弓使いに対して、スミレは腰を落とした。
弓使いとはだいぶ離れているが、その距離を一瞬で潰したスミレは弓使いの喉元に刃を突き付ける。
「ま、参りました」
「決着う! スミレ選手の踏み込みに反応出来ない!?
強い強過ぎる圧勝です!!」
続いて出てきたのは魔法使いの男だった。
離れた位置から試合は再開されるため、本来ならスミレは再び接近しなければならない。
しかし、この半年で俺は請われるままにスミレにも魔法を教えているのだ。
トリガーは抜刀。
繰り出したのは土魔法。
スミレは相手が火魔法、炎の槍を放ってきたのを見て切り上げ気味に抜刀し、土魔法、岩の槍を発動。
背丈を有に越える岩の槍を無数に地面から発生させて炎の槍を消し飛ばしつつ、相手の喉元にその槍を突き付けた。
「ま、魔法!?魔法です!居合い術を使うスミレ選手が魔法を使いました!?
こんなの誰が勝てると言うのでしょうか!?」
実際、相手のパーティはこれを見て戦意喪失したのか、降参を申し出てきた。
「第1回戦終了!!
勝者!ステラァァア!!
第1回戦から凄いパーティが出てきました!
なんとスミレ選手はこのパーティで最年少だそうです!!
初出場でAランク昇級はこのパーティが持っていくのか!?
次の試合も楽しみなところです!」
観客が歓声をあげる。
だが試合を終え、此方に戻ってきたスミレの顔は暗かった。
「主様がいかに狂った強さをしているのか、分かった気がします」
「言いようが酷いな。
なにはともあれ1回戦勝ったんだからもうちょっと喜ぼうよ」
「撫で撫でを所望します」
こうか、よ~しよしよし。
くしゃくしゃ頭を撫でるとスミレは嬉しそうに微笑んだ。
メリカもそれに参戦して、スミレを撫でると、先程勝利した時よりも遥かに嬉しそうにスミレは笑った。




