#77 愚かな野望はこうなりやすいのデス
久し振りにちょっとデータの整理をしてみたら、懐かしいデータを発掘。
あるシリーズ内に入れる予定だったやつだけど、元はあれども、さすがにこの設定だと作者の作風にはちょっと難しかったので、お蔵入りしてました。暗かったり、恋愛系はちょっと苦手だからね。
まぁ、大体の予想が付く方もいるでしょうけれども、近々1話だけの短編公開予定なことをお知らせします。
SIDEヌルダニアン王国
…‥‥都市アルバスでの敗北により、ヌルダニアン王国軍は逃げ足早く、その場から敗走を開始した。
何しろこれでもかと言う位、ひどくボロボロにされ、出陣前に比べて3分の1、いや、5分の1にまで数を減らしていたのである。
失ったのは、あの敗北で命を落としたのか、それとも捕虜とされたかもしれない兵士たち。
あの極悪6メイド人形たちの悪夢から逃れるためにも、全速力でわき目もふらず、逃げるために駆け抜ける。
道中、略奪行為を働いた村などがあったが、ここまでの敗走ぶりを見られ、ひどく弱っている今こそ恨みを晴らすべきだと思われたのか、徹底的に叩かれ、最終的にヌルダニアン王国内に帰還できたときには、軍の数は当初の10分の1以下までになっていたのであった。
「くそぅ!!何よ何よ何よあの悪魔の人形たちは!!」
ここまでの敗走中に、どういう訳か悪天候に遭遇し、それでもあの悪魔の6メイド人形たちに追いつかれたくないがゆえに必死になり、全員ボロボロになっていた中、聖女はそう叫んだ。
順調に、このまま何もかもうまくいくと思われた矢先に、まさかの謎の戦力に総崩れにされ、大敗北となってしまったのだ。
まだ幸いというべきか、宣戦布告した立場上、ボラーン王国側にすぐにでも攻め返されるかと思ったが、どうやらボラーン王国軍の方は動く様子を見せない。
ならば、ここで再び再編成し、あの悪魔メイド人形共をどうにかするための手立てを聖女は考える。
国の中でも頭だけならば優秀な者たちを集め、会議を行い…‥‥結果として、全然改善するような案は誰もが出せなかった。
「どういう訳よ!?たかが6体の人形に、何故やり返せるような案が出せないの!?」
「仕方がありません、我々は前線に出ていないほうなので、どのようなものであったのかわからず…‥」
「話を聞いていても、そのような無茶苦茶な動きが出来る様な人形……おそらくはゴーレムの一種なのでしょうが、稼働停止できるような手立てなんぞ皆目見当がつきません」
「ちぃっ!!使えないわね!!」
敗戦に納得が出来ず、ヒステリックにまき散らす聖女。
その様子を見て、離れていく者たちは…‥‥どういう訳かいなかった。
ただ、聖女を鎮めるために何とかしようとご機嫌取りなどを行い、それでもなお、聖女の機嫌が収まる事はない。
「ああもぅ…‥‥ん?あれ…‥‥そうだわ!」
頭を掻きむしりたくなるほどイライラしていた中、ふと聖女はあることに気が付いた。
会議の最中に、あの悪魔人形共はゴーレムの可能性があるとされたが、話によればそういう類のゴーレムには主を必要とするらしい。
ならば、その主を手に入れる事が出来れば、必然的にその悪魔人形たちも味方につける事が可能だろうと思いついたのである。
ただ、その肝心の主とやらの詳細は分からない。
男であれば篭絡する自信はあるが、女であれば自分ではどうにもならない。
まぁ、その場合ならば、その主とやらを暗殺してしまえばいいだろう。
あれだけの戦力のものを持っているという事は、その死後にその所持をめぐっての争いが起き、再びその刃を向けられる可能性は少なくなるはずであるとまで、聖女は考えつく。
何をどうすればいいのか簡単な計画を、足りない頭でもなんとかやって、聖女は素早く組み立てた。
聖女はすぐに動き、ヌルダニアン王国内でも有数の諜報部隊や暗殺部隊を動かし、その主とやらを探り、場合によっては暗殺するように動き出した。
いまもなお宣戦布告状態なので、ボラーン王国にその部隊を差し向けるのは難しいかもしれないが、聖女のいいなりとなっている者たちはすぐさまその命じられら通りに動き出す。
そして、その結果を彼女は待ちわびる。
これで、飲まされた敗北の苦汁を払拭できるはずだと信じて‥‥‥‥
‥‥‥しかし、1週間後、事態は思わぬ方へ動いた。
「た、大変です聖女様!!」
「どうしたのかしら、ボラーン王国軍がついに動き出したの?」
「いえ、そうではありません!」
報告を待ちわび、非常に長い一日を過ごす中、聖女の側近の一人となっていた王国の宰相が慌てた様子で何かを報告してきた。
「ちょ、諜報部隊及び暗殺部隊からの連絡がすべて途絶えました!!」
