5−4
寝室で、日向は目を覚ました。
朝昼兼用の食事を、先ほどしたばかりのはずが、気づけば外の風景は少し日が傾いていた。
(出雲は?)
日向が、体を起こす。
彼の全身は、何も身に着けていなかった。
耳を済ますと、浴室から水音が聞こえてきた。
(シャワーか)
そのことに、彼は安堵する。
同時に、先ほどまでの情事を思い出し、苦悩と後悔に襲われた。
(やってしまった。男と……)
軽率だったのではないか、と日向は自問する。
いくら欲求不満とはいえ、これから共に暮らさなければならない相手と、会ったその日に交わるなど、と。
しかも、相手は同性である。
仮に、向こうが本気だったとして。
自分に、とれるのか。その責任が。
(これから、どう接すればいいんだよ)
不意に、浴室のドアが開く音がした。
しばらくすると、ボクサーパンツにTシャツだけの、出雲が現れる。なお、すべて黒色だ。
「あ、やっと起きた」
出雲が、自然な口調で声をかけてくる。
「よ、よう……」
日向は、思わずどもってしまった。
「ねぇ、日向さん。
俺、この後また買い出しに行くけど、何か欲しいものある?」
出雲が、ジーンズを履きながら言った。
「……いや。食材はさっき、多めに買ってきてもらったからな。
ていうか、何を買いたいんだ? 足りない物でもあったか?」
「いっぱいあるよ。
洗剤とか、掃除用具とか、トイレ用品とか。
この家、必要最低限の日用品しかなさすぎ」
「そ、そっか」
「それに……
また今日みたいなことがあるなら、ローションも買いたい」
出雲が、やや気恥ずかしそうに言った。
日向も、先ほどの行為を思い出し、むず痒い気持ちになる。
(やっぱり、ちゃんと聞いてみたほうがいいよな)
意を決し、日向は口を開いた。
「なぁ、出雲」
「何?」
「その。俺たちって、どういう関係になるんだ?」
出雲が、驚いた顔をした。
そして、怪しげに微笑む。
「日向さんの、望む形でいいよ。
都合のいい時に、セックスだけする関係でも」
その回答に、日向は、若干の苛立ちを覚えた。
「俺が言うのも何だが……
おまえ、自分を安売りしてないか?
己を雑に扱って、いいことはないぞ。傷つくだけだ」
「ふーん、優しいね。
じゃあ、『俺と付き合って』って言ったら、付き合ってくれるの?」
その問いに、日向は思わず、
「お、おう……」
と、首肯してしまった。
(いや。付き合うって、相手は男だぞ)
出雲という存在に、魅力は感じつつも……
同性と恋仲になる覚悟を、日向はまだ、完全には持ち合わせていなかった。
「そう。まぁ、期待しないでおくよ」
と、そっけなく言うと、出雲はパーカーを羽織った。
「待て。もう買い物に行くのか?」
「そうだけど?」
日向は、少し悩んで、
「俺も行く。そんなにたくさん買うなら、1人じゃ大変だろう」
「でも、日向さん、外出禁止でしょ?」
「大丈夫だ。バレないから」
日向が、不敵な笑みを浮かべる。
その顔を見て、出雲もまた、花が咲いたように笑った。
「ありがとう、助かる。
俺、人前が苦手だから、本当はついてきてくれると、すこく嬉しい」
日向が、散乱した衣服を集め、急いで身につける。
その上に、タトゥーを隠すジャケットとネックウォーマーを着ると、あっという間に準備が整った。
その裾を、出雲が掴み、伏し目がちに言う。
「……さっきの、付き合うって話。別に、真に受けてるわけじゃないけど。
でも、もし本当に付き合うなら、その間だけは、浮気はナシだからね?」
「お、おう……」
「それと、日向さんじゃなくて、大我って呼んでいい?」
出雲が、上目遣いで日向を見る。
互いの顔が、自然と近づき、2人は口づけを交わしたのだった。
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