八十三話 千年前 完成!! クローンNO.4101040モデルTAKARABUNE
クローンを造り始めてから二十五年の月日が流れていた
我が娘もすくすくと育ち 気がつけば全寮制の高校へ進学する為に本土の知り合いの研究員に預けていた
だから今はえりちゃんと二人暮らし 普通の子供では無いとはさすがに思っていたけど
最初に見つけた日から姿が全く変わっていないのだ
だけど一緒に娘と遊んであげたり
卓袱台を挟んでご飯を食べている分では周りと変わらない普通の子
人目を考慮して島民には知らせていない私の隠し子みたいになってしまったけど
少女の力は研究面でも必要不可欠と踏んで重宝している部分もあるのかもしれない
あの時に見たえりちゃん自身を複製している謎の力 それに魅入られてしまっていた
拾った後 翌日に研究所へ連れて行き クローン一体の製造をお願いしてみた
だけど少女は首を傾げている
〝 クローンってなぁに?? 〟
〝 えっと…… 何て説明すればいいんだろう…… 私達のような人間を一体創って欲しいの 〟
〝 人間とクローンって何が違うの?? 〟
〝 それは…… 母体から産まれるのと人工的に造られるのと…… 〟
〝 ……それは同じじゃないの?? 〟
〝 同じかもね じゃぁ人間を一体! この前えりちゃんがやってくれたのと同じ物を創って欲しいの 〟
〝 でもあれは身体を入れ替える為のやつだったし~~
美味しいご飯が食べれれば もうやる必要はないと思うんだ~~ 〟
〝 そこなんとか! 今日はご馳走作ってあげるから!! 〟
〝 …………〝ママ〟 〟
〝 え? 〟
〝 ママって呼んでもいい?? 〟
〝 いいよいいよ!! 一緒に暮らしているんだし…… どんどん呼んでよ! 〟
〝 ママ…… フフ!! 分かったよママ!! 〟
そして私達が短命の稀少心臓に合う人工の肉体を模索した二十五年の茨の道は
えりちゃんという謎の少女の魔法の一振りにて 一瞬で完成したのであった
少女曰く 〝全く新しい人間〟は創り出せないということなので カプセルに入る肉体は昔の私に似ている
髪の毛一本食べさせてここまでの再現度は恐ろしや
正式名は〝クローンNO.4101040〟 商標名はTAKARABUNE
意味があるのかは判らないが 万が一このクローンが役に立つ事を見越してのビジネスとして活動する為の保険だろう
一固体のクローンの商標権を独占して良いことなんて思いつかなかったし
もしもヒーロー的な活躍をしたとしても それは人類が滅亡した後だというのに 何を考えてるのだろうか上は
とりあえず研究の最終目的をクリアしたのなら祝杯だ
手柄は全部えりちゃんのものと言っても過言ではないのだからMVP諸々は彼女が総ナメでしょうね
愚痴は度々耳にはするが 正直先の見えない研究に心からの救いの言葉を口にする者の方が多い
アイリーンさん率いるチームに限っては神様扱いだ
私個人としては別に横取りされたとは思っていない
えりちゃんの力に未だ驚いているもんだから 田舎者という落ち目を感じてるくらいだわ
それにクローンが完成したからといってすぐに夏休みに入れる訳ではない
品質管理を怠るべからず 仮に私達が寿命を果たした後の未来にて 稼働が必要ならば何代にも渡り
ホルマリン漬けにされている〝フラスコの中の幼女〟を守って行かなければならないのだ
『臓器に異常はありません ……ママ』
「ありがとう友達タイプ! ……今ママって呼んだ??」
『えっ…… 言いましたか?』
「なになにぃ?!! えりちゃんみたいに~~ もしかして甘えたいの?!!」
『そういうつもりは…… ですがあなたは言わば私の義理の母ですので 一種の礼節なのでしょうか??』
「そうね…… キャリーもソレイユフレアで忙しいのか全然帰って来れてないし……」
タブレットを机に置いて私は 友達タイプの頭を優しく撫でてあげる
「良いよママって呼んでも!! なんなら一緒に暮らす??」
『っ……はい!!』
満面の笑みを浮かべる彼を見たのはこれが初めてだった
クローンと言えど機械ベースの人工知能AIクローン
人らしい面が無いのは仕方の無いことだと思っていたが
今までドライに接して来たことに 何故か後悔を覚えていた
その晩 私はえりちゃんと手を繋ぎ 友達タイプを連れて自宅に帰る
子供もいないし特に帰る必要は無いのだが 慣れてしまえば我が家が恋しくなるもの
何よりご馳走を作る日は帰り道の空気がいつもと違って これが癖になっている
「懐かしい匂い……」
『どうしたんですか谷下博士……? いやっ……ママ……』
「ンハハ!! 慣れないよねぇ……
いやさ 今日みたいな何でもない日を思い出したら 懐かしいってなるのかなって……」
「見慣れた場所で永く暮らしているとですか??」
「今もこうして 楽しい時にはついつい立ち止まるの
でも何が懐かしいのかってね 子供時代をここで過ごしてるわけでもないのに」
『〝未来〟ですかね』
「と言いますと?」
不意に友達タイプが立ち止まる
まるで遠い先を見つめているかのように海を見渡して 物思いにふけっていた
『〝榊葉直哉〟って名前…… ご存じですか?』
「知らない名前ね……」
『そうですか…… 変な質問してすみませんでした』
「未来か…… 生き霊もあちこち飛んでいくって言うし
知らない間に私の生き霊が未来に遊びに行っているのかな…… なんてね」
おかしな話をおかなし話で覆い被せた私は その時は友達タイプが疲れてるんだなと察していた
一方えりちゃんは友達タイプに向けて目をギョロッと見開いていたが気にもしてなかった
家に帰れば一通りを終えて就寝に落ち着く時間帯
私が深い眠りに就こうとしている その時
今でも微かに覚えている えりちゃんと友達タイプの奇妙な会話を




