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戦闘機に生まれ変わった僕はお嬢様を乗せ異世界の空を飛ぶ  作者: 元二
第二十三章 カルシーク海海戦編
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プロローグ 開戦迫る

長らくお待たせいたしました。

更新を再開します。

◇◇◇◇◇◇◇◇


 叡智の苔(バレク・バケシュ)が予想する大災害。

 その発生源と予想されているのはハヤテ達竜 騎 士(ドラゴンライダー)とも因縁浅からぬ、ミュッリュニエミ帝国の帝都の北、カルヴァーレ侯爵領。

 この難題にハヤテは自国の王、ミロスラフ王国国王カミルバルトに協力を求めるが、カミルバルトはヘルザーム伯爵家との戦争を優先して動く事はなかった。

 空回りの続く説得に苛立つティトゥ。

 そんな時、思わぬ人物が二人に協力を申し出た。

 一人はチェルヌィフ王朝の六大部族、ハレトニェート家の当主レフド。

 そしてもう一人はランピーニ聖国の王太子エルヴィンである。

 チェルヌィフと聖国は、共に大陸に大きな影響力を持つ大国。

 その大国の要人達が全面的に協力するとあっては、流石にカミルバルト国王もこれ以上の静観を続ける訳にはいかなかった。

 ここに三者は一致団結。協力してミュッリュニエミ帝国を攻める事を約束するのだった。


 そのさきがけとなったのは、ミロスラフ王国。

 ミロスラフ王国軍は、ヘルザーム伯爵領を攻め落とした勢いのまま、北方に進軍。

 盟約に従い、小ゾルタ北方貴族領へと攻め込んだ。

 次に動くのはランピーニ聖国。

 対するは帝国精鋭、黒竜艦隊。

 ここに大陸最強の艦隊を決める戦いの幕が、切って落とされようとしていた。


◇◇◇◇◇◇◇◇


 ミロスラフ王国軍、小ゾルタ北方貴族領へ進軍を開始。

 その報せは瞬く間に聖国王城を駆け巡った。


 小ゾルタ北方貴族とはその名の通り、小ゾルタの最北、ミュッリュニエミ帝国との国境沿いに位置する三男爵の事を言う。

 歴史的に三男爵同士は仲が悪く、領地を巡って常に何かしらの小競り合いを続けていた。

 ちなみにそれらの土地は今までの慣習でゾルタ北方領と呼ばれてはいるものの、実際は一昨年の帝国による半島南征の結果、帝国領に組み込まれた地域であり、現在ではまごうことなき帝国領である。

 ところが帝国もこの地を手に入れたはいいものの、面倒続きに流石に持て余していたのか、朝貢(ちょうこう)を受け取るだけで代官を派遣することもなかった。

 そんな半ば放置状態の土地だったが、他国から攻め込まれたとあれば、救援の軍を出さない訳にはいかない。

 割が合う、合わないの問題ではない。

 国土を侵されて何も手を打たないようでは、他国に対しても自国民に対しても示しがつかないからである。




 その帝国から海を挟んだ先。

 ランピーニ聖国王城の一室。部屋の中央に大きなテーブルが置かれた会議室。

 そのテーブルの一番奥。いわゆる上座に座った青年が口を開いた。


「ミロスラフ国王は約束を果たした。次は我が国が行動に移す番だ」


 背の高い細面の青年だ。年齢は二十代前半。長い髪はやや灰色が入ったブロンドベージュ。整った顔には温和な表情が浮かんでいる。

 ランピーニ聖国の第一王子。エルヴィン・ランピーニである。

 エルヴィンは軍服を着た壮年の男達を――聖国軍の将軍達を――見回した。

 将軍達は王子の言葉に、一斉に戸惑いの表情を見合わせた。


「しかしながら殿下。情報の出所がミロスラフ王国のドラゴンの言葉だけというのはいかがなものかと」

「左様。相手を疑っている訳ではありませんが、こちらで裏を取ってからでも遅くないのではないでしょうか?」


 他国の軍。と言うよりも、他国の主だった貴族家の中には密かに聖国の諜報員(スパイ)が潜り込んでいる。

 例外はティトゥのナカジマ家くらいだろうか?

