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戦闘機に生まれ変わった僕はお嬢様を乗せ異世界の空を飛ぶ  作者: 元二
第十七章 ナカジマ領収穫祭編
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その23 怒りの隊長

『話は全て聞かせて頂きましたわ!』


 僕の操縦席で勢い良く立ち上がったティトゥに、リーリアはギョッと目を剥いた。


『えええっ?! ナカジマ様?! なんで?!』


 リーリアが驚くのも最もだ。

 なんでこんな場所に突然ティトゥが現れたのか?

 説明しよう。実はティトゥは昼間の話がモヤモヤして、ベッドに入った後もいつまでも寝付けなかったそうなのだ。

 そこで彼女はコッソリ家を抜け出し、僕のテントにやって来た。

 そして操縦席に潜り込むと、僕を相手に延々と愚痴をこぼしていたのである。


 ティトゥがいたのなら最初からそう言えって?

 いや、誰かが来たのを見て、ティトゥが咄嗟に隠れちゃったからさ。

 リーリアの話はすぐに済むと思ったので、「だったらわざわざ言わなくてもいいかな」って。

 それがまさかこんな事になってしまうとは。

 ティトゥもティトゥで、完全に出るタイミングを逃してしまい、寒そうに震えながら僕を恨めしそうに睨むしで。

 僕は僕で結構ハラハラしてたんだよ。いやホント。


『なんでナカジマ様がここに?!』

『そんな事はどうでもいいですわ!』


 ティトゥはリーリアの尤もな質問をバッサリ切り捨てた。

 さしものティトゥも、「寝つけなかったから僕に愚痴ってた」とは言えなかったようだ。

 それを言ったら、なんで今まで隠れていたの? って聞かれるだろうしね。

 この辺の誤魔化しテクニックは、日頃散々、口うるさいユリウスさんやオットー達に叱られ慣れたティトゥならでは。

 僕が思わず感心してしまう程鮮やかなものだった。


 ティトゥは僕の上からヒラリと飛び降りると、リーリアに手を差し伸べた。


『あなたの願い、私とハヤテが叶えて差し上げますわ!』


 やはりティトゥも僕と同じ気持ちだったようだ。

 うん。君は本当に頼もしいパートナーだよ。




 といった事があった翌日。

 ティトゥは昨日のメンバーを再び僕のテントに集めていた。

 今日は終始上機嫌なティトゥに怪訝な表情を浮かべるメンバー達

 トマスがティトゥに尋ねた。


『ナカジマ様。ここにリーリアがいるのはなぜでしょうか?』


 そう。ティトゥの横には栗色(ブルネット)の長い髪のまだ幼い少女――トマスの婚約者リーリアがいた。

 ティトゥはリーリアを自分の前に立たせると、後ろから彼女の両肩を掴んだ。


『私とハヤテはリーリアを親元まで送り届けてあげる事に決めましたわ!』

『ええっ?!』


 この宣言に驚いたのは主にバルトニク騎士団員達だけだった。

 他のメンバーの驚きは――何と言うかやや微妙? 思ったよりも反応は大きくなかった。

 ナカジマ家ご意見番のユリウスさんは、大きくかぶりを振り。

 代官のオットーは諦めたようにため息をつき。

 衛兵隊のザイラーグ隊長は黙って眉間にしわを寄せ。

 オルサーク騎士団員達は嬉しそうに目を見張り。

 トマスは何やら納得した様子でリーリアに目を向け。

 聖国メイドのモニカさんは、「こうなると知ってましたよ」とでも言いたげな顔で平然としていた。


『モニカさんは全然驚かないんですわね』

『はい。我々が何を言っても、最後はこうなると思っていましたから』 


 そういえば昨日、モニカさんだけはみんなと違って慎重論を口にしていなかったっけ。

 確か・・・そう。『ナカジマ様とハヤテ様のやりたいようにやられるのが良いかと思います』って言ったんだった。

 あれ? これって本当に、最初から僕らならこうするって思ってたって事?

 僕とティトゥは驚きと同時に軽く引いた。

 バルトニク騎士団の頬ヒゲの隊長が血相を変えてティトゥに詰め寄った。


『今からバルトニクに戻るなどあり得ません! ヘルザーム伯爵軍は既にフォルタ砦を落とし、バルトニクの町に攻め込んでいるかもしれないのですぞ! そんな場所にリーリア様をお連れするなど危険過ぎます!』


