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(38) ルート選択

読者の皆様、お待たせいたしました。

今回は、千葉市へと向かう為のルート選択についての話です。

それでは、どうぞ!

千葉市方面を目指し、元来た道をひた走るトラックの前方には、獲物を探して路上をさ迷い歩く、7、8人程の感染者の群れが姿を現す。



「整備工場の周辺にいた奴らか。しかも、人数が増えていやがる」



「奴ら、整備工場から、ここまで追い掛けて来ていたんですね。雄太さん、何とか避けられませんか?」



「ああ。そうだな。やってみる」



さ迷い歩いていた感染者達は、前方から走って来るトラックの存在に気付くと一斉に叫び声を上げて走り始め、この状況を確認した雄太は、冷静な判断でハンドルを少し右側へと切ると、トラックの進路を反対車線側へと大きくふくらませた。



「よしっ!上手くいった!」



「やりましたね。雄太さん」



トラックを反対車線側へと大きく迂回させる事で、感染者集団を上手くかわした雄太は、再びトラックを元の車線へと戻し、アクセルを踏み込んでゆく。

目の前の獲物を取り逃がす事となった感染者達は、すぐに向きを変え、尚も執拗にトラックを追い掛けるが、加速してゆくトラックのドアミラーに映る、その姿は次第に小さくなってゆく。

こうして、上手く感染者集団をかわす事に成功した和馬達は、一路、最初の目的地である木更津市を目指し前進する。



走行中の車内では、グローブボックスの中から、2つ折りにされた広域地図帳を見つけ出した和馬が地図帳を大きく広げ、これから先のルートをどう選択すべきか考えを巡らせていた。

このルート選択は、和馬達が無事に千葉市方面へと辿り着く為には、非常に重要な事であり、下手に選択を誤ってしまうと大変な足止めを食らうばかりか、足止め中に感染者に襲撃を受ける可能性も高くなる。

ここで、ルート選択をする際、最も選んではならないルートは、工場地帯や商業区域に面した、常時、車の往来が激しく、通勤や帰宅時に交通渋滞が発生し易い幹線道路だ。

こういった幹線道路は、渋滞発生時に感染者の襲撃を受け、車両がそのまま放置されている可能性が高く、前進する為には、いちいち放置車両を撤去する事を余儀無くされ、余りに無駄に時間が掛かりすぎてしまう。

また、商業区域に面した道路の場合、近隣に住宅地が広がっている可能性が高く、人口密度の高さゆえに徘徊する感染者数も必然的に多くなる。

ただし、放置車両が多い区域は、一見すると、問題しか無い様にも思えるが、燃料調達の点から考えると、必要な燃料を車両から抜き取れる可能性が高く、逆に交通量が少なかった道路では、スムーズな走行と安全性が高まるものの、放置車両が少ない分、燃料入手が困難だというデメリットがある。

これらのメリット、デメリットを充分に把握した上で、今、和馬は、予め考えていた3パターンのルートの中から、最も適したルートの選択に迫られていた。

ここで、和馬が考えていた3パターンのルートとは、まず第1に東京湾岸を通る国道127号線を使うルート。

第2に房総丘陵山間部を通り抜ける自動車専用道路である富津館山自動車道を使うルート。

第3に同じく房総丘陵山間部を抜ける国道410号線を使うルートである。

これらのルート選択の内、まず、国道127号線については、普段から車両の往来が激しかった関係から、災厄発生時における避難による渋滞発生、並びに道路上への車両大量放置の可能性が最も高い道路である。

更に国道127号線は、トンネル箇所が多い国道でもあり、トンネル内に大型車両が放置されていた場合には、まず撤去にかなりの困難が伴うと考えるべきであろう。

その点を考えると、国道127号線は、まず避けるべきであり、次に富津館山自動車道が候補として上がって来る訳だが、この自動車専用道路についても渋滞発生の高さとトンネル箇所が多い事は国道127号線と同じであり、やはり必然的に選択肢から外さざるを得なくなってくる。

そうなると、選択肢として最後に残るルートが国道410号線である。

この道路は、他のルートとは違い、トンネル箇所が比較的少なく、普段の交通量もさほど多くは無い為、渋滞や車両放置をしている可能性はかなり低い。

ただし、山間部を通り抜ける道路である為、カーブや高低差が激しく、その為に余分に掛かる燃料消費がかなり気掛かりではある。

また、放置車両が少ない事が考えられる為、走行する場合においては最良だが、その分、放置車両から目的の燃料を抜き出せる確率は低くなる。

だが、安全面から考れば、国道410号線が一番無難なルートであり、ここは、目的の放置車両が絶対に見つかる事を信じ、賭けに打って出ようと和馬は考えた。



「雄太さん。ルート選択が決まりましたよ」



「本当かい?それで、どこにするんだい?」



「国道410号線を通る予定です」



「なるほど、410号線か」



ここで、和馬は、ルート選択の根拠を雄太へと伝え、和馬の説明に納得した雄太は、走行していた国道127号線を外れて右側へと曲がり、国道410号線へと向けて前進する。

国道410号線へと接続する市道へと入ったトラックの前方には、道路上にゴミや細かな障害物が誰にも片付けられる事も無く、飛散したままの状態となっており、ハンドルを握る雄太は、下手に踏みつけてタイヤをパンクさせる事の無い様、注意を払いながら、上手くかわしてゆく。



「くそっ。やたらとゴミが散らばっているな。おっと!危ない!ふ〜う。ところでさあ。和馬君。これから、千葉市へ向かう前に確か、木更津市に立ち寄るんだよね」



「ええ。木更津市の研究施設の事ですね」



「うん。木更津市はさあ、千葉市へのちょうど通過点だし、この機会にあの研究施設で色々と調べておきたい事もあるんだよね」



「確かに俺達が北神島へと連れて行かれた理由も知りたいし、あの研究施設なら真実がわかりそうですよね」



和馬達が、北神島へと送られる原因となった研究施設の場所については、周辺地理に詳しく、土地勘のある雄太によって、既に位置が特定されており、和馬や雄太にとっては、移送理由や劇症型殺噛症についての情報が得られる可能性の高い研究施設へと立ち寄る事は、全てを知る為の重要な機会ともいえた。

もちろん、研究施設へ寄るとなると、千葉市へと到着する時間は遅れてしまう事にはなるが、今回、千葉県へと上陸した訳には、両親を救出するだけでは無く、今度の出来事の真実を一刻も早く知るという、もう1つの理由もあるのだ。

そして、先に研究施設へと向かった事が、和馬達にとって、後々の展開に大きく関わる事となる、ある人物と出会う、きっかけへと繋がってゆく訳だが、今の彼等には、その事に対し、まだ知るよしも無かった……。

最後まで読んで頂きましてありがとうございます。

第38話、いかがだったでしょうか?

それでは、次回をお楽しみに!

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