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未来視の魔女  作者: 譜楽士
黒い貴女が魔女になるまで
17/37

幕間3~それぞれの恋愛事情

※主な登場人物(吹奏楽部OG)

・高久広美…バスクラリネット担当。

・今泉智恵…ユーフォニアム担当。

・関堀まやか…フルート担当。元副部長。

・貝島優…打楽器担当。元部長。

「って、ていうかさ!? 優も滝田先輩のこと、好きだったんじゃないの!?」


 と――収まりかけた火種に、さらにうっかりと油を注ぐのが、今泉智恵(いまいずみともえ)という人間なのだった。

 こ、この女、せっかく事が穏便に済むところだったっていうのに……。

 関堀(せきぼり)まやかから話題を逸らすためとはいえ、それはとんでもない悪手だ。まあ、まやかもあそこまでこの同い年に脅しをかけたんだから、彼女にも責任があるっちゃあ、あるんだけど。


 ともかく、パニックになった智恵に突然その矛先を向けられた貝島優(かいじまゆう)は、ぎょっとした顔で言ってくる。


「な……何言ってるんですか智恵!? それは今、関係のないことじゃないですか!?」

「いいじゃんもう! みんな卒業したんだし、この際だから全部言っちゃおうよ! ねえねえどうだったの優!? 滝田先輩のことどう思ってたの!?」

「あ、わたしもそれ、ちょっと興味あるわ」

「ちょっと!? まやかまで何言ってるんですか!?」


 まさかの友人の裏切りに、優は県大会予選のあのときばりに、ショックを受けた顔で悲鳴をあげた。

 なんていうか、あの馬鹿弟子の一世一代の大勝負が、このスイーツな女子会トークで出た発言と同じくらいの爆発力というのが、微妙にかわいそうではあるんだけど……。


 うん、でもまあ。

 結局のところは、根っこがつながっている話だからしょうがないのか。


 優が滝田先輩を好きだったのは、もうみんなにバレているし。

 そりゃそうだ、あんだけくっついて回ってたんだから当然だよね。で、それが元の生真面目さと相まって、あのよーな迷惑行為に及んだわけで……ああ、なんだろう。恋する乙女の暴走って怖いもんだねえ。


 まやかもある意味ではそうだったんだけど、相手が完全に部活からいなくなっちゃったから、まだ心の整理がつけやすかった。

 けど優の場合は、届きそうで届かなかったから、余計に変な方向に折れ曲がっていっちゃったんだよね。


 もちろんその辺りは、みんな多少は分かっているんだろう。

 なので、これは改めて本人から、どうだったのか聞いてみようという振りでもあるのだ。

 そう考えると、意外とこの流れはそこまで悪いものでもなくて、智恵の言う通り「この際だから全部言っちゃおう」ということなのかもしれない。


 なので、あたしが騒ぎを止めるのを中断して、生暖かい目でぎゃあぎゃあ言う優を見ていると――彼女は、「べっ、別に……私のことはどうでもいいじゃないですか!!」と叫んで、同い年たちの追求の手を振り払った。

 そしてなぜか、あたしの方をギッと睨んで――その手に抱えた爆弾を、思い切りこっちに投げつけてくる。


「だ、大体、広美はどうなんですか広美は!? 好きな人とか、いなかったんですか!? いたでしょう高校生活で一人や二人くらい! いましたよねえ、そりゃあいましたよねえ!?」

「え、あたしかよ」


 頬杖ついてコーヒー片手に同い年の恋バナを聞くつもりでいたら、どうしてか矛先がこっちに向いた。

 というか、いくら自分が逃げるためとはいえ、ターゲットをこっちに擦り付けないでほしいんだが……そう思っていると、智恵とまやかが案外ノリノリで言ってくる。


「あ、でも確かに、広美の好きなタイプって気になるかも」

「そうねえ。何だか普通の人とか相手にしなさそうだし」


 おいまやか、今何て言った。


 ていうかこいつら、もう普通にきゃあきゃあやりたいだけじゃねえか。

 まあ、高校生活を三年も一緒に過ごしてきたのに、一度もこういう話をしてこなかったあたしらだ。卒業式の日くらい、こんな風にはしゃぐのもアリなのかもしれない。

 もっとも、あたしに彼女たちに話すような、そんなキラキラした恋愛話なんてないんだけど――とため息をつくと。

 智恵が言う。


「そうだねえ。広美はなんか、ものすごい大人な人じゃないと合わなさそう。例えばそう、城山先生とか?」

「え」

『えっ?』


 不意打ちでその名前を出されて声を出したら、周りの人間がそれ以上に反応した。

 呆然とするあたしをよそに、同い年たちはテーブルの隅に集まって、ヒソヒソと話をし始める。


「え、城山先生って、今いくつ……?」

「本町先生の後輩だというお話ですから、三十代前半くらいでは……?」

「となると、確実に一回り以上年上よね……?」

『え……それって色々大丈夫……?』

「分かった分かった。話すからそんな、ドン引きした目でこっちを見ないでくれるか、あんたら」


 席の端っこから勢ぞろいでそんな顔をされたら、さすがにあたしだって傷つくよ?


「あー……あの人に関しちゃ、別にそういうつもりじゃないんだけどねえ……」


 決まり悪く頭をかきながら、さてどうしたものかと考える。

 といってもこの子たちが期待するような、そんな浮ついた感じでは、これは本当にないんだけどな――。

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