バーベキューだ!
熊の肉は絶品だった。
これまでの人生で食べた事はある。
しかし、誰かと一緒に外でバーベキューを楽しむのは初めてだ。
冒険者の仲間たちとクエスト中にただ焼いた肉を食べているのとは違う。
横に座ってる彼女から食べさせてもらえる事が、こんなにも熊の肉を美味に感じさせてくれる。
「うめぇ」
「な、泣くほどかしら」
「む〜、私のもあげる!」
ちょっとユイリちゃん待って、まだメリカちゃんがくれた肉が口に残ってる。
待って、串焼き突っ込まないで。
「ぶ、ぶほ! ちょっと待ってくれ、息が詰まる」
「はい、水」
リリルちゃんが魔法でコップに水を入れてくれた、優しい。
「明日からダンジョンに潜るけど、皆はどんなタイプのダンジョンが好き?」
ユイリちゃんが口の中の肉を飲み込むと聞いてきた。
ダンジョンのタイプか、色々あるもんなあ。
思い当たるだけでも、洞窟型、塔型、遺跡型、環境変動型。
「私は、遺跡型が好きです」
「メリカちゃんは遺跡型好きなんだ。
私はオーソドックスに洞窟型が好きだなあ」
「私も遺跡型が好きね、過去の遺物に想いを馳せるのは好きよ」
「俺は文献でしか知らないけど、塔型が好きだなあ」
塔型は登るのはキツイんだけどなあ。
攻略した後、景色を眺めながらゆっくり降りるのが良いんだよなあ。
面倒くさくなったら飛び降りたら良いし。
「あ〜、塔型は冒険者なら誰でも憧れるよねえ。
私もいつか挑戦したいなあ、世界樹の塔」
言いながら再び肉を口に運ぶユイリちゃんが尻尾をブンブン振っているのが、俺からでも見える。
ちょっとモフってみたいな。
駄目だ、獣人族への無許可でのモフりは犯罪になる。
しかし、世界樹の塔?
樹なの?塔なの?
俺が死んでから二百年でそんなダンジョンが出来たのか。
「冒険者の憧れですよね、最難関EXクラスダンジョン、世界樹の塔」
「聞いたことないなあ、どんなダンジョンなの?」
みんながポカンとしている。
だって仕方ないじゃん、知らないもんは知らないんだよ、生後3日ですよ?俺。
「世界樹の塔はこの世界の真ん中にそびえ立つ世界樹を内包した超巨大建造物ですよ。
その最高高度は雲を優に超え、一説によればこの世界を一望出来る程なのだそうです」
「塔の内側に生えた世界樹が、処々崩れた塔の内側から見えるから世界樹の塔なんだってさあ」
はあ〜、そんな規模のダンジョンが世界の真ん中にねえ。
そういえば、初めて地球からこっちにきた時、世界の真ん中に家建てたなあ。
中庭に苗木を植えて成長に合わせて増築されるように自律式のゴーレムも造って。
そういえば、あの家、俺が死んだ後どうなったんだろうなあ。
まあとっくに風化してるか。
数千年前の話だもんなあ。
懐かしいなあ、最初はなんて名乗ってたっけなあ、確か――
「調査中ではあるらしいけど、その世界樹の塔は古の大賢者、アーティス様のお住まいだったのではないかと言われているわね」
「ぶは! ゴッホゴホ!!」
「セツナさん!?」
「ご、ごめんむせちゃった」
アーティスって俺が最初に名乗った名前じゃねえか。
って事は俺んちの事なのか!?
何?昔の俺んち今ダンジョンになってんの!?
そういえばアレから一回も世界の真ん中、今なんて呼ばれてるんだっけ、200年前はグランドゼロとか呼ばれてたか、あそこ行ってなかったからなあ。
そんな暇無かったし。
アレからあの植えた木が世界樹って呼ばれる程に成長して、それに合わせてゴーレムも増築を続けたのか。
流石にアレは見つかってないよなあ。
「そういえば下層で壁に彫られた文字が見つかったんだって!
古代語だから読めないみたいだけど」
見つかってるよアレ!
紙が無かったから壁に刻んだ開発した魔法名、エターナルなんたらとか、なんたらインフェルノとか、ライトニングなんたらとか。
当初格好良いと思って書きました!
なんで風化してないの!?
「「「攻略してみたいなあ」」」
俺は、俺はあんまり行きたくない。




