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#85 ‥‥‥たまにはマジなのデス

本日2話目!!

…‥‥ありんこ、再び発生中。どこからきているのだこいつらは?


SIDEグルツゥス


‥‥‥どう切り出せばいいかもわからず、ほぼ奇襲の形で攻撃を放ったグルツゥス。


 その放たれた攻撃はシアンたちの家に直撃・爆散したのだが…‥‥




【…‥‥どういうことだ】


 命中したはずの、その光景を見てグルツゥスは驚きの声を漏らす。


 水を集め、あれだけの量であれば何もかも流せてしまうほどであったのだが…‥‥それは無意味となっていた。



 なぜならば、命中したはずの場所…‥‥その前方部分に、格子状になった無数の蔦が覆いかぶさり、防ぎきっていたのである。


 あの攻撃を、蔦で全て受け止め切れるはずがないと思いながらも、グルツゥスは見た。


 その蔦の根元に、一体の植物が立っていたことを。


【シャゲェェ…‥‥】

【お前は‥‥‥】


 その姿を見て、その植物が今の攻撃を防ぎきった元凶だと理解すると同時に、グルツゥスは疑問を浮かべる。


 あの攻撃を瞬時に感知し、そして防ぎきるだけの蔦を急成長させる植物なんぞ、グルツゥスにとって聞いたことはない。


 ただ、一つだけ言えることは、まぎれもなく目の前のその植物…‥‥いや、モンスターが防ぎきったのであろう。



【シャゲシャゲシャゲ…‥‥シャゲェ!!】


 警告音を発しながら、蔦を回収し、今度は周囲にいくつも蔓を発生させる植物。


 何者かを理解するよりも先に、どうやらグルツゥスを敵と完全にみなし、攻撃する気のようだ。


 蔦には非常に鋭い棘が無数に生え始め、先端部分も同じぐらい鋭くとがり始める。



【なるほど‥‥‥串刺しか】

【シャゲェェ!!】


 何をするのか理解したグルツゥスのつぶやきに答えるように、その植物は手のように葉っぱを動かして指示を出し、その無数の蔦をグルツゥスへ向けて撃ち出す。


 



 普通の動植物で有れば、楽に全身串刺しに出来ていたであろう攻撃。


 だが、グルツゥスは生憎…‥‥その植物を捕食できるナメクジのようなモンスター、グルーンである。



ズブズブズブズブズブ!!


 あえてその身に大量の蔦の槍を受けるが、その音は突き刺さったとは言い難い音。


【シャェゲェ……】


 何が起きたのか理解したその植物は、うまいこと行かなかった不快感を示す。


 それもそのはず、その蔦の槍は全て…‥‥飲み込まれていたのだ。


 突き刺さるのではなく、そのぐにゅぐにゅしている軟体へ沈み込み、そして千切れてしまった。


 千切れた先はとりこまれ、後にも残らず平然としている。




【シャゲェェェェ!!】


 別の攻撃をするつもりなのか、その植物は別の物を周囲に生やし始める。


 だが、攻撃はグルツゥスの方が早かった。



【ぬぅん!!】


 大きくジャンプし、一気に宙へ浮かんだかと思うと、そのまま全体重を乗せたプレスをかます。



ずっしぃぃぃぃん!!


