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三十九話 三日目 訃報を伏せる悲報


落ち着きを取り戻した高山が冷静になったところで四人は車に乗車する

街へ移動する車内で谷下は 高山から事態が急変していることを知る


「院内では既に染さん達と合流してコロナウイルスの認知が広がってるんだ

子々孫村の〝考古学者〟である夕貴さんにも助力を頂いていたんだが……」


「どうしたんですか?」


「患者に見られる症状が感染症の伝記から読み取るに 発見された四種のコロナとは似つかない症状や感染傾向があるんだ

どの検体も令和以前の当時のウイルスの物では無いという仮説を試みた医師達は

令和後期の資料を集めて貰うよう夕貴さんに頼んでいる」


「でも〝令和後期〟って言ったら……」


「そう…… 世界総人口の80億人が死滅した文字通りの〝人類滅亡〟が起こった時期とされている

医療崩壊からの最終核戦争に発展し 人類が絶滅するに至るまでの大事件が被毒連鎖していった悲しい結末だ」


「あくまでもそう書かれている本が有力説だったってだけの話なんですけどね」


「善人は疫病に抗えず 悪人と評価された者は何物にも抗い続け

尊い命は正当化された悪性の正義の理不尽な犠牲を伴い続けた末に…… 築き上げた己が達の文明を消し去った

生き残ったのはこれ程ちっぽけだと言うのに 何故立ち止まれなかったのか」


「……だけど私達を未来へ残してくれた人達も少なからずいた これが真実です」


「だな…… 善悪関係なしに全壊させるのはただ事ではない

数ある戦争や氷河期ですら全滅を回避した人類がそうそう負ける筈が無いと思っている」


「夕貴姉さん…… いや夕貴さんは今図書館にいるんですかね?」


「おそらくは…… 私達は警察と連携して感染経路を辿っている

夜桜さんもおそらくそっちで動いているだろう」


「夜桜さんが?!!」


谷下はバックミラー越しに三木の様子を伺う

コロナを時を超えて運んできた張本人はずっと下を向いている

千代子も既に察していて視線を窓の外へと逸らしていた


「だがちょっと腑に落ちなかった…… というよりは夜桜さんらしくなかったというか……

捜索の人員を最小限にして 残った所轄の人間を全員医療の方にサポートに回す提案を出してきたんだ」


「そう…… なんですか?」


「らしくは無いけど 根元を辿るより患者の人命最優先なのはやっぱり人としてのエゴなのかねぇ?」



ーー高山課長は何も知らされて無いんだ…… 混乱させない為の染さん達なりの配慮なのかな?



優しい上司との会話に秘め事を抱えながらの返答に言葉を詰まらせぬよう神経を使う谷下

本来なら上司と部下との人間関係はこんなもんじゃないのかと予想しているだけで少しは救われていた


下山して先に向かったのは 夕貴がいる図書館だ

そこで降りると頼んできた千代子は 下車した時に三木を背負うと


「じゃぁ私は夕貴さんのお手伝いしますので 何か分かったら連絡します」


「わかった…… お願いね」


「はい!! ご飯ご馳走様でした!!」


千代子は駆け足で館内へと入っていった

谷下と高山はさっそく羨門街へとUターンする


「さっきの三木って名前の子? ……風邪かい?」


「えぇ…… ……………夏風邪です!!!」


「……こんな時に大変だねぇ」


心に針が刺さっているかに思える罪悪感は無視出来なかった

指定のアパートの前で降ろして貰えた谷下は高山に今後の事を聞いてみる


「高山さんはどちらへ?」


「役所に戻って住民の対応かな? ……フッ 谷下君にも早く勤めに来て頂きたいくらい忙しいよ」


「ッ…… 申し訳ありません」


「明日はどうなんだい? そっちの問題はまだ解決していないの?」


「……はい」


「了解です!! 〝二日後〟 元気に出勤して来て下さいね!!」


「っ!!! ………はい」


車が角を曲がるまで見送る谷下は 無意識に手を胸に押し当てていた

何に不安を抱いているのか もどかしいこの気持ち それは何かしなきゃいけない意思と直結する


「ただいま戻りましたぁ」


元々殺風景だったが誰からの出迎えも無いとさらに冷たい空気を感じる

誰もいないと分かった谷下は自室に荷物を置いて 風呂を沸かしている隙に台所に向かった


「…………」


賑やかなイメージしかなかった台所の無音には違和感しか無い

微かに聞こえる蛇口からしたたる水を止めて ふと冷蔵庫の中を確認すると


「ありゃ…… 何も無い……」


大家は買い物行っているのかとも思ったが 状況も状況で谷下は財布を持って外に出た


ーー心配だから様子見に行こう 大家さんも歳だし もし感染していたら……


サンダルを履いて駆け足で商店街に向かう谷下

近場に着いた時には既に違和感を感じる程 人も賑やかさもいつもより半減している

現地に辿り着こうがシャッターはほとんど閉め切られており

それはつまり外出禁止がもう言い渡されているのだろうと谷下は察した


「ハァハァ…… こんな状況なのに大家さんは何処へ?」


しばらく捜し回る谷下 こんな事態に外を駆け回っているのは彼女と野良猫くらいだった

日も暮れ始める頃には マスク着用もあって息が普段より荒くなる谷下は空き地の土管に座って休んだ


「ハァハァ…… 何処にいるの大家さん…… ハァ……」


休憩していると 遠くから聞き覚えのある名前を叫ぶ女性の声が聞こえてきた


「……大家さん?」


「えりちゃ~~ん!! アカリヤミちゃ~~~ん!!!」


悲壮な面持ちで二人の名前を呼ぶ大家に 谷下はついつい目を背けそうになっていた


「おや! のぞっちゃんじゃないかい?!!」


大家は千鳥足で谷下へ駆け寄った


「帰って来てたのかぁい?!! 無事で良かったよぉ!!!

それで今さ人を探してるんだけども 家のアパートの住人なんだけどねぇ

えりちゃんって小さい子とアカリヤミって名前の青年を見かけなかったかい!!?」


「大家さん……」


「家を空ける子達じゃなかったのにさぁ…… もう居なくなって丸一日経とうとしてるんだよぉ!!

もうどこ行ったんだぁい……!! こんな老いぼれ残して行方不明にならないでおくれよぉ……」



その場に崩れ落ちて涙を見せる大家に 谷下は何も言えなかった




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