 あそこの場合は、密かにではなく、堂々とモニカが食客として入り込んでいるからである。

 将軍の慎重論にエルヴィン王子は「違う違う」とかぶりを振った。


「伝えてくれたのはナカジマ殿だ。ハヤテは彼女を乗せて運んで来たのだ」


 エルヴィン王子としてはそこは譲れない点らしい。

 ちなみにミロスラフ王国のドラゴン――ハヤテがパートナーの少女ティトゥを乗せて、この聖国王城までやって来たのはつい先ほどの事。

 目的はミロスラフ王国軍がゾルタ北方貴族領へ進軍を開始した件を知らせるため。

 エルヴィン王子は彼女から詳しい話を聞くと、急遽、軍の代表者達を招集したのだった。


「将軍閣下。よろしいでしょうか?」


 ここで発言の許可を求めたのはヒゲを生やした若い将軍――と言っても、この場に集まった他の将軍達に比べて若いというだけであって、実際は四十歳前後の年齢なのだが。


「海軍騎士団のハイドラド団長か。何だ?」

「皆様方のご懸念は最もなものかと思われます。しかし、ミロスラフ王国の竜 騎 士(ドラゴンライダー)――ドラゴンのハヤテとその契約者であるティトゥ・ナカジマ殿が、『ミロスラフ王国軍が動いた』と言ったのであれば、おそらくその情報に間違いはないと考えてよろしいかと思われます。少なくとも我が海軍騎士団ではそう考えて動きます」


 将軍達は戸惑いの表情を浮かべつつも、話を続けるよう、彼に目で促した。


「はい。これは我々自身が一昨年の夏、マリエッタ王女殿下自らが指揮を執られ、聖国沿岸から海賊を一掃した作戦の際に経験した事なのですが――」


 ハイドラド団長は考えを纏めながら、そう説明を切り出した。


 近年における聖国騎士団を襲った最大の事件と言えば、間違いなく二年前の夏に起きた、パロマ第六王女誘拐事件が上げられるだろう。

 無名の海賊団による王族の誘拐。

 この大それた事件によって、聖国騎士団の威光は完全に地に落ちる事となった。

 海軍騎士団は汚名を(そそ)ぐべく、一丸となって海賊退治に乗り出す事になるのだが、そんな彼らを指揮したのが後にこの件で吊るし首の姫プリンセス・ハンギング・ネックと呼ばれる事になる第八王女マリエッタであり、そのマリエッタ王女に全面的に協力したのが、たまたまミロスラフ王国からバカンスに来ていた竜 騎 士(ドラゴンライダー)。ドラゴン・ハヤテとティトゥの二人だったのである。(第四章 ティトゥの海賊退治編より)


「我々も最初のうちは竜 騎 士(ドラゴンライダー)から与えられた情報を鵜呑みにせず、自ら確認、精査してから行動に移しておりました。しかし、直ぐに手が足りなくなってしまいました。なにせこちらが確認の知らせを受け取るよりも前に、次々に竜 騎 士(ドラゴンライダー)から新しい情報がもたらされるのですから」


 ハイドラド団長も当初はハヤテ達の情報に半信半疑。まるで見て来たかのように語る彼らの話を疑ってかかっていた。

 今思えば、ハヤテとティトゥは実際に自分達の目で見て来た事をそのまま喋っていただけというのが分かるのだが、あの時の彼は長年培ってきた経験と言うか常識が邪魔をして、額面通り受け取る事が出来なかったのである。

 「まるで口の上手い詐欺師に引っかかっているような気分だった」とはハイドラド団長の言葉である。

 そんな彼の常識だが、早々に粉砕される事になる。

 対応の遅れに焦れたマリエッタ王女が、即座に行動に移すよう、彼に命令を下したからである。


「それからは正にあっという間でした。こんなに聖国沿岸に海賊がいたのかと驚く程、行く先々で次から次へと海賊船を拿捕。パロマ王女殿下をお救いする頃には、完全に我々の感覚はマヒして竜 騎 士(ドラゴンライダー)の情報を疑う者など、誰一人いなくなっておりました」