 地面が揺れ、成長していた植物が停止し、急速に枯れていった。


 再びジャンプし、後ずさって跡を見れば…‥‥ぺらぺらに潰れた植物の姿があるのみ。


【まずはこれでやれたか?】



 これ以上の攻撃の様子もなく、完全にやったと思った…‥‥その時であった。


 グルツゥスの勘が素早く働き、再び大ジャンプを取らせる。


 次の瞬間、先ほどまでいた場所へ向けて、猛烈な吹雪が発生し、一瞬にしてその場所が氷漬けになった。


【ぬっ…‥‥出たか】


 着陸し、凍った地面を割りながら、発生源をグルツゥスは目視した。


 それは、横に傘を持ったメイドに雨から守られながら、立つ人間。


 そしてその表情は一旦あの植物の方へ向け、再び向けられたときには…‥‥明らかに冷徹な眼へと化していた。



「‥‥‥どこのどいつなのか、知らないが、僕らの家に攻撃を仕掛けたのは君かい?」


 尋ねる様な、それでいてどこか冷たい感情の声に、グルツゥスは悪寒を覚える。


「しかも、ドーラがああなったのも…‥‥さっきの音からして、潰したのは君という事になるよね」


 ぞっとするような感情が向けられ、グルツゥスは思い出す。




 神獣の配下になり、それで久しく感じていなかったコレは……恐怖であると。


 あの植物との関係は不明だが、おそらくは家族のようにも、友のようにも思っていたのかもしれない。


 そこからあの人間…‥‥いや、自然とあふれ出る魔力の強さからして、人間ですらないような相手に、グルツゥスは体液以上の冷や汗をかき始める。


 もしかすると…‥‥自分は喧嘩を売ってはいけない相手に、思いっきり売ってしまったのではなかろうか。


 だがしかし、今更引き下がるわけにもいかない。


【あ、ああそうだ!!我が名はグルツゥス!!ここに強き者がいると聞き、戦闘して見たくなった神獣の一体!!いざ正々堂々と勝負を!!】


 気が動転しかけ、恐怖から身がすくみながらも、即興でグルツゥスはそう叫ぶ。


 どうにでもなれとやけになりつつ、一応自身の命を保証できるように、あくまで「勝負」の部分に力を入れる。


「へぇ、勝負かぁ…‥‥でも、家をいきなり襲撃したりと、明かに正々堂々じゃないよね?」

【ぐっ!】


 正論を投げられ、グルツゥスは声を詰まらせる。


「じゃあ…‥‥こっちも正々堂々じゃなくていいよね」


 ぱちんっと指を鳴らしたかと思うと、その者の周囲に小さな人形たちが5体ほど現れた。


 見た目はその者を雨から守るために傘を持ったメイドらしき人物に見えるが、それらすべてに何か凶悪そうな武器が供えられていた。



「ご主人様、ミニワゼシスターズ、全機戦闘可能デス」

「よし、それじゃぁ‥‥‥‥皆、戦闘に参加するよりも、まずはアレが逃げださないようにしてくれ」


 その言葉と同時に、ミニワゼと言われた者たちが素早く展開し、周囲を囲んだ。



…‥‥小さい体ながらも、そこから感じる力はどう考えても異常なレベル。


 明らかに逃げられないと感じさせつつ、正面から当てられる魔力の威圧に、グルツゥスは腰を抜かしそうになる。



「それじゃ、ちょっとばかり…‥‥ドーラの仇を撃たせてもらおうか」


 次の瞬間、先ほどまで広がっていた魔力が一気に収束し、さらに強大な物へと変貌する。



 ドーラと言っているのは…‥‥先ほど潰した植物の事であろうか。


「ああ、でもその仇の前に、僕らのいた家の方へ攻撃してきた、つまり家族に対しても敵対したことでもあるよね」


 そう言いなあら、その魔力がどんどん収束し、別のものへ変化していく。


 右腕が構えられ、その腕へ魔力が集まり、豪雨を利用してなのか水が集まり、氷結していく。



「…‥‥それじゃ、敵対したってことで、久しぶりに全力で殴るね☆」


 巨大な氷の腕が出来上がり、続けて左腕の方にも形成され、それらを向けられる。


 

 グルツゥスは悟った。


 今、自分は盛大にやってはいけない選択肢を選んでしまい、物凄い地雷を踏み抜きまくっていたのだという事を。


 目の前の相手は、どうやら自分よりも家族の方を重視しているようにも思えるが‥‥‥あの攻撃が家族を狙い、防衛してきたあの植物も家族のように想っているのだろう。



 盛大に後悔するが、もう時すでに遅し。


 気が付いたときには、超・巨大な氷の鉄拳制裁が迫っていたのであった‥‥‥‥。




―――――――――――――――――――――――――――――

SIDEシアン


…‥‥攻撃を仕掛けてきた巨大ナメクジのような相手。


 ドーラを潰されたし、ハクロたちもいる家へめがけて攻撃されたことで、久しぶりに激怒して全力を出させてもらった。


 

 

「ふぅ…‥‥後は塩でもまこうかな?」


 全力で叩きのめし、気が付いたときには、相手のナメクジはバラバラになっていた。


 いや、肉片がうごめいて集結しているところを見れば、再生できるのだろうけれども…‥‥ナメクジっぽいし、トドメとして塩を振りかけてみるべきであろうか?


