表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

15/28

高校生活6日(楽しい肝試し?)④

誤字報告感謝!

たかだか肝試しだったはずなのに、意外に長くなってる……。

 さぁ、ここをどうやって切り抜けましょうか?


 みんなで輪になって座り、あれやこれやと言い合ってみる。


 私は今までやってきたことを反芻してみた。

 どうやって、山頂の祠へたどり着けばいいのか? ……と。



 一人……ダメだったわ。(必ず男子二人が死んでいる)


 二人組……も、ダメだった。(特に男女にしたら悲惨なことになってしまった)


 三人……四人……人数を増やしても、組み合わせを変えても駄目。(やっぱり男子二人が死んでしまう)



「うぅ……何で僕と勇斗だけ?」

「きっと、俺たち嫌われてるんだなぁ……」


 山の神の好みなので何とも言えないが、カップルや集団、特定の性別を嫌う神様は案外いるものだ。


 でも、この場ではどうにもならないことをあげたら、ここはどうしようもない。


 あと、私たちができるのは時間。

 夜明けを待って山を下りるしかないかもしれない。


「それがダメなら……?」


 私は必死に考える。


 あぁ、久しぶりに頭が痛くなりそう!


「明乃くん、考えは煮詰まっているか?」

「えぇ、どんなに考えても、まったく何も……」

「フフ……違うぞ、明乃くん」

「え?」


「『考えが煮詰まる』というのは、問題が煮えて良い状態になることだ。日本人が間違える諺のひとつと言っていい」

「あ……」


 そういえば……本当の意味は『良い考えがまとまる』ということだったわね。


「では、梅先生は『煮詰まり』ましたか?」

「直に分かるさ」


 先生はさっきどこかに連絡していた。

 おそらく、名案が浮かんでいるのだろう。


「峯岸先生……まさか先生も、明乃ちゃんみたいな能力を?」

「変公なら薬で何かできそう……」

「フッ……正解だ、智哉」

「「「へ?」」」


「薬で解決してしまえばいい!」


「「「えぇ―――っ!?」」」


 薬? でも、そんな薬がどこに……?


 その時、


 バタバタバタバタッ!!


 頭上で激しいプロペラの音がした。私たちの真上でヘリコプターがホバーリングをしている。


「えっ!? 何!?」

「ふん……やっと来たか」


「せーんーぱーいーっ!! とうっ!! とうっ……とぅ……(エコー付)」


 誰かが飛び降りてくる。


 どさぁあああっ!!


「俺様、参上っ!! 元気か、智哉!!」

「兄貴!?」


 ビシィッと着地とポーズを決めたのは、ジャージ姿の浅井くんのお兄さんだった。

 背中に大きなリュックを背負っている。


「遅いぞ、さすがはダルダルマイスターだな? 十五分の遅刻だ!」


「勘弁してくださいよぉ~。普津沢さんから受け取って、すぐに来たんですから~!! それに、ロケットもヘリもすぐに用意するの大変なんですよ~!?」


「まぁ、いい。早くその『ブツ』を確認させてもらおうか」

「はい! まずはこれ!」


 リュックから、小さなアタッシュケースのような平べったい箱が出てきた。蓋が開かれると、中には試験管に入った液体が並んでいる。


「でも……これ、一体何に……」

「我々が助かる鍵だ。…………という訳で、これを智哉と田島にドーン!」


「なっ!?」

「えっ?」


 梅先生は試験管を取り出すと、まるで()()()を投げる忍のように、それを浅井くんと田島くんへ飛ばした。


 二つ同時に口に入った!?

 凄い! 手品みたい!!


「「んがぐぐ」」


 中の液体が二人の口の中へ消える。


「ついでにお前にもドーン!!」

「んがぐぐ」


 浅井くんのお兄さんも飲まされた。


「ぐっ……う、うわぁぁ……!!」

「がはぁっ……!! 何か、前にもっ……!!」


「うぉおお……な、何で俺まで……!?」


 三人が身を屈めて唸り始めたけど、それはすぐに治まり立ち上がっ………………あら? 何か……違って……?


