#84 来訪もとい来襲者デス
襲撃者とも言うのかな……?
SIDEシアン
豪雨の原因を探らせるべく、ミニワゼシスターズが出て行って1時間後。
「あ、帰って来たようデス」
洗濯物を室内で広げ、腕を変形させて熱風を生じさせ、乾かしていたワゼがそうつぶやいた。
出迎えて見れば‥‥‥
「ツツツ!」
「ファーー!!」
どういう訳か、皆慌てた様子で有り、わき目もふらずに戻ってきたせいか皆びっしょり濡れていた。
「何があったんだ?」
「落ち着いて、話してくだサイ」
ひとまず全員をワゼが乾燥させ、手入れし直し、落ち着いたところで報告してもらった。
「ツーツツ!」
「まず、雨の範囲を調べ、どのぐらいの規模なのか確認シタ」
「スス、スー!!」
「それで大体中心部分に原因がありそうだと考え、そこへ向けて爆走ト」
「ファーファファファッ!」
「フェンリル一家の巣についたので、ありえない可能性だがポチが引き起こしたのかなと疑問に思いツツ」
「シーシ!」
「こっそりと気配を完全に消して探って見れバ」
「セー!」
「フェンリルと同じ神獣ヨルムンガンドから派遣されたらしいグルーンというモンスターがイタ……と、そういう訳ですカ」
全員が身振り手振りを交えて、必死になって伝えて、その内容はよく理解できた。
しかし、それでなぜこうも慌てているのだろうか?
「ツー!」
「え?ポチが警告を出して」
「ファ!」
「それでそのグルーンことグルツゥスというやつが興味を持って」
「セセ!」
「戦闘しに来るかもしれない……って、ええ?」
何をどうしてそうなったのか、色々とツッコミを入れたい。
ただ、どうやらちょっと時間的に間に合わなかったようで…‥‥。
「‥‥‥ッ、何か接近してきてマス」
ワゼが耳部分からアンテナのようなモノを出し、そこがピクリと動いて言葉を発した。
・・・・・ああ、絶対に面倒事がやってきたパターンだこれ。
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SIDEグルツゥス
‥‥‥おおよその見当を付け、森の中を進み、グルツゥスはシアンたちの家を発見した。
【ふむ、フェンリルの森にこれほどの屋敷と言えるような家が建っているという事は、ここがグラタン様がヴァルハラから聞いた者が住んでいるという場所なのだろうか?】
じゅるじゅるじゅると地面を進みながら、巨大ナメクジもといグルツゥスはそうつぶやいた。
大体合っているとはいえ‥‥‥本当にここにあのポチが警告をわざわざ出すような相手がいるのであろうか。
というよりも、会ったところでどのようにして話を切り出すべきなのだろうか?
噂を聞いた?いや、ヴァルハラからの話をグラタン経由で聞いただけであり、相手の詳細まで確実に知っているわけではない。
引っ越ししてきた振りをして、その挨拶に来たとでもいうべきか?いや、それだと後日いなかった場合などを考えると齟齬が生じる。
…‥‥ああ、面倒だ。
元々グルツゥスはそう思慮深いわけでもない。
グラタンへ尊敬の念を持ちつつも、きちんと信頼を得ているが…‥‥それでも人の、いや、神獣の事を言えないというか‥‥‥‥
【‥‥‥良し、一撃をぶち込んで攻撃を仕掛けてみるか!】
ひとまずは、その実力を見て見た方が良いかもしれないと考え、そこからどこをどう飛躍したのか、グルツゥスはそう結論付けた。
グラタンからすれば、大人しく穏便にさせたかったのだろうが…‥‥やはり興味がわいたというか、神獣の仲間に入るには少しばかり格がまだ低かったというべきか。
『戦ってみないと、どのような者なのかわからない』
そう思い、グルツゥスは攻撃を仕掛けることにした。
自身の身体の状態を維持するために雨を降らせているのだが、その雨を利用する。
グネグネとした身体を動かし、ナメクジボディのあちこちから細かい触手のようなものを伸ばし、雨水を受け止め始める。
豪雨となっている今、雨水はどんどん触手へ吸い寄せられ、体内へ入り込み、身体がどんどん膨張されていく。
そして、ある程度貯まったところで…‥‥
【『レインボム』】
ボゴウッ!!という音がすると共に、貯まりまくった水が内部の粘液も混じって巨大な水球の状態で放出される。
そのまま勢いで吹っ飛び、シアンたちの家へ‥‥‥‥
ドッゴアァァァァァァァァァァン!!
盛大な爆発音とともに、球体として圧縮されていた水が暴発し、一気に襲い掛かるのであった…‥‥
突如として襲い掛かるグルツゥス。
何をどうし飛躍したのかは知らないが、奇襲を思いっきりかけたようなものだ。
‥‥‥とは言え、誰か忘れているような。
次回に続く!!
【‥‥‥なんか今、爆発音が聞こえたような】
【あ、これは‥‥‥完全にやらかしたわね】




