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(28) 上陸2

読者の皆様、お待たせいたしました。

今回、いよいよ、房総半島への上陸を果たした和馬と雄太に最初の恐怖が訪れます。

これより、2人に訪れる危機とは、いったい……。

それでは、第28話の始まりです。

「おおっ!」



「ええっ!何だ!」



背後から聞こえて来た、突然の大きな物音に2人の緊張が一気に高まる。

ここで、真っ先に振り返った雄太は、シースからマチェットを抜き取ると、音の発生したと思われる方向へと刃先を向け、素早く構える。

しっかりと両手で構えたマチェットの黒い刀身は、今すぐにでも何かが飛び出して来るかも知れぬ恐怖によって、小刻みに震え始める。

その雄太の隣では、同じくマチェットを構えた和馬が、音の原因が何なのかを確め様と左右を見回しながら、必死になって探すが、特に何も動く物は見当たらない。




『くそっ!一体何なんだ!』




恐怖心と焦りによって、額から冷や汗を滲ませている和馬と雄太は、その場に立ち尽くしたままの状態で、音の発生原因を探してはみたものの、その原因が何かを突き止める事は出来ず、結局、全く何もわからないまま、再び周辺は不気味な程の静けさに包まれた。




『何だか、あの音は、木箱か何かが、下へと転がり落ちる音にも似ていたな。もしかしたら、積まれていた木箱にネコが何かが乗って倒したのかも知れない。うん。そうだよ。きっと、そうだ。だから、落ち着け。落ち着け。とにかくだ。まずは、とっとと、早く、この気味の悪いエリアから抜け出してしまおう』




激しく動揺している自分自身を何とか落ち着かせ様と左手を胸に当て、幾度も深呼吸を繰り返す和馬の肩を隣に立つ雄太が指先で軽く叩く。




『うっ!』




この状況で、急に呼ばれた事により、慌てた様に隣を向く和馬に対し、雄太は、出口方向を指差しながら、一刻も早く、この場から抜け出す様にハンドサインを送っている。

雄太から送られて来たハンドサインを確認した和馬は、無言のまま頷いた後、早く、この路地から抜け出す為、再び、雄太と共に急ぎ足で前進する。




『よし!これで、路地を抜け出したぞ!』




何とか、見通しの悪い路地を抜け出た先には、今度は、車両が普通に往来出来る程の道路が続いており、そのすぐ目の前には、芝生や遊具を備えた公園が広がっていた。



「雄太さん。確か、この公園を抜ければ、広いメイン道路に出るんですよね」



「うん。そうだね。何とか、このまま、広い国道にさえ、出てしまえば、目的の車だって、上手く見つかると思うよ」



「よし。それじゃ、安全確認をしてから、公園に入ってみるとしますか」



ここで、2人は一旦、公園の入口で立ち止まり、まずは、公園内に感染者が徘徊していないかどうか、状況を確認し始める。

ここは、先程の港内と比べ、余り霧の影響を受けずに済んでいたのか、公園内の視界は極めて良好であり、更には、今の所、特に人の姿も見当たらない。

一見すると、学校のグラウンド程の広さがあるのではないかと思われる公園内には、低木の植え込みや緑の芝生が広がっている他にジャングルジムや滑り台、ブランコなどの定番遊具が点在し、更に奥側には、国道へと抜け出る事の出来る出口もある様だ。



「よし。よし。こいつは、都合の良い事に誰もいない様だな。これなら、行けるぞ。ん?あれ?和馬君、どうした?」



公園内の安全確認を終え、今の所、脅威対象が見当たらない事に、ほっとした雄太は、隣に立つ和馬が、しきりに、前方よりも後ろを気にしている事に気付く。



「いや。あの。やっぱり、さっきの物音が気になっちゃって。もしも、あの音の主が、いつの間にか後ろから迫って来ていたら、どうしようなんて考えてしまうんですよね」



「ああ。そうだな。確かに、さっきの音には、ビビったもんなあ」



「ですよね。だから、ついつい、後ろをね。あ、雄太さん。すみません。俺、何か、足止めをしちゃってるみたいですね」



「いや、そんな事はないよ。それじゃ、和馬君。誰もいない今の内に、さっさと公園を抜けちまおうぜ」



「そうですね。行きましょう」



手にしたマチェットを握り締め、無人の公園内へと足を踏み入れた2人は、周囲を警戒しつつ、公園内を真っ直ぐに突っ切る様な形で伸びる小道を出口を目指して歩いて行く。




『ようし。このまま、何も出てくるなよ』




これから、自分達の身に災難が降りかかって来ない事を一心になって祈る和馬は、感染者による後方からの襲撃の可能性も考え、時折、立ち止まっては後ろを振り返り、後方確認を行う。

そんなナーバスになっている和馬の隣では、額に冷や汗を滲ませた雄太が、側方に植えられた低木の茂みに紛れて感染者が待ち伏せをしていないか、常に注意を払い続ける。



「公園出口までは、もうすぐですね」



「ああ。このまま、国道へ辿り着くまで、何も無しで頼むぜ」



「今の所、出口付近には、誰もいないし、これなら雄太さん、大丈夫で……」



「ん?和馬君、どうした……。あっ!」



会話の途中で異変に気付いた和馬は、慌てて話を中断すると、前方を見据えたまま身構え、そのただならぬ様子にハッとした雄太も危機的状況が自分達に迫って来ている事に気付く。



「くそっ!まずい!」



「やばい!すぐに隠れないと!」



どこかに身を隠す場所は無いかと、慌てて周りを見回している、2人のいる位置から更に50m程先、つまり公園出口付近に黒い人影が見えており、それは、確実に2人の元へと近づきつつあった。




『どこか隠れる場所……。隠れる場所……。あっ!』




上手く身を隠せそうな遮蔽物は無いかと、慌てて左右を見回していた和馬の目にある物が映った。



「そうだ!あれだ。植え込みだ!雄太さん。そこの植え込みに身を隠しましょう」



ちょうど、身を隠すには、うってつけともいえる低木の植え込みの存在に気付いた和馬は、雄太の肩を叩き指差すと、素早く移動を開始する。



「お、おう。わかった」



和馬の後に続く形で、雄太もすぐに移動を開始し、2人は青々と葉を茂らせた低木の植え込みの裏側へと素早く身を隠した。

自らの姿を上手くカモフラージュするには、最適ともいえる、緑濃い茂みの影へと身を潜めた2人は、屈んだ状態で息を殺したまま、木々の葉の隙間から、じっと向こう側の様子を伺った。

まだ姿は見えては来ないが、ゆっくりと確実に近づきつつある相手の気配を感じ、和馬と雄太の緊張は更に高まってゆく。

もうすぐ、2人の前へと姿を現すであろう、この相手とは、いったい何者なのであろうか?

非発症者?

それとも……。

最後まで、読んでいただきましてありがとうございます。


さてさて、和馬達に近づきつつある人影の正体とはいったい何なのでしょうか?

味方?それとも……。


ではでは、次回をお楽しみに!

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