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材木を求めて! (カクヨムで新作投稿!)

そのように順調に旅を続けているふたりであったが、それも四日目までであった。四日目、雲行きが怪しくなってくる。文字通り上空に厚い雨雲が立ちこめ始めたのだ。


 空を見ると土砂降りの雨が降っていた。無論、マクスウェル家の馬車は完全防水であるが、馬車が雨に耐えられても橋が雨に耐えられるかは別であった。大雨によって増水した川はエリザベートたちが渡る予定だった橋を破壊する。聖地エルリュートへ続く橋は土石流によって流されてしまった。


「これは困りました」


 率直な感想を口にすると御者は二択を提示した。このままこの近くの宿場町に滞在して数週間待って仮の橋ができるのを待つか、あるいは大幅な回り道になるが、川下に行って無事な話を探すか。まっとうな選択肢であるが、どちらも時間が掛かってしまうのが難点であった。そこで三つ目の選択肢を探す。川辺の村人と協力して即座に橋を再建するのだ。


「たしかにそれならば近隣の蹂躙も助かりましょう」


「わたしひとりならば川をジャンプしてしまうという方法もあるのですが、カレンさんが一緒だとそれもきついですしね」


 そうと決まったら近隣の村を訪ね、橋を管理しているものの名を尋ねる。エルリュートへ繋がる橋を管理しているのは川並衆と呼ばれる土木事業者であった。この辺の大工を一堂に集めているギルドとのことであった。さっそく、そのギルドに行くとエリザベートは橋の再建を願い出た。


「なんだ、お嬢ちゃん、橋を再建してほしいのか」


 あごひげの頭領はいきなりやってきた小娘にも親切であった。


「はい。実はわたしたちは王都からやってきたのですが、あまり時間がないのです」


「ほお、どうしてだい」


「夏休みが終わるまでに帰りたいのです」


「夏休みってお嬢ちゃんたち、学生かよ」


「はい。王立学院魔術科一年生です」


「まあ、こっちとしても橋は早く直したいが、どんなに急いでも二週間は掛かるぜ」


「そこをなんとか三日くらいで」


「無理だね。材木がいる」


「材木ならばわたしが取ってきます」


「お嬢ちゃんが?」


「はい」


「おいおい、あの大橋の材木だ。最低でも三〇本は必要だぜ」


「川上に行って木を引っこ抜いてきます。それを川に流します」


「そんなこと人にできるわけがない」


 頭領は断言するが、カレンが代わりに説明をしてくれる。


「たしかに〝普通〟の人には不可能です。しかし、彼女は普通ではありません」


 えへへ、と頭をかくエリザベート。


「そんなこと言われたってなあ……、って、あんたその腕の痣、もしかして聖女様なのかい?」


「はい」


「なんだ、それならそうと言ってくれよ。おれら大工ギルドは星教会の信徒なんだ。そうかい、聖女様が保証してくれるのならばきっと材木を集めてくれるだろう」


 頭領はそのように言うと地図を差し出してくれる。


「いいかい、お嬢ちゃん、材木はその辺に転がっているが、好き勝手引っこ抜いていいわけじゃない。すべての土地は誰かしらのものだからな」


「たしかに」


「この川の川上で採取していい材木はこのまやかしの森くらいなんだ。それ以外は領主様の許可がいる」


「許可を取るのにも時間が掛かりますものね」


「そういうこった」


「ならばさっそくそこにまいりましょうか」


 カレンはそのように言うが頭領は「でもなあ」と続ける。


「このまやかしの森には魔物が生息しているんだ」


「まあ」


 カレンは軽く驚くがすぐに「大丈夫です」と胸を張る。


「エリザベートさんは史上最強の令嬢なのです。ただの魔物など子犬さんの腕をひねるよりもたやすいのです」


「聖女様がいうんだからきっと強い嬢ちゃんなんだろうなあ」


 ふたりは納得し合っているが、たしかにただの魔物程度では苦戦することはないだろう。ただ、頭領はこのようなこともいう。


「まやかしの森には幽霊が出るんだ」


「幽霊ってゴーストのことですか?」


「ああ、人をだますのが大好きな幽霊さ。そいつに出会っちまったら厄介かもしれない」


「たしかにエリザベートさんの武力も役に立ちそうにないですね」


 しかし、そのときは不肖このカレンが知恵にて乗り切って見せましょう! そのように勢いよく言うとふたりは材木を求めて川上に向かった。


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「ボンクラ宮廷魔術師、禁断の書庫で【日本語】で書かれた魔術書を見つけてしまう。~あれ? そういえば俺の前世は日本人だからもしかしてこれで最強になれるんじゃね?~」という作品をカクヨムに投稿しました。
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