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#7 都市ブリジットに到着デス

本日2話目

不定期投稿なはずなのに、ちょっと調子に乗りました

SIDEシアン


……商人ディックのお礼として、僕らは都市ブリジットまで乗車させてもらった。


 一応、都市で一旦別れることになるのだが、幸いなことにこの世界にはバス代わりに馬車での交通機関があるようで、アイーマ村方向へ行く馬車に乗って行けば帰れるそうである。



 とりあえず、1時間ほどで馬車は都市ブリジットに到着し、捕らえた盗賊たちを衛兵に引き渡した。



「これが、今回捕らえた盗賊たちです」

「そうか、ご苦労であった」


 盗賊たちを引き渡し、賞金首がいないかなどを調べてもらったところ、どうやらワゼが男として終わらせた盗賊頭らしい人物が、それなりに高額な賞金首であったらしい。


「これが、その盗賊を捕らえた賞金だ。金貨五十枚ちょうど、確認してくれ」


 どさっと目の前に置かれたのは、金貨が詰まった袋。


 この世界の通貨は、どうやら単純明快に金貨、銀貨、銅貨とあり、金貨一枚=銀貨百枚、銀貨一枚=銅貨十枚ぐらいらしい。前世の円の価値とは異なるようだが、一応覚えておいて損は無さそうだ。


 どういう仕組みなのかは分からないが、中には魔法が仕組まれているそうで、偽造通貨とかの心配はしなくて良いらしい。


 というか、偽造通貨という言葉があるってことは、過去に企んだ輩もいたんだろうな…‥‥。



「一応、解析できましたからやろうと思えばできマス」

「やらなくていいからね?」


 何で隙あらば無茶苦茶なことをこのメイドはやろうとするのだろうか?ワゼ、お前の思考回路を調整してもらいたいよ。




 とにもかくにも、資金を得たので、これで一応森から出てきた目的である調味料の入手が出来そうだ。


 その場でディックさんたちとは別れて、市場とやらの方へ僕らが向かった。







「安いよ安いよー!今日はこの新鮮な野菜たちがなんと銅貨三枚!」

「こちらでは銅貨五枚で薬草が買えるよ!」

「銀貨十枚で買えるジェリー専門店だぁ!」



「色々とにぎやかだなぁ‥‥‥」

「価値が少々見合っていないようですが、それでも活気がありますネ」


 ブリジット内の市場は活気にあふれており、多種多様な店が客を確保しようと呼びかけている。


 人混みもそれなりにあるのだが‥‥‥‥こういう場だと、スリとかも出そうだよな。




 ちょっと警戒しつつ、今回の目的である調味料を売っている店を僕らは探した。


「どういう調味料が良いんだっけ?」

「ショーユとか言うのが気になりますし、できれば塩などがあればいいでしょウ。栄養バランス的にご主人様に足りないようなものを補えるのなら良いですし……できれば野菜の種なども確保しておきたいデス。そうすれば、家庭菜園もできますからネ」


 確かに、森の中だと手に入らないような物もあるからなぁ‥‥‥果物とかは得やすいが、野菜が案外数少ないのだ。


 いやまぁ、お肉とかの方が個人的には好きなのだが、野菜は野菜でおいしいからね‥‥‥あ、鶏のような物いないかな?マヨネーズみたいなのを作ってみたい。



 

 キョロキョロと周囲を見渡しつつ、都市内にいる人にも話を聞いて、良い店を探してみる。


 現在の予算は金貨五十枚…‥‥銀貨に直せば五千枚、銅貨なら五万枚だし、ある程度なら大丈夫なはず。


 と、ちょうど都合よく、僕らはある店を見つけた。



「お、あそこならいいんじゃないかな?」


 看板を見れば、『デップリ食材・調味料専門店』と書かれている…‥‥あれ?そういえば何で僕はこの世界の文字を読めるのだろうか?