「‥‥‥はい?え?定期連絡とかもかしら?」
「そうなのです!しかも辞職願と共に、この手紙が届けられました!!」
慌てた様子で宰相が出したのは、一通の手紙。
見れば、その差出人はどうやら仕向けた諜報や暗殺部隊の者たちからであった。
何か嫌な予感がしつつ、彼女はその手紙を開封し、その内容を読む。
「‥‥‥な、なんのよこれぇ!?」
その内容を読み、聖女は激怒した。
彼女自身、この国の男たちを全員己の手ごまに出来たことから、ある程度容姿に誇りを持っていた。
だがしかし、その手紙の内容によれば、聖女以上の、いや、人間以上の美女の姿を見て、そのあまりの美しさに自分たちの心が穢れ切っているのを気が付いたので、ここで縁を切り、新たにその美女のためになるような事を行い、善行を尽くしていきたいというものであったのだ。
「ふざけているの!?捕まった、拷問された、買収された、などならばまだわかるけれども、美女に目がくらんで改心して縁を切るってどういう理由なの!?」
ハニートラップとも異なるようで、本当に物凄い美女でもいたらしく、全員聖女から見切りをつけてしまったようなのだ。
しかも、最悪な事にこの部隊、いや、離職届も出されているので元諜報及び暗殺部隊の者たちなのだが、それぞれきちんとその道のエキスパートでもあり、敵に回られてしまうと非常に面倒であった。
何しろその仕事ぶりは、この国から聖女以外の女性を追い出すことにも一役買っており、下手すれば同じような事を聖女の身に起こすことだって可能なのかもしれないのだ。
「なんで裏切るのよぉぉぉぉぉぉ!!」
聖女はそう叫び、その声はヌルダニアン王国内に響き渡る。
「聖女様!!大変です!!」
「今度は何があったの!?」
「HWGと呼ばれる組織が、いつの間にか侵食していました!!」
「な、何よその組織は!?」
今度は王国の財務大臣が慌てた様子でやって来たと思いきや、聞いたこともないような組織名を出した。
「わかりません!!ですが、何かを崇拝するような組織らしく、いつのまにか聖女様を崇める者たちであったはずが、どういうわけかHWGが崇める者を信仰すると言う風に変化してしまったのです!!」
謎の崇拝対象が現れ、これによってヌルダニアン王国内での聖女の求心力は激減した。
一体どこのどのような組織なのか手がかりすらつかめず、そのうえ仲間であった者たちが皆、HWGという組織へ次々と鞍替えし、聖女の下を去っていく。
引き留めようと聖女は体も何もかも使ってみたが効果はなく、むしろ逆にそのような行為を望ましくないと言われ、どんどん離反されていく。
ヌルダニアン王国内のすべての男性を聖女は掌握していたはずが、既に彼女の手許を彼らは離れ、何かしらの組織へ所属したり、崩壊していく国内から逃亡していく。
そこへトドメを刺していくかのように、以前聖女が国外追放などの処分を下した女性たちが、次々と帰国していき、彼女達の元婚約者・元夫・元カレなどを次々と襲撃し、よりを戻していく。
‥‥‥そして数日後、聖女の身の回りには、誰もいなくなった。
召喚され、この世界で歪んだ野望と幸福を得た聖女。
しかし、今はもう…‥‥何も手元には残らなかった。
男たちは皆離れ、国外へ追放したはずの女性たちは帰国し、彼女を憎悪の視線で見つめていく。
次第に国内での居場所を彼女は失い、いつしか姿を消していたのであった。
‥‥‥それからすぐに、ヌルダニアン王国は速攻でボラーン王国へ降伏を宣言し、敗戦すると自ら認め、戦争は終結した。
被害は略奪された村や、討伐された軍勢などがあるが、それでも通常の戦争よりはまだ被害は少ない。
何にしても、たった一つの国が抱いた野望が、召喚した聖女によって増長されたかと思いきや、あっという間に崩壊して言ったその様は、後世に吟遊詩人などによって伝えられた。
「愚かな悪の聖女の下り坂」などというタイトルが付けられ、ある意味聖女は歴史に名を遺したのであった‥‥‥
‥‥‥何やら色々と動いていたようだが、ワゼが動く前に動いちゃったところもあるようだ。
何にしても、とりあえずこれで脅威は去ったと思うべきなのだろうか?
まぁ、別の大問題が起きたとも言えるのだが‥‥‥
何にしても次回に続く!!
‥‥‥予測候補を変換で出す時に、勝手に押してもいないやつに切り替わる時がある。
これがまた面倒で有りつつ、何処かで使ったりする部分だったりで消しようがない。
まぁ、とりあえず次回辺りでこの崩壊の裏側と、できちゃったミニワゼ問題をお送りしたいところだなぁ‥‥‥軍勢相手でも蹂躙可能なミニワゼシスターズって、それだけでも大問題だしねぇ……




