護衛6
「そうそう、こちらをお渡しするのを忘れておりました」
リズは何かを思い出したのか、慌てて自身のカバンから1つのケースを取り出した。
ネックレスなどを入れる細長いケースだ。
リズはそのケースを開けてアイリスに渡した。
「この間お預かりした水晶です」
そこには水晶の周りに小さな紫と黄色の石があしらわれたネックレスが入っていた。
「水晶でしたのでアメジストとシトリンで飾らせていただきました」
「素敵ね!」
アイリスは思わず破顔した。
「お付けいたしましょうか?」
「お願いするわ」
リズは慣れた手付きでネックレスを付けてくれた。
「とても良くお似合いです」
「ありがとう。セイウスさんからのプレゼントなの」
「そうだったのですか?」
リズは驚いている。
「隣国に行ったお土産だと言っていたわ。中にクラックがあってそこに虹が見えるでしょう?隣国では虹がある水晶をアイリスクォーツと呼ぶそうなの」
「ああ!虹の女神様ですね。それでこちらをお嬢様に………。愛されてますね」
リズに言われて顔が赤くなる。
「パーティーとかにはつけていきにくいけど、普段使いならいいかなと思ってね」
「これをつけてダンスの練習をされたらセイウス様が喜ばれますね」
「喜んでくれるかしら」
「絶対に喜んでくださいます!私が断言します」
リズに言われて先程のモヤモヤした気持ちが消えていくのがわかった。
「見せるのが楽しみだわ」
そんな会話をしていると、控え目にドアがノックされた。
「部屋の片付けが終わりましたのでお迎えに上がりました」
セイウスの声だ。
リズがドアを開ける。
「足りないものなどありませんでしたか?」
「大丈夫です。しばらくお世話になります」
「こちらこそ。では、ダンスのレッスンに行きましょうか」
「はい」
2人はアイリスの部屋をあとにした。
二人して一階のダンスホールへ向う。
「あの……アイリスさん」
「なんですか?」
「その胸元にあるネックレスはもしかして私がプレゼントした水晶ですか?」
早速気がついたようだ。
「はい、リズに頼んでネックレスにしてもらいました」
「とても良く似合っています」
「ありがとうございます。水晶は御守りとして普段使いにしようと思っています」
「そう言っていただけると必死に選んだ甲斐があります」
「選んだ?」
アイリスの言葉にセイウスは少し恥ずかしそうに笑った。
「きれいな虹が入っていて透明度の高い水晶をかなり吟味しました。アイリスさんへの初めてのプレゼントを妥協したくありませんでしたから」
その言葉に今度はアイリスが赤面した。
「そんなふうに言われるとなんだか恥ずかしいです」
「事実ですから」
告白してからのセイウスはグイグイ来るなぁと思う。
それを嬉しいと思う自分に戸惑っていると、ダンスホールについていた。