 オルサーク騎士団の隊長が『おい、よせ!』と頬ヒゲの隊長を止める。


『まあ落ち着け。ナカジマ様とリーリア様が(後、ハヤテ様が)決められた事だ』

『なっ?! これが落ち着いていられるか! 俺達はご当主様から直々にリーリア様をお守りするよう命じられているんだ!』


 激昂する頬ヒゲの隊長。しかし、オルサーク騎士団は『とは言ってもなあ』と微妙な表情をしている。

 彼は『お前達では話にならん!』とばかりにユリウスさんに振り返った。


『これでいいのですか?! ナカジマ家は王家の判断に従うのではなかったのですか?!』

『まあ、そうなんだが。・・・ハヤテには我々の常識が通じないのだ』


 いや、言い方。常識が通じないって何だよ。それだと僕がものすごくおかしなヤツみたいじゃん。

 頬ヒゲ隊長は今度はオットーに振り返った。

 オットーは『王城に何と言い訳をすれば・・・』などとへこんでいる。

 彼は、コイツはダメだと思ったのか、次は衛兵隊のザイラーグ隊長に振り返った。

 ザイラーグ隊長は『イヤな事を思い出した』とでも言いたげな渋い顔で答えた。


『このドラゴンはたった一匹で四千の傭兵団を翻弄した事がある。お前の立場は分かるが、例えヘルザーム伯爵軍だろうとドラゴンの敵ではないだろうよ』


 そう言えば、ザイラーグ隊長はナカジマ領に来る前は傭兵団の団長だったんだっけ。

 どこで戦っていたかは聞いていなかったけど、ひょっとしたら都市国家連合の傭兵団の一員として僕と出会っていたのかもしれないね。

 聖国メイドのモニカさんがすまし顔で答えた。


『当たり前です。そもそも五万の帝国軍をお一人で退けたハヤテ様に、都市国家連合の傭兵団ごときが敵う訳がないのです』


 モニカさんのドヤ顔に、渋い顔を益々渋くするザイラーグ隊長。

 いやいや、モニカさん。あなた何をシレッと盛ってるんですか。あなたはあの時、ティトゥと一緒に砦の上から一部始終を見てましたよね?

 僕が倒したのは帝国軍の”白銀竜兵団”。他の帝国兵達はそれを見て怯えて逃げ出しただけだから。


 大人達が揉めている間に、トマスはリーリアに確認をしていた。


『リーリア。本当にいいんだね?』

『・・・トマス様。はい。ハヤテ様とナカジマ様は私の願いを聞き届けてくれました』

『そうか、分かった。気を付けて行って来るといい。――ナカジマ様。リーリアの事をよろしくお願いします』

『もちろんですわ!』


 頬ヒゲ隊長が『竜軍師様!』と目を剥いた。


『何を言われているのですか! リーリア様はあなた様の婚約者ですよ! その婚約者をみすみす危険な場所に送り出そうと言うのですか?!』

『隊長。君は思い違いをしている。これは私が決めた事ではない。リーリアが決めた事――彼女の意志だ』


 頬ヒゲ隊長は怒りに顔を真っ赤にして全員を見回した。


『どうかしている! 昨日は全員、意見が一致していたはずだ! それがどうだ?! どうして一晩で真逆に変わる! なぜ誰もその事に反対しない!』


 オットーが疲れたような顔で隊長に言った。


『バルターク騎士団の隊長殿。世の中には我々の正論や常識が通じない相手がいる。ここにいるあなた方以外の全員は、それを一度は思い知らされているのですよ』


 オットーの言葉に全員が無言で僕を見上げた。

 ん? なに?

 リーリアがティトゥに振り返った。


『ナカジマ様。ハサミと紙をお貸しいただないでしょうか?』

『分かりましたわ。オットー』


 オットーがリーリアにハサミを渡すと、彼女は自分の長い髪を握った。

 そのまま躊躇なくハサミを差し入れると――


 ザキッ


 栗色(ブルネット)の髪をひと房、切り落とした。


『リ、リーリア様! 一体何を?!』


 突然の出来事に慌てる隊長。

 リーリアはハサミをオットーに返すと、切り落とした髪を渡された紙で包んだ。


『これをあなたに預けておきます。もし、私の身に何かあった時は、あなた達はバルトニクに戻り、これを形見としてお父様に届けなさい』

『リーリア様・・・』


 隊長はリーリアの――幼い少女の覚悟に絶句した。

 彼はリーリアから形見の品を受け取ると、『本当にお心は変わらないんですね?』と念を押した。


『ええ』


 頬ヒゲの隊長は悔しそうに顔を歪めた。

 その顔からは、未だに納得できていないのが丸分かりだった。

 しかし、彼はそれ以上は何も言わなかった。

 このまま反対し続けても、リーリアの決意を覆せないばかりか、彼女に恥をかかせるだけと思ったのだろう。

 リーリアはトマスに振り返った。


『トマス様。行ってまいります』

『無事を祈っている』


 バルトニク騎士団はそんな二人を黙って見つめていた。

 彼らの表情は曇っていたが、自分達の隊長が引き下がった手前、反対意見は言えないようだった。


 ティトゥは大きく頷くと僕に振り返った。


『決まりですわね! それではハヤテ、バルトニクに出発ですわ!』

次回「バルトニクへ」

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― 新着の感想 ―
[良い点] 『まあ、そうなんだが。・・・ハヤテには我々の常識が通じないのだ』  いや、言い方。常識が通じないって何だよ。それだと僕がものすごくおかしなヤツみたいじゃん。 だいたい行くって決めたのは…
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