 明らかに日本語ではないのに、日本語のように読めるけど…‥‥まぁ、気にしなくていいか。


 中に入って見ると、店内にはこれでもかというほど何かの肉や野菜、調味料と思わしき物などが陳列されていた。


 これはこれは、なかなかよさげな店に入ったようだ。



「おー、これは良い感じデス。品質も良いようですし、値段もお手頃デス」


 ワゼが目を輝かせて、そう言いながら陳列されている商品を手に取っていく。


 ある程度手に取ったところで、会計となったが…‥‥‥ワゼがテンション上がったのか、ちょっと買いすぎた。



「お客様、こちら金貨二枚分の量なのですが‥‥‥大丈夫なのでしょうか?」

「大丈夫デス。予算はありマス」


……どれだけの量を買う気なのだろうかワゼよ。


「と言うかワゼ、それだけの量を持って帰れるの?」


 うず高く積み上げられているのだが、それらを全部持って帰ろうにも多すぎなのでは…‥‥


「ああ、大丈夫デス」


 にっこり微笑んだかと思うと、ワゼは自身のメイド服にあるポケットに商品を詰め込んでいく。


 


 そして数分後。


「全部入り切りまシタ。少々多すぎたので心配でしたが、大丈夫だったデス」

「いや、ちょっと待って!?そのメイド服のどこにはいったんだよ!?」


 積み上げられていた山は、どこにどう入ったのか、すべてワゼのポケットの中に入り切ったのであった。


「‥‥‥え?お客様、その服のどこにはいったのでしょうか?」


 店員さんも驚愕で目を見開いていたが‥‥‥うん、考えるのをやめた方が楽だろう。


 このメイド、某猫ロボみたいな機能もあったのか‥‥‥‥いや、あの猫ロボだと機能ではなくて部品?と言った方が良いのか?


 とにもかくにも、当分買い物はしなくて良さそうなのであった‥‥‥‥ああ、考えないほうが幸せかもなぁ。






――――――――――――――――――――――――――

SIDEとある店員Aさんの証言


……正直言って、この店に努めて3年目の私は、今日とんでもないものを目にしました。


 店中の調味料などを買い占めたお客様が2名いまして、代金を支払っていただけたので良いのですが、どうやって持ち帰るのかと思えば‥‥‥片方の、綺麗な侍女らしき女性がおもむろにポケットの中に入れ始めました。


 流石に全部は無理だろうと思っていましたが‥‥‥‥数分後には全部入ってました。



 いや、本当に何で!?どうなっているのその衣服のポケットは!?


 一緒に来ていたお客様の方はあきらめたような、思考を放棄したような目をしましたが…‥‥その方が正解なのかもしれませんね。


 うん、あれは夢だったと思えばいいでしょう。




 ですが、きちんと支払われたお金が手元にありますし‥‥‥‥よし、店長が帰ってきて尋ねられたら、お金持ちの方が買って、荷馬車に詰め込んで帰ったとごまかせばいいでしょう。


 こんな荒唐無稽な、夢のような話は信じてもらえなさそうですし、そう言えば楽です。


 ええ、全ては白昼夢なのです!!





…‥‥後にこの店員は、この出来事を忘れようと努力したが、インパクトが強すぎて忘れることができなかった。


 ゆえに、考え込むようになり、店を退職し、後の人生は忘れるための旅に出た。


 そして悟りを開き、人々の悩みを解決する相談屋として人望を集めるようになったのだが、それはまだ先のお話…‥‥


……約一名、人生を変えてしまったようだ。

まぁ、良い方向へ行ったと考えたら大丈夫。

何にせよ、調味料の確保という目的は得たが、金はいつか尽きるし、何か稼ぐ手段がある方が良いだろうね。

次回に続く!!


……ワゼのポケットは、流石に無限収納という訳ではなく、容量があるらしい。

とは言え、かなりはいるのだが‥‥‥ちょっと待てよ?それってあくまで一つのポケットか?それとも複数なのか?

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