ボス戦!
……無理だよね。
眠れるわけないよね。
左右からステレオで女の子の寝息なんか聴こえてきたら気になって仕方ない。
しかもどっちも俺の方に顔を向けて寝てるから、どっちを向いても美少女がいる状態だ。
眠れるか〜い。
とは言え、横になってるだけでも随分休めた。
モゾモゾと起きだした3人に挨拶を交わし、眠気覚ましにコーヒーを渡す。
ダンジョン内じゃなかったらなあ。
今日は何する?どんなクエスト行く?とか、談笑できるのになあ。
言っても仕方ないか。
話し合った結果、俺達は先に進む事にした。
現在までの敵の強さから考えて、恐らくBランクのダンジョンだと3人が判断したからだ。
しかし、これより先にいるのがボスではなく、階層が続く事ようであれば、更に強い敵がいる事は確定なので撤退する。
「結界解除するよ?」
「了解です」
「いつでも良いよ!」
指を鳴らして結界を解除すると再び圧迫感に襲われた。
敵の姿は見えないが、目の前に急に猛獣が現れたような感覚。
3人は冷汗を浮かべるが、俺は正直ちょっと楽しい。
昔からこうだった気がする、強敵に出会った時ほど自分の力が通用するか試したくなる性質なのだ。
以前のパーティーでは戦闘狂などと呼ばれて不本意に感じていたが、存外その通りなんだろうなあ。
「よし、行こう」
通路を抜け、大広間へ俺達は足を踏み入れた。
見渡してみるが、これといった物は見当たらない。
ただただフロアが広がっている。
「あれって――」
そのだだっ広いフロアを進んでいると、黒ベースに金色の装飾が施された鎧姿の騎士が1人、剣を地面に刺し柄に両手を乗せて佇んでいた。
その堂々たるや、歴戦の強者を思わせるが、鎧の形状から女性用の鎧というのが伺えた。
「アンデッド系のダンジョンに鎧、リビングメイルかしら」
「リリルちゃんは離れて魔法の準備を、ユイリちゃん、先行任せるよ」
「了解!」
セオリー通り、タンクのユイリちゃんを先頭に、熊退治の時と同じ布陣で鎧に近づいていく。
「反応した、みんな警戒!」
「やっぱり、リビングメイル」
鎧姿の女騎士の兜の目にあたる部分が赤く光り、足元から魔法陣が広がった。
この魔法陣、攻撃用ではない。
「ボスフロアに扉がない代わりに、結界で閉じ込めるタイプか」
女騎士のリビングメイルが剣を抜く。
同時に鎧から放出された魔力が紫色に揺らめいた。
「先手必勝!」
ユイリちゃんが盾を構えて駆け出した。
後にはメリカちゃんも続いている。
俺も行くか。
そう思って踏み出そうとした瞬間、女型のリビングメイルが大上段に剣を構えた。
その剣から魔力が激しく放出されるのが見えた。
その勢いたるや暴風のようだ。
まだユイリちゃんとは距離がある。
しかし、リビングメイルは一歩踏み出すと同時に剣を振り下ろす体勢に入った。
なんだ? 誰を狙っている?
嫌な感じだ、全身が総毛立つような。
あの魔力の暴風、あれは――。
「そんな攻撃私が!」
「受けるな! 避けろ!」
振り下ろされるリビングメイルの剣。
同時に放たれた魔力の奔流。
それは最早、巨大な斬撃だった。
ユイリちゃんは俺の声に反応して横に跳んで避ける事が出来た、メリカちゃんが当たるような軌道では無い、俺も射線を外れている。
狙われたのはリリルちゃんだ。
「こいつ!?」
間に合う、短距離転移でリリルちゃんの前に転移し、俺は防御結界を展開。
リリルちゃんを間一髪守る事が出来た。
「あ、ありがとうセツナ君」
「初っ端で魔法使いを狙ってきた。
魔法使いじゃないと倒せないスライムを置いた上で、魔法使い殺しの遠距離斬撃。
なかなか良い趣味してるな、このダンジョン」




