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地球、遂に大型アプデ実装!  作者: 時雨煮雨
第一章 日常の崩壊
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第12話 決意


 それは、明らかにおじいさんが着ていた服だった。

 見間違えるはずがない。

 

 あの時、確かにおじいさんはあの服を着ていた。


 俺も、梨花さんのいる場所へと行く。

 梨花さんがしゃがみ込んでいる場所には、他にもおじいさんの身に付けていたものが落ちていた。


「先輩……私、思ってたんですよ。なんでこんなに外に服が落ちているのか……それも、服一式」


 そう言う梨花さんの声は、途切れ途切れで……嗚咽まじりだ。

 そして、俺には梨花さんの言いたいことがわかってしまった。

 俺も、その可能性を考えていた。


「ねぇ、先輩…………この世界って、人間が死んでもさっき殺したモンスターのように灰みたいになっちゃうんですね」


 おじいさんの服を抱きしめながら、梨花さんが言う。

 多分、そうだろう。

 そして、外に落ちていた無数の血が染み付いた服は、モンスターに殺されてしまった人たちのものだろう。


 人は、死んでしまったら身に付けていた服しか残らない。

 死体すら……骨すら残さず消えてしまうなんて、なんて残酷なんだろうか……。


「先輩……私、決めました。私……強くなります。強くなって、弱い人を守って……モンスターのせいで死ぬ人をゼロにしたいです」


 梨花さんは、おじいさんの服を抱きしめながら立ち上がり、俺の方を向いてそう言う。

 俺を見るその瞳は、とても真剣だった。







「ふぅ、このくらいの穴の大きさでいいかな?」


 あれから、俺たちは地下室を出た。

 そして、俺の持っているスコップで穴を掘り、そこに気休め程度だが庭に落ちていた服は全てそこに入れた。


 おじいさんの服は、個別に穴を堀りその穴へと入れる。

 仕上げに、おじいさんの家にあった木の板に名前を掘り埋めた後に突き刺し庭に落ちている石で固定した。


「先輩、そっちは大丈夫ですか?」


 地下室から梨花さんが出てきた。

 梨花さんには、服を集めてもらった後地下室でおじいさんの家にあった大きいリュックに、できる限り食べれるものやコンロ、ガスなどの機材を詰めてもらっていた。


「うん、なんとか終わったよ」


 庭を見回す。

 うん、俺が最初に来た時と同じくらい綺麗だ。


 ただ、違う点があるとすれば大小二つの土の盛り上がった場所があるくらい。


「先輩、これからどこに行きましょうか……やっぱり、避難所ですかね?」


 避難所か……確か、この辺の住民が避難するための避難所はこの地区の中学生が通う『中学校』が避難所になっていたな……。

 その他にも、避難できる市民センターや小学校などがあるが、やはり中学校が一番大きな避難所だ。


「そうだね……避難所に行ってみようか。少し歩くけど」


 道中に現れたモンスターは狩ればいい。

 ついさっき、あのゴブリンは倒せた。


 だが……あの『鬼』に遭遇したら直ぐに逃げよう。

 あれには、当分敵いそうも無い。


「それじゃあ、行きましょうか」


 梨花さんが俺の小さいリュックを背負うと、手に俺の包丁を持つ。


 俺は今梨花さんが持ってきた大きなリュックと、右手にスコップを持った。


 庭から出る前に、おじいさんの服が埋まっている場所へと目を向ける。

 そして、誓った。



 俺は、強くなってもう二度と大切な人を失うような真似はしない。



 おじいさんが守ってくれたこの命。

 これを俺は見知らぬ俺を助けてくれたおじいさんのように、誰かのために使おう。


 おじいさんがいなければ、俺は今ごろ死んでいたのだから……。


「先輩、行きますよー」


 梨花さんの声が聞こえる。

 大きな声じゃないが、結構響く声だ。


 まったく。これでモンスターが来たらどうするんだよ。


「あぁ、今いくよ」


 リュックを背負い直し、俺は梨花さんの方に向かって歩き出す。


 どうかこの先の未来に、良いことが待っていますようにと、そう願って。


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