17話 街での出来事
こうして、俺とシズクがパーティーを組んだ後、俺達は転移石を使い、一度行ったことのある街へ向かった。
「ふぅ……なんか俺も疲れたなぁ……」
「ま、そりゃそうでしょ。なんてたって、あんたは死のうとしてたくらいだからね!」
「あの時の俺はどうかしてたからな」
街に入る前に、門番にお金を払い通してもらった。
夕方を超え、夜になると入場料を支払わなければならないのだ。
「さてと、町に着いたけど、まずどうする?」
俺はシズクに訊ねる。
「そうだね。私的にはとりあえず宿屋見つけたいかな。ってか、ホントはこの街嫌なんだよねぇ……」
何故かよく分からないが、シズクは嫌な顔をしながら俺に返答した。
どうしてこの街が嫌なのか俺が聞こうとした瞬間、周りにいた一人のプレイヤーがシズクを指差し、声をあげた。
「あー!!! 俺を殺そうとした魔女!! なんでお前がこの街にいる!!!」
叫ぶそいつの声に周りの人も何事かと野次馬のごとく集まってくる。
「おい! お前! 言いがかりはやめろ!」
俺はたまらず反論した。さすがに、俺のフレンドを侮辱するのは許せない。
「エンマ。言いがかりじゃないよ。ホントに私はあの人を、いや、結構な人と決闘している。あの時のエンマみたいにね。どうしても、引き止める時に雷を当てないようにしなきゃいけないからさ、殺そうとしたって思われてもしょうがない」
「あ、そうなのか。ふむ。でも、さすがにその事を大声で言うのは俺は間違ってると思うよ」
「おいお前! お前は魔女のなんだ!! 仲間か? お前らグルで俺を、いや、この街の人間を殺そうとするのか?」
どうやら、喋っている男は被害妄想が激しいらしい。
だが、こいつのような言葉にも反応するのが野次馬の人々だ。こいつらは、弱そうな獲物を見つければ吊るし上げるように間違ったことにも賛同する。もちろん、良い人も居るのだが。
「あーもう、うるせえな。てめえは死んでねえからいいだろ別に。どうせ、お前はシズクに決闘で負けたんだろ? 負けたんならどんなにお前が吠えても負け犬にしか見えねえよ」
俺は強制的にこいつのヘイトを俺に集めようとした。シズクが言われるよりも俺が言われた方がいい。
特にこういう奴は、一度言ったくらいじゃ絶対に止まらない。
「うるせえ! お前が言っても別に怖くねえんだよ!! 良いからさっさと街を出てけ! てめえらは邪魔者なんだよ!!」
どうやらこいつは俺たちを街から出したいらしい。
このままではまずい。今の状況的に、悪いのは完全に俺たちだ。野次馬の人達も段々と俺たちを悪と決めようとしているようにも見える。
「わかった。んじゃ、俺とお前で決闘しないか? 俺が勝ったら、こいつを侮辱するのはやめろ。そうだな、俺が負けたら俺はここで死んでやるよ」
俺は最もしたくなかった選択をした。もしも、こいつが俺より強かった場合、俺は死に、シズクはこのまま街を追放される。
「ダメだ。決闘の話は良いが、俺が勝ったら二人に死んでもらう。それが条件だ。もちろん、お前が勝ったら俺は今までの言い分を全て謝り、土下座してやる」
「シズク。それでもいいか?」
「もちろんだ」
シズクはどうやら、俺が負けるとは思ってないらしい。俺にはまだこいつの実力は分からないけど、シズクまで賭けられちゃ勝つしかないだろう。
「じゃ、決闘を始めよう」
「あぁ。しょうがなく俺が、お前をぶっ殺し、お前ら2人を殺人鬼をこの世から葬ってやるよ」
俺が決闘の申請を送り、決闘のフィールドが指定される。野次馬は俺達から離れ、決闘始まるまでの秒数数えが始まった。
「シズク。お前も離れてろ。余裕で俺が勝ってやるよ。お前に勝った俺なら余裕だろ!」
「もちろん! エンマなら余裕だよ!」
シズクは満面の笑みで俺から離れた。初めて会った時のシズクとは全然違う顔つきだ。
「さてと、やりますか!」
秒数が0になり、決闘が始まった。
野次馬は一斉に歓声をあげる。
さぁ、俺とシズクの命を賭けた決闘の開始だ!