()()()()()だぁーっ!!」

「ゆ、()()()()()……!!」


「えぇえええええっ!?」



 なんということでしょう。


 浅井くんが素朴で落ち着く男の子から、ぷにぷにと可愛らしい()()()に!?


 田島くんが筋肉の素敵なスポーツマンから、スレンダーでモデルのような……やっぱり、()()()に!?


 浅井くんのお兄さんがダルダルのジャージ男子から、休日を謳歌していた干物OL風の()()に!?


 匠が介入していないのに、劇的な変化を遂げたのよ!!


 ちなみに私は、某リフォーム番組が好きだった。今は山奥の一軒家の番組が熱いと思っているわ。





「フゥゥゥゥゥッ!! ともちゃん!! かっわいいよぉぉぉっ!! こっち、こっち目線ちょうだい! いいねいいね、ちょっと浴衣をはだけさせようか?」

「まーちゃん、こんな時に……写真はやめて……」


「ゆうちゃん……やっぱり素敵……女の子でもカッコいい……」

「お、おう。美穂が喜んでくれるなら……まぁ……」


「ヒドイですよ、先輩!! 何で俺も!?」



「何で三人が女の子に!?」

「フッ! 秘密はこれだ!! 【クツガエール改(速効性)】だ!!」



【クツガエール改】

 飲むとたちまち性別が変わる薬。効果は一時間。


「今までの経緯から、この結論にたどり着いた…………この山の神が男嫌いならば、全員“女子”になれば良いのだ!!」


 凄いわ、梅先生! 不可能を可能に!!

 科学はここまで進化しているというのに、ノーベル賞の調査員は何をやっているのかしら!?


「よし! 全員女になったところで、これを装備してもらおう!! この山の神に目通りするための()()()()()()だ!!」


「「「こ、これは!?」」」


 やはり、梅先生には深い考えがあるみたいね。


 私はみんなと一緒に、渡された『勝負服』に着替えた。







「明乃くん、我々は間違ってはいないな?」


「はい、先生! これなら鳥居をくぐって、上の祠へ行けそうです!!」


 今、黒い靄は視えない。

 死んでいる『未来の自分たち』もいない。


「いける! みんな、行きましょう!!」


「勝利は私たちにあるね!! 前進あるのみ!!」

「うん! 頑張ろう!」


 “神様”に許しをもらって帰るのよ!


 私たちは順調に石段を上がる。

 最後の石段を踏み、目の前の開けた場所へ着く。


 みんながいるから怖くない。


「「「……神様、ご挨拶にまいりました!!」」」


 茉央ちゃんと美穂ちゃん、そして私で祠の前へ進み出た。





一週間前。温泉町。


一郎「ヒャッハー!! 家族旅行だぜー!!」

二郎「ヒャハってる温泉町だぜ!!」

公彦「あちこちの温泉ヒャいって、ヒャハヒャハいうぜー!!」


一郎「いいか、ふたりとも! 今日と明日は、パパとママに『ヒャッハーな結婚記念日温泉旅行』をヒャハってもらうために、俺たちは三人で行動だ!」


二郎・公彦「ヒャッハー!! 兄ちゃん最高ぉぉぉっ!!」



※百派山家、結婚二十年目の家族旅行。子供たちが気を遣って別行動する予定。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] さすが梅ちゃん先生! さすが浅井兄! そして百派山一家も後書き出演とは、さすがきしかわさま!
[良い点] 男がダメなら女になれば良いとは、発想の転換ですが、それを実行に移すことができる、梅先生の万能さですね! 明乃ちゃんは、テレ朝がお好きみたいですね。
[一言] お薬で変身完了!☆彡 というか、薬が便利すぎる (*´▽`*)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