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告白3

屋敷に戻ると、いつも出迎えてくれる両親がいなかった。


いたのはバンとリーシャの侍女の一人であるサラと護衛の騎士ルーイだけだった。


「おかえりなさいませ」


バンが手本のようなきれいなお辞儀をした。


「リズがいないのはわかるけど………お父様とお母様は?」


「旦那様と奥様はリーベルグ侯爵邸に行かれています」


リーベルグ侯爵はリーシャの妹であるリリアの嫁ぎ先だ。


「リリア叔母様の誕生パーティね」


「左様でございます」


リーシャはあまり夜会には参加しない。


しかし、1年に1度のリリアの誕生パーティには必ず出席している。


アイリスも来年からは参加することになるだろう。


「じゃあ今日の食事は1人ね」


「はい。今晩はリズがおりませんのでサラがお嬢様に付きます」


サラは最近侍女になったはずだ。


リーシャが幼少期から侍女だった女性が高齢のため引退し、その代わりとして面談をして選ばれたと聞いた。


「よろしく、サラ」


アイリスの言葉にサラはきれいなお辞儀をした。


「こちらこそよろしくお願いいたします」




1人の食事を終え、湯浴みも終わり寝る時間となった。


サラは完璧に侍女を勤めてくれた。


リズのように親しくはないので、あまり会話はなかったが。


「それではお嬢様、おやすみなさいませ」


ベッドメイキングも終えるとサラは静かに部屋を出ていった。


部屋の前にはルーイがいる。


アイリスが子供の頃から専属で付いている騎士だ。


今年で50になると言っていたはずだ。


サラが去ってからルーイに


「おやすみなさい」


と声をかけると、優しい笑顔で


「お休みなさい、いい夢を」


と答えてくれた。


普段は部屋の前で護衛はしていないのだが、両親が不在の時は部屋の前で護衛をしてくれる。


心配症のウィルネスの指示だ。


ルーイがいるなら安心ね。


両親が不在の日は心細いが、ルーイのお陰でよく眠れそうだ。


本当はセイウスに告白されたことをリズかリーシャに相談したかったのだが、仕方がない。


アイリスは布団に入り、数分で眠りについた。





どれくらい寝ていたのか。


のどが渇いて目が覚めた。


「水差しは………」


リズは必ず枕元に水差しを置いてくれているのだが、サラはその習慣を知らなかったのだろう。


なにも置かれていない。


食堂まではなかなか距離がある。


ランタンを用意して行くのも面倒だ。


ルーイに頼もうかしら?


アイリスはそう思い、部屋の前にいるルーイに声をかけることにした。


そっと扉を開ける。


本来ならその場にルーイが立っているはずだ。


しかし、アイリスの視線の先には誰もいない。


ルーイはとても真面目な騎士だ。


サボるはずない。


そう思って廊下を見渡してみたが、やはり姿がない。


どこに行ったのかしら。


そう思いながら、視線を下に向けると……座り込んでいるルーイの姿があった。


「ルーイ?」


声をかけたが返事がない。


「ルーイ、気分が悪いの?」


軽く肩を揺する。


しかし、反応はない。


よく目を凝らすと寝ているのがわかった。


ルーイが寝てる。


しかも揺すっても起きないくらい深く。


アイリスを漠然とした不安が襲った。


ルーイはとても優秀な騎士だ。


公爵邸で雇われる前は王家直属の騎士をしていて、戦も経験している。


一夜くらいなら平気で起きていられるはずだ。


もしかして睡眠薬で寝かされているのでは………。


そう思ったとき、廊下から聞きなれない男の声が聞こえた。


「おい、娘の部屋はどこだ?」


「この廊下の奥です」


「広すぎるだろ、この屋敷!」


「アニキ、早く娘を拐わないと」


「わかってるよ!時間がねぇ」


静かな廊下に響く、男2人と女の声。


アイリスは慌てて部屋の扉を閉めた。


「ど、どうしよう………」


いきなりのことにパニックになる。


「か、隠れなきゃ」


廊下の足音が近づいてくる。


アイリスは洋服ダンスを開けると迷わずにその中に入った。


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