表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/65

記憶が阻害する7

ど………どうしてこんなことに……?


セイウスは自分の肩に身体を預けて眠るアイリスのせいで、身体が硬直して動けずにいた。


すぅ………すぅ………


と気持ちよさそうな寝息が聞こえ、時折吐息が肩に触れる。


その度に身体の硬直が強まっていた。


想い人の無防備な姿に動揺するのは許してほしい。


やましい感情を必死に排除しながらも、チラチラと寝顔を盗み見る。


可愛い…………。


触れたくなる衝動を必死に抑えるように首を振った。




マリアンヌに会ったのは偶然だった。


護衛の交代時間となり、休憩中に食事を済ませようと食堂に向かっていた。


ちょうどその時にマリアンヌが転倒した場面に出くわしたのだ。


猫の鳴き声が聞こえて、すぐに猫に驚いたのだとわかった。


マリアンヌはアリアの侍女だったため、セイウスとの付き合いは長い。


「大丈夫か?」


尻もちをついたマリアンヌに駆け寄ると、彼女は恥ずかしそうに笑った。


「セイウス様、お久しぶりです。こんな格好での挨拶になってしまい申し訳ありません」


「そんなこと、気にするな。それより立てるか?」


「はい、大丈夫で………いっ」


マリアンヌは立ち上がろうとして顔を歪ませた。


「どうした?」


「申し訳ありません………足を挫いたようです」


そう言いながらも立ち上がろうとするので、セイウスは慌てて手を貸して手伝った。


「痛そうだな………このまま医務室に連れて行こう」


「一人でも大丈夫です。セイウス様はお仕事中ではありませんか」


「今は休憩中だから問題ない。捻挫なら早く冷やしたほうがいいだろう。その足で一人で医務室に行くのは大変だ。俺に掴まるといい」

 

「申し訳ございません」


そんな会話をしながらマリアンヌを医務室に連れて行った。


その時に


「セイウス様……医務室に向かったあとに1つお願いしたいことがあるのですが、よろしいでしょうか?」


とマリアンヌから言われた。


「俺のできることなら聞こう」


そこで今、アイリスが王城に来ていることを知った。


いくら王城とはいえ彼女を一人にするわけにはいかないので、護衛を兼ねて謁見まで側にいて上げてほしいと頼まれたのだ。


仕事が忙しく、あの日以降全く会えなかったので、二つ返事で了解した。


そして、医務室にマリアンヌを届けてから三日月の間にやってきたのだ。


久しぶりに出会ったアイリスは相変わらず美しかった。


その間の町娘風も良かったが、きちんと正装したアイリスは後光が差しているように眩しかった。


思わず目を細めたほどだ。


マリアンヌの事を説明すると、横に座るように促されたので言われたと通りに座った。


横に座っただけなのに、甘い香りがしてくらくらした。


それだけでも内心、すごく緊張していたのに………。


なんで彼女は寝たんだ!?


肩から伝わする体温に香りに吐息に気がおかしくなりそうだ!


密室だぞ!?


なんでこんなに無防備に可愛い寝顔を見せてくるんだ!?


それでも………。


気持ちよさそうに眠るアイリスを起こすことなど出来なかった。


早く公爵来ないかな………。


心を無にして、自分の理性を抱きしめながらセイウスは天井を見つめ続けていた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