24話 謎の村
足跡を辿り、村を出て森を走っていた俺。
足跡を追っているうちに、俺はある開けた場所に出た。
辺りには茂みも少なく、開放された空間は敵からも見えににくく、こっちは見えやすいという完璧に守りに適した空間だった。
「ここで足跡が止まってる?」
足跡は開けた場所の入口のようなところで止まっていた。
幸いにも、近くには大きめの茂みがあり、そこに俺は隠れることが出来た。
少しだけ見えたが、今の俺のいる位置から、奥側にあらゆる家のようなものがあることに気づいた。
人間が作ったとは思えないような、無骨な家や、藁で作ったような家、木で作った家まである。
だが、どれもお世辞でも綺麗な家とは言えなかった。
「モンスターの家か……」
確かに、この世界で人間のように暮らしているモンスターが居ることは知っていた。
例えば、ゴブリンや、オーク。
ゴブリンは比較的弱く、安全だが、オークは別だった。
俺も幾度か戦ったことがあるが、全てレベルは20以上、そして、武器の扱いに長けているため、俺よりもレベルが低いオークでも俺は少し負傷することが多々あった。
「ここがゴブリンなら良いんだがなぁ……」
茂みでボソッと呟くが、その予想は一瞬で裏切られた。
偶然にも、家から出てくる何者かが見えてしまったのだ。
それも、人間の女を肩に担ぎ、長身で腰には石で作ったような剣をぶら下げているモンスターだった。
「くっそ、オークの村かよ」
ついつい愚痴を呟いてしまった。
茂みから一体のオークを見つめ、女をどうするのか俺は観察していた。
俺の予想だが、あの女は少年の村の人だろう。
男は殺し、家事などを出来る女は連れて帰る。
オークなどのモンスターによくある行動だ。
だが、俺の予想とは少し違っていた。
オークは女を肩から下ろし、広場の中心に置いてある石像の前に置いた。
女はどうやら恐怖で気絶しているようだ。
「助けるか……いや、もし仲間が大量にいたら……」
俺は動こうと考えるが、それが馬鹿な考えだとすぐに考え直した。
今からオークが行うのは儀式のようなものだと悟ったのだ。
オークは、一人だと思っていたが、やはりここはオークの村。
儀式だとすれば、辺りから集まってくるのは不思議じゃなかった。
しかも、その中には、俺の見たこともないオークのリーダーのようなモンスターまでもいた。
『オークジェネラル』
レベル:42
弱点:魔法
俺の鑑定で見れたのはレベルと名前だけだった、
相当な魔法耐性があるのかもしれない。
そして、俺はこの鑑定をした事を間違いだとすぐに気付いた。
どうやら、オークジェネラルは俺の存在に気づいたらしい。
ノソノソと大きい体を揺らしながら俺のいる茂みへと歩いていた。
「くっそ、やるしかねえのか!」
勘づかれた今、俺に逃げるという選択肢はなかった。
俺が今逃げれば、今にも殺されそうな女は儀式のために食われるか、殺されるかだろう。
茂みから出て気付いたが、オークの集まっている所には、鍋のような物や、火を焚いていることから、なんとなくだが俺は焼いて食うのだと思っている。それも、十字架の木で括りつけようとしている光景すらも見えてしまった。
「シンニュウシャハイジョスル」
片言の日本語で俺に剣を引き抜き殺気を飛ばしてくるオークジェネラル。
この状況で幸いと言えるのかもしれないが、やはりオークジェネラルはこの村のような所のリーダのようだった。
そして、何故かオークの集団は動こうすらしていなかった。
「はっ。これなら余裕だぜ」
タイマンなら俺にも勝ち目はある。
途中でオークが邪魔してくる可能性を考えるが、未だ参戦する気すらなさそうなのを見るに、なにかルールのようなものがあるのだろう。
「シンニュウシャ、オレトタタカウ。ジャマハハイラナイ。ツヨソウナテキ、タノシソウ」
オークジェネラルは強い敵と戦う時は誰にも邪魔させないらしい。
だからオークは動かないのだった。
これで、本当に邪魔は入らないタイマンが出来る。
ある意味、オークジェネラルに感謝だろう。
「オークジェネラルか、俺で勝てるのか……?」
人型の敵は俺にとって久しぶりだった。
少しだけ自分より強い敵と戦うことが少しだけ楽しみな覚えている俺がいる。
「……黒炎魔法Lv.4【ダークフレイム】」
俺も剣を抜き、オークジェネラルと対峙した時だった。
何処からか聞いたこともないような魔法が聞こえた。
そして、人間の女諸共、俺以外の生物を黒炎が包み込んだ。