 一応、ナメクジってあれ溶けているわけじゃなくて、水分が抜けているだけらしいので、完全に絶命させることはないのだろうし、今もなお雨が降っているので水分はすぐに戻るだろう。


 いや、雨が収まって来たな…‥‥ああ、この巨大ナメクジだったものが、原因か。




 何にしても、トドメとしてワゼに塩を持ってきてもらおうとした、その時である。


【ちょっと待ったぁ!!】


「ん?‥‥‥ああ、ロイヤルさん」


 声がかけられたかと思いきや、フェンリル一家のロイヤルさんが出て来た。



【はぁ、音が聞こえた時に予想できていたが‥‥‥‥うわぁ、何この惨状は】


 辺り一面に散らばったナメクジだったものを見て、ロイヤルさんがそうつぶやく。


「何しに来たんですか?今からこれらにトドメを刺そうとしていたんですが‥‥‥」

【ああ、そうだそうだ、それを待って欲しい。ちょっと事情があってだな‥‥‥】


 そう言うと、慌ててロイヤルさんは僕らに事情を説明してきた。




 いわく、このナメクジのような奴らの正式な種族名称はグルーンといい、名前はグルツゥスという、フェンリルと同じ神獣ヨルムンガンドの配下なのだとか。


 で、何やらここに調査しに来たような奴で、インテリに見せかけてポチのような脳筋な部分があるのだとか。


【一応、そちらには危害を加えないように警告したのだが‥‥‥どうも戦ってみたいと思ったようでな、この惨状を見る限り、口下手すぎて自分で攻撃を仕掛けてしまったのだろう】

「口下手にもほどがありませんかね?」

「ご主人様が珍しく激怒しましたヨ?」

【まぁ、本来神獣は同族以外とはあまり関わる事が無いからなぁ…‥‥他の種族と話しづらかったのだろう】


 何にしても、同情の余地はない。


「で、こいつらをどうしろと?」

【とりあえず、全部拾い集めてヨルムンガンドのところへ送り返す。縄張り内で思いっきり暴れられたし、こちらの面子という物があるからね】


 そう言うと、ロイヤルさんが何かを唱え、魔法のような物を発動させ、肉片を集めた。


…‥‥ポチとは違って、やっぱりこのフェンリルがこの森の主じゃないかな?




 何にしても、とりあえずこちらの受けた被害も考慮して、色々と請求するらしい。


 まぁ、ヨルムンガンド本人は全身が猛毒ゆえにここへは来れないそうだが、お詫びの品なども要求できるそうだ。



「っと、後はドーラか」

【シャゲェ!】

「…‥‥あれ!?」


 いつのまにか、ドーラが復活して手ならぬ葉っぱを上げていた。


 どうやら潰されはしたが、あの程度なんともなかったらしい。


 よかったような、怒ったのがむなしいような‥‥‥‥まぁ、無事だったから良いのか?



 とにもかくにも、雨が上がり始め、空には大きな虹がいつの間にかかかっていたのであった‥‥‥‥



―――――――――――――――――――――――――――

SIDEヨルムンガンド:グラタン



【‥‥‥何をやったんだ。お前は】


 ハルディアの森とは異なる、ヨルムンガンドの住みか。


 そこで、ヨルムンガンドのグラタンは、送られてきて、変わり果てた己の配下の姿を見て、そうつぶやく。


 いまもなお再生途中のようで話すことはできないようだが、付属されてきた神獣間での手紙に目を通し、何があったのかを理解した。


【盛大に敵認定されているのだが‥‥‥これ、こいつの暴走だったという事だけで片付きそうにはないな】


 難しい顔をして、そうつぶやくグラタン。


 元々はヴァルハラから聞いた話で興味を持った相手でもあったが‥‥‥‥何をどうしてか、この自身の右腕のようにも思っていた配下が盛大にやらかし、その相手に敵認定されたらしい。


 敵にはされたくなく、どうにかして友好を結びたいが、これでは当分不可能であろう。


 時間経過でどうにかできそうな気もするが、やはりまだ先の話となりそうだ。




 何にしても、やらかしてくれたグルツゥスには、処分を下さねばならない。


【‥‥‥はぁ、頼れる右腕かもしれないと思ったのが、そもそもの間違いか…‥‥なんにしても、相手の事を考えなかったお前は、まだ神獣としては未熟だったのかもな‥‥‥】


 溜息を吐きながら、とりあえずは大きさ的に邪魔になるので、処理しやすいように水分を抜く目的で、塩を用意し始めるのであった…‥‥

なお、氷の巨大な拳にした理由としては、流石に素手で殴りたくなかったかららしい。

氷の腕で鉄拳制裁というのもどうなのだろうか…‥‥

何にしても、ひとまずは落ち着いたようだし、次回に続く!!


…‥‥いや、でも鉄拳制裁って言葉、別に鉄でできてなくとも言うか。某黒鉄の城も超合金だし、間違ってないのか……

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