ブクマ60件記念 『取り残された者』
今回も記念のお話です。
私は今日も陽の光と共に目覚めた。
目覚めてすぐ、私は、私が顔をつけて寝ていたベットの上を見る。
そこには、依然として変わらない、綺麗な寝顔のままの人物がいた。
いつだったかもう忘れかけているけれど、私が学校から帰ってきた時にちょうどぴったし、彼は目覚めない人となってしまった。
その場で寝るのも困るという事から、私がベットに移したが、それ以来一度しか目を開けていない。
きっと、そろそろ数ヶ月は経つだろう。いや、半年は経ったかもしれない。
最近は日付け感覚もあやふやだった。
「…………早く戻ってきてよ……」
枯れ尽きたはずの涙がまた私の両目からポタリと垂れる。
ほんの少しだけだ。
もう涙はとうの昔に流してしまった。
本当に一度だけ、私は寝ている人物が薄目を開けたことを覚えていた。
あれは、ほんの一瞬。私が泣きじゃくり、夜まで泣いていた日。
一瞬だけ私の握っていた手が熱くなり、気付いたら薄目でこちらを見て、微笑んでまた眠りについた。
その時に私は思ったのだ。
これからは、この人が、いや、お兄ちゃんが帰ってきた時にもまたいつもと変わらない生活をさせようと。
だから、私は寝る時と家にいる時、家事がなく、暇な時だけは兄の部屋で、兄が起きるのをジッと待つ。
幸いにもお金はあることから、当分の間は暮らしていけるが、一人はやはり寂しいものがある。
「お兄ちゃん……どうしてお兄ちゃんは一人で行っちゃったの……」
私が帰ってきて、お兄ちゃんの部屋で見たのは、一つの掲示板というものだった。
所詮はネットの掲示板だった。
そんな中、お兄ちゃんの見ていた画面は、謎の新作ゲームと書いてある画面だった。
ご丁寧に、URLまで貼っており、怪しさ満載だが、お兄ちゃんも新作という言葉に飛びついたのだろう。
それからというもの、私はそのパソコンはいじらずに、そのままの状態で放置してある。
もちろん、シャットダウンさせないように、充電は保ち、その画面も固定したままだ。
「そういえば、前にニュースで……」
お兄ちゃんが目覚めなくなった数日後だかに、私はテレビを見ていた。
少しでもお兄ちゃんと同じ境遇の人が居ないか、ニュースなどで放送されていないか見るためだ。
そんな中に、一際私の目を引くニュースがあった。
それは、何者かが用意したURLをクリックしてしまった人たちがその場で倒れてしまい、目覚めなくなってしまったというニュースだ。
大人数の人がこのURLにやられてしまったようで、どこの番組でも大々的に放送されていた。
「ってことは、やっぱりあのURLをクリックすれば私も行けるんだよね……?」
そんなことを思い出しながら、私は幾度かURLをクリックしようとした事も思い出した。
やっぱり、お兄ちゃんの所には行きたい。それは今でも同じだ。
だから、口に出してまでURLをクリックしようとしている。
だけど、私がもしも目覚めなくなったら、お兄ちゃんが帰ってきた時に誰も居なくなって、元の家だと思わないかもしれない。
ならば、私が帰ってくる場所を作って待つしかないのだ。
「うん。私、頑張るよお兄ちゃん。だから、早く帰ってきてよね。ずっと待ってるんだから」
私は覚悟を決め、パソコンの電源を切り、二度とURLを見れないようにした。
これで私が迷うことはもうないだろう。
「あ! 洗濯早く干さなきゃ!!」
私が急いでお兄ちゃんの部屋を出ようとした時、ふとベットに目がいってしまった。
いつもは無表情な綺麗な顔で寝ているお兄ちゃんが、私が覚悟を決めたことを笑顔で見送るかのように、少しだけ口元が笑っていた。
「全く、お兄ちゃんの笑ってる顔は気持ち悪いなぁ〜!」
久しぶりにお兄ちゃんの笑顔を見た私は気分を上げながら洗濯を干しに部屋を出た。
未だ眠っているお兄ちゃんの顔は既にもう無表情に戻っているだろう。
なんとなくだけど、あの一瞬だけはお兄ちゃんが私の覚悟を見てくれてたんだと思う。
私はそんな気がしたのだった。
どうでしょう。記念の話とかもしやいらないですか?
うーん……ブクマ100件でも考えてはいるのですが、要らなければ書きませんが……




