高校生活6日(楽しい肝試し?)②
今回はほぼ、シリアス場面です。
これはジャンルコメディーじゃなかったよ!
ヒューマンドラマだよ!
モニターの端……小さく道の向こうが映り込んでいた。
「これは……止めないと!!」
「明乃ちゃん!?」
「何、どうしたの!?」
私が突然走り出したので、みんなは驚いた顔で立ち尽くしている。
みんな、驚かせてごめんなさい! 説明は後から!!
今日は“絵井神様”がいないのだから、私がなんとかしないと!!
自分の全力で山道を駆け上がった。これも若いからできることで、歳を取った私では無理だっただろう。
でも……この分、能力の使い勝手が分からなくなっている気がするわ。
私の『暗闇の眼』は、その場所で誰かが死ぬという未来の光景が見える。
さっき、浅井くんと田島くんに、死を予感させる『黒い靄』が見えなかった。つまり、直前までは死ぬ運命はなかったということ。
今は条件が揃っている……!!
小さな赤い鳥居が見えた。そこをくぐった所に、浅井くんと田島くんが歩いている。
「浅井くん!! 田島くん!!」
「えっ!? 弥生さん?」
「どうかしたの? そんなに慌てて……」
「はぁ……ちょっと、ま……待って二人とも……はぁ……はぁ……」
スーハー、スーハー……
懸命に息を調えて、二人の奥の道を睨む。
「何……何かいた?」
「ごめん、ちょっとだけ……二人は動かないでね」
奥。そこには細くて長い石段がある。
その下、階段の始まり付近に……“血塗れの浅井くんと田島くん”が転がっているのだ。
石段から落ちたの……?
確かに細くて急な階段だけど、こんなに酷い落ち方もないだろうと思った。
私は階段の下で仰向けになっている、“未来の田島くん”にそっと話し掛ける。彼は私と目が合うと、瞳孔を開いたままパクパクと口を動かす。
「田島くん……何で、こんなことに?」
『落と……された……』
「…………誰に?」
『神……様……』
「…………?」
神様? まさか……?
上を、石段を登った所に、ゆらゆらと何か白い影が見えた。ハッキリとは分からないので、きっと私の能力の範疇外の存在なのかも。
『…………男同士で、来るな……って……』
「……………………」
…………なんか、厳しい神様なのね。
「……二人とも、ちょっと引き返して。そこの鳥居の外へ」
「えっと……」
「……お願い」
「あ、うん。わかった……智哉」
「うん……」
私の緊迫した感情が伝わったのか、田島くんが浅井くんの肩を押して二人で鳥居を出る。
すると、私の目の前にいた“血塗れの浅井くんと田島くん”が煙のように薄くなって消えた。
「……回避した」
これは肝試しを中止した方がいい。
「明乃ちゃん!」
「あ、みんな……」
二人が鳥居を出た所で、私を追ってきたみんなが合流していた。
「明乃くん、まさか『アレ』か?」
「はい……中止した方がいいかもしれません。この上には、この山の“主”がいます」
昔、『暗闇の眼』の修行をしていた時に聞いたことがある。
死亡の原因が人為らざるものなら、関わる前に近付くな……と。
この山は小さいけれど、ちゃんと神社が建てられ祀られているのだから、主である山神様はきっと強い力を持つのだろう。
「肝試しは残念だが中止にする。理由は後で教えるから、一先ず旅館へ戻るぞ!」
中止の理由は梅先生が何か誤魔化してくれると言ったので、お言葉に甘えて黙っておくことにした。
怒らせる前に立ち去るのがいい。きっと今ならまだ…………
みんなでスタート地点に戻ってきたので、これでもう安心だと思った私の考えは甘かった。
スタート地点の近く、さっきと同じく赤い鳥居が目に入ったのだ。これは山の入口の鳥居。
その先は道路になっている。
「…………嘘……」
道路の真ん中、点々と人影が倒れているのが分かった。
その数…………六人。
「仕方ない、帰って風呂に入ろう」
「はーい」
「あー、ちょっとだけなのに、何か疲れた……」
「……私、ちょっとホッとしました」
「早めに寝るか……」
ぞろぞろと鳥居に近付くみんな。
「みんな、スト――――ップ!!!!」
「「「「えっ!?」」」」
「鳥居をくぐっちゃダメッ!!!!」
……私の考えは甘かった。本当に。
「え? え? 何?」
「まだ、何かあった?」
みんなの動揺が痛いほど伝わる。
……誤魔化し切れないかも。
梅先生がみんなを一ヶ所に集めて、そこに留まるように言っている。
「お前たちはそこで待て。…………明乃くんどうした?」
「……先生、今この山を出たら、みんな死にます」
私たちはとっくに、この山の山神様を怒らせてしまっているみたいだ。
「鳥居の外に出られません……戻れないなら、山の上に進むしかないかもしれない……」
「それは、どういうことだ?」
山の上に進んで神社へ行く。
そして山神様に許しをもらい、無事にこの山を出なければならない。
「何でこんなに神様が怒っているのか」
まず、この山に私たちが入った時点で、神様が怒る条件ができてしまった。
考えられる理由は『時間』『人数』『男女』『服装』『持ち物』…………これでもし、何もなく『ただ何となく』なら、私たちは終わり。
「……どうする? 明乃くん?」
梅先生が天を仰ぎながらため息をつく。しかし、その口の端は不敵につり上がっていた。
「梅先生……まさか、楽しんでますか?」
「フッ……さぁ? だが、今までにないピンチだと思ってな。頼れるのは明乃くんだけだ」
「…………まだ、分かりませんよ」
私は“視える”だけ。
その視えることだけを頼りに、突破口を探り当てなければならない。
「ここの鳥居を越えなければいい……上の鳥居で助かるパターンを探しましょう……」
こんなに緊張するのは久し振り……人の命が掛かっているのに、私はどこか高揚しているのだ。
「……絶対、みんなを守るのよ」
自分に言い聞かせる。
――――例え“暗闇の眼”のことを気味悪がられても……
「“友達”の命は守る……」
そのための覚悟なら、いくらでもできるわ。
後日。坂城温泉旅館、大浴場。
椎丈「いやー、私はあんまり騒がしいのは苦手でしてねー」
咲間「はい……私もです……」
椎丈「やっぱり風呂は静かに入りたいですね」
咲間「えぇ……まぁ……」
椎丈「……でも、今は落ち着きません」
咲間「……え?(困惑)」
椎丈「だって……一人じゃないので……」
咲間「そうですね……(しょぼん)」
椎丈「なんか……ドキドキします。咲間先生と一緒で……」
咲間「へ? な、な、何でですかっ……!?(緊張)」
ドドド!!バシャバシャバシャバシャ!!
医院長「うぇぇぇ~~~いっ!!温まってますか、皆さん!!!!」
一同「「「うぇぇぇ~~~い!!」」」
※よいこのみんなは、飲酒直後の入浴はひかえようね!
椎丈「私たちがいないと……医院長が寂しがって、みんな連れて来ちゃうんですよ……“おな病”(同じ病院勤務)がいないって……」
咲間「あぁ、そうですね……(ガッテム!!!!おな中みたいに言うなぁぁぁっ!!!!)」
※全国の病院から沢山人が来ているので、実は人見知りの医院長は、二人がいないとちょっと心細くなっちゃうぞ☆
…………続ける?