 ある意味、完全に竜 騎 士(ドラゴンライダー)に毒されたとも言える。

 しかしそれも無理がないだろう。

 なにせ海賊がどこに隠れていて、どれだけの数の船と戦力を持っているのか、その全てが丸わかりなのだ。

 例えるならば、攻略サイトに従いながらゲームを進めているような気分か。

 なんという一方的な情報のアドバンテージ。

 長年に渡って、逃げ隠れする海賊に苦労させられて来た彼らにとって、この時の経験は全ての理屈を吹き飛ばす程の圧倒的な快感となった。

 この充実感と万能感を経験してしまった以上、もう竜 騎 士(ドラゴンライダー)の情報を疑うなど思いもよらない。

 こうしてハヤテ達は知らない間に、聖国海軍騎士団内に竜 騎 士(ドラゴンライダー)のシンパを多数獲得する事に成功していたのであった。


「うんうん。分かる分かる」


 熱弁を振るうハイドラド団長に、まるで自分が褒められているかのようにご満悦なエルヴィン王子。

 逆に将軍達は今の説明をどう受け止めればいいのか分からず、微妙な表情を浮かべている。


「それでハイドラド団長。海軍騎士団の艦隊はいつ頃出航出来そうかな?」

「殿下のご命令を受けて準備は進めておりましたが、艦隊の編成に思っていたよりも時間を取られました。全ての準備が整うまでは一週間といった所でしょうか」


 エルヴィン王子は「なるほど」と細い顎に指を当てた。


「開戦の布告も含めれば出航は早くて半月後といった所か。それくらい時間に余裕があればミロスラフ王国軍に潜ませていた諜者から知らせも届くだろうし、むしろ丁度良かったのかもしれないね」


 エルヴィン王子から視線を向けられ、将軍達は慌てて「それでしたら」と頷いた。


「ただ問題なのは、帝国側にもこちらの動きが筒抜けになっているであろう件についてですが」

「大掛かりな艦隊編成を行っている以上、気付かれていないはずはないよね」


 聖国が他国に諜報員を潜入させているように、帝国諜報部も同様の事を行っている。

 港を完全に封鎖でもしない限り、こちらの情報が帝国に持ち帰られるのを防ぐ事は出来ないだろう。

 しかし、宣戦布告を行う前にそのような事をすれば、それこそ何か計画していると声高に触れ回っているのと同じである。


聖国(このくに)を仮想敵国と見ている帝国海軍を警戒させるだけか。つまりは港を封鎖しようがしまいが同じ事。だったら他国の商人の信用を失ってまでやる意味はないね」


 エルヴィン王子はそう結論付けると軽く肩をすくめた。


「理想としては、敵の黒竜艦隊がトルランカの港から出て来る前に、こちらの艦隊で港を封鎖出来れば一番なんだけど、その辺り、団長の方はどう見ている?」


 黒竜艦隊は現在、ハヤテから受けた攻撃の傷を癒すため、母港であるトルランカの港に戻っている。

 その後、敗戦の責を負わされ、艦隊指揮官のハイネス艦長が更迭される等、大掛かりな人員の刷新も確認されている。

 この混乱の隙を突き、開戦の宣言と同時に高速船で電撃的にトルランカを襲撃。敵艦隊を港に封じ込める事が出来れば、こちらの損害を極限まで抑えられるのだが・・・


「一応はこちらでもその方向で作戦を立ててはおりますが――過度な期待は禁物かと」

「やっぱりそうか。まあ相手がこちらの思惑通りに動いてくれるなら戦争なんて簡単だよね」


 帝国精鋭、黒竜艦隊。

 ハヤテ相手にはなすすべなく敗退させられはしたものの、未だにこの世界では屈指の新鋭艦隊である。

 その戦闘力はランピーニ聖国ですら警戒を要する物であった。

次回「忙中おのずから閑あり」

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― 新着の感想 ―
更新ありがとうございます。 またハヤテの活躍楽しみにしてます!
更新再開嬉しいです! また最初から読み返して「やっぱり面白いなぁ」と思ってます
やった♪ 更新キターーーッ!!、
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