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記憶が阻害する3

支度を整えて門前に行くと、ウィルネスが待っていた。


「お父様、お待たせしました」


「アイリス、いつも美しいが今日はまた一段と美しいな」


「リズが頑張ってくれました」


アイリスの言葉に後ろに控えていたリズが頭を下げる。


「行きは私が付き添うが……、リズ、帰りは迎えの馬車で迎えに行くように」


ウィルネスは王城で仕事をしているため、王への謁見が終わると仕事に戻らなければならない。


「はい。謁見が終わった頃にお迎えに上がります」


「念のため護衛を連れて行くように」


アイリスが王城へ行くときは必ずリズと護衛が迎えに行くことになっている。


そのため、寄り道は出来ない。


「心得ています」


リズの言葉に大きくうなずくと、アイリスをエスコートして馬車へ乗せた。


続いてウィルネスも乗り込む。


お見送りの侍女や執事がきれいなおじきをする中、馬車はゆっくりと動き出した。



馬車で王城までは30分ほどかかる。


「アイリス、緊張はしていないか?」


「久しぶりの王城ですので、どちらかというとワクワクしております」


「そうか。アイリスは昔から王城が好きだったからね」


アリアのときの我が家となるため、王城へ行くと実家に帰ってきたような懐かしさを覚えるのだ。


15年経っても王城は大きく変わっていないため、そう思うのかもしれない。


「本当は一緒に帰れたら良かったのだが、どうしても仕事を抜け出せなくてね」


「最近、お忙しそうですね」


ウィルネスに限らず、セイウスも忙しいらしくカフェはお預け状態が続いている。


「近々、王から重大な発表がある予定でね。そのせいで王城はいつも以上に慌しい。王城へついたら案内人が付添う予定だから、その者と控室で待っていてほしい。仕事場に挨拶をしてから呼びに行くまで待っているんだよ」


王からの発表………。おそらく新王が即位する準備だろう。


今の王はもうすぐ65になる。まだまだ元気ではあるが、自分が元気なうちに王位を譲りたいと考えているのだろう。


王太子は今年で43歳。そろそろ王位についてもいい年だ。


王太子が即位することが決まっているが、第二王子を推す声がないわけではない。


王太子と第二王子は仲がいいため、表立っての派閥がある訳では無いが混乱を避けるために色々と準備がいるのだろう。


ちなみに第二王子は40歳。


自分のパートナー予定だった第二王子が忙しくなったのも、このせいに違いない。


「わかりました」


「ところで、セイウス殿とはあれ以来会っているのか?」


あれとは街に一緒に出かけたことだろう。


「セイウスさんも忙しいみたいで、手紙は下さいますがなかなかお会いできていません」


「そうか………実はセイウス殿の配置転換があって、今、彼は王の護衛をしているんだ」


「そうなのですか!?」


「重大発表までに王になにかあってはいけないから、国で一番と言われているセイウス殿を護衛にしたらしい。だからしばらくは会えないと思っていてくれ」


「そうなのですか………」


ああ……ケーキが遠のいていく………。


思った以上にショックで下を向いてしまった。


「会えないのは寂しいだろうから、今日少し時間をもらえるように王に打診しておくよ」


ウィルスネスはセイウスに会えないことを残念がっていると誤解したらしい。


別にセイウスに会いたいわけじゃないんだけど………そう言いそうなのを飲み込んだ。


そんな会話をしているうちに王城の大きな門が見えてきた。


懐かしい。


変わらない景色にアイリスはそう思った。

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