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記憶が阻害する2

「さてと、そろそろ準備しないといけないわね。リズ、お願いできるかしら」


パンっと手を叩いて言うと、リズが


「アイリス様がより美しく輝くように頑張ります」


と笑顔で応えた。


そして服を選び出す。


「王城に行かれるのは何年ぶりですか?」


予め決めていたのか、すぐにドレスは決まり着替えに入った。


手際よく着替えさせる。


「そうねぇ………女学校に行く前に挨拶に行って以来だから、7年ぶりかしら。7歳のときに進学の挨拶をしたのが最後だから」


アイリスは4大公爵のひとつ、ローズネス公爵の跡取りで王弟の娘である。


そのため、進学や15の誕生祭、成人の祝や婚約など人生の節目で王に謁見して挨拶をしなければならない。


「7歳の頃から比べますとアイリス様は本当に素敵な淑女になられました。陛下はもちろん、カイザー様やユリウス様も驚かれますよ」


「そうかしら?」


「カイザー様もユリウス様もアイリス様のことを幼少の頃から好いておりましたからね。何度も婚約の打診があったと伺っています。旦那様が血が近すぎると断られたそうですが」


カイザーは王太子の息子、ユリウスは第二王子の息子だ。


前世では甥にあたる彼らに恋愛感情はどうしても抱けない。婚約を断ってくれたことを心底感謝している。


「とはいっても二人共、婚約者がいるんだから私のことなんて気にもしてないと思うわ」


着替えが終わり、鏡台前の椅子に座るように促される。


大人しく従うと、すぐに髪のセットに取り掛かった。


「私は何度か王城に行きましたが、いつもアイリス様のことを御二方に聞かれましたよ」


リズは実家の宝石商の手伝いをたまにしている。


国で1番と言われる宝石商なので、王城へ行くこともよくあるのだそうだ。


「ただ近況が気になるだけじゃないかしら」


「誕生祭のパートナーにも名乗りを上げていたそうですよ」

 

リズの言葉に驚く。


「婚約者がいるのに?何を考えているの!?」


「もちろん、旦那様が断りました。そんな経緯もありますので、王城で声をかけられると思っていたほうがいいですよ」


リズの言葉に大きくため息をついた。


鏡の中には非の打ち所ない美女が写っている。


「綺麗って面倒ね」


アリアの時、もっと整った顔が良かったと思ったことが何度もあったが、そう思ったことを少し後悔した。


そんなことを思っているうちに髪のセットがおわり、化粧へと移った。


通常なら3人ほどで準備する工程を1人でこなすリズはかなり優秀である。


リズが言うには、中途半端に手伝われるくらいなら1人の方が早く正確にできるそうだ。


そのため、こういった準備のときはすべてリズが1人で整えてくれる。


リズの手によりどんどん美しくなっていく鏡の中の自分を見るのは毎回楽しいなと思う。


「王城へ行くの面倒だわ」


「大切なお務めですので、頑張ってください。アイリス様の好きなケーキをご用意して帰りをお待ちしていますから」


「ケーキのために頑張るわ」


リズにそう言うと、小さく笑ってくれた。

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