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(56) 交渉1

読者の皆様、お待たせいたしました。

今回は、敵意剥き出しの相手に対し、和馬が必死の交渉を試みます。

それでは、第56話の始まりです。

今、コンテナ上部へと立つ老人は至近距離からクロスボウの射出先端部を和馬へと向け、いつでもつがえられた矢を発射せんばかりにトリガーに指先を掛けたまま狙いを定めている。

黒い細身のボディーを持ったリカーブクロスボウにつがえられた矢の先端部には、鋭く尖った金属製の(やじり)が取り付けられており、見た所、殺傷能力を上げる為にカスタマイズされている様であった。




『ボルト(矢)には、3ブレイドヘッドが取り付けられているな。こいつは、貫通力こそはノーマルヘッドよりも劣るものの、直撃すれば傷口は大きく広がるし、何よりも先端部分がかえし状になっているのが厄介だ。ん?クロスボウ本体はリカーブタイプか。この爺さんの年齢と体格から考えると、使っている弓の威力は80〜120ポンドクラスといった所だな。ただ、こいつがミドルクラスだといっても威力はバカにならんし、今、着用しているサバイバルベストでも上手く防ぎきれるかどうか……』




クロスボウの射出先端部を自分の方へと向けられながらも冷静に状況を分析している和馬の隣では、拳銃を収納しているホルスターへと反射的に手を伸ばしたまま身構えた状態の雄太が和馬へと向かって小声で囁く。



「おいおい、のっけから、こんな状況かよ」



「もしかしたら、こういう事も起こるかも知れないと、ある程度の覚悟はしていましたけどね」



「ああ。でも、これじゃあ交渉どころじゃないぞ」



どうやら、和馬達の乗ったトラックがこのエリアへと入って来た時点で相手にはすぐに察知されていたらしく、やって来た侵入者に対し、上手く先手を打つべく待ち伏せをしていた様であった。



「和馬君。これと良く似た事が確か扇島でもあったよな」



「ああ〜、相手がこうやって物騒な物を持っている点も良く似ていますね」



「さて、どうする?和馬君」



「そうですねえ、ここはまず、相手を刺激しない様、注意しながら、こちら側が敵意がない事を上手く伝えるしかありませんね」



「はあ〜、そうだな」



「ちょっと、やってみますよ」



ここで和馬は、相手に対し両手を高く挙げる事で自分達が危害を加えるつもりが全く無い事をアピールする。



「俺達は、別にあなたと敵対するつもりはない」



「そうかい!だったら、ここへ何をしに来た!」



「実はある物を譲って欲しいんです」



「ある物?ある物って何だ?」



「軽油です。車が一杯停められている、ここなら、もしかして軽油があるかも知れないと思って。今、俺達はどうしても軽油が必要なんです。もちろん、タダで分けてくれとは言いません。もしも、軽油を持っているのなら、俺達の持っている食料と交換して欲しいのです」



交渉を始めた和馬に対し、相変わらずクロスボウを構え狙いを定めたままの老人は、ぶっきら棒にこう答える。



「軽油か。生憎だが、軽油は持ってないぞ。逆になあ、こっちが欲しい位だ。ここまで、やって来たのに期待外れで残念だったな」



「はあ〜、そうか……。軽油は、ここには無いのか……」



ここなら、高い確率で軽油を入手出来るだろうと和馬達は期待していただけに、やはり備蓄が無いと言われてしまうと、そのショックはかなり大きい。



「和馬君、あてが外れちまったな」



「はあ〜、参りましたね。もうこの先、軽油が手に入るかどうかわかりませんよ」



「う〜ん。まいったな」


困惑した表情を浮かべながら、小声で話している和馬達をクロスボウを構えたまま睨んでいた老人は、今度は2人の腰の位置へと目をやり、そこに拳銃が収まったホルスターが装着されている事に気づく。



「なあ、ひとつ聞くが、あんたらが腰に挿している銃はエアガンか何かなのか?」



どうやら、老人は和馬達が脅し目的か何かの為にオモチャの銃を携帯していると思っている様だ。



「いや、これは本物の銃なんだけど……」



「はあ?本物だって?おいおい、本物の銃がそんな簡単に手に入る訳がないだろう」



「そう言われてもねえ。本物だって事に間違いは無いんだけど」


「なら、その銃が本物だとして、一体そんな物をどこで手に入れたんだ?」



相変わらず強い口調である老人の問いに対し、次第に答える事が面倒くさくなってきた雄太は、どこかぶっきら棒な感じでこう答える。



「まあ、色々とね。それよりいい加減、俺達に向けている、その物騒な物を下げてはもらえないか?」



「あんたらが、こちらに対して何も危害を加えないと証明出来たら下げてやるよ」



「はあ?証明?証明って言われてもねえ」



どうやら今の所、相手がクロスボウを下げるつもりが無く、お互いの会話についても平行線をたどり始めている事から、思わず舌打ちをした雄太は和馬へと耳打ちをし、面倒くさい奴に関わってしまったと囁く。

最後まで読んで頂きましてありがとうございます。

次回も相手との交渉は続きます。

果たして、相手は警戒を解いて交渉に応じてくれるのでしょうか?

それでは次回、「交渉2」をお楽しみに!

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