#70 噂話が流れているのデス
何故か蟻発生。
どこから入り込んだのかは不明。
‥‥‥Gといい、ヤモリといい、なぜこういう輩は入り込んでくるのか、そしてどうやって入ったのだろうか‥‥‥
SIDEシアン
…‥‥2週間ぶりにハクロの姿を見ることができて、ファンクラブことHWGのメンバーたちが心の中で歓声を上げ、中には喜び過ぎてそのまま昇天する者までもがいる中、都市内ではある噂が流れていた。
「きな臭い噂?」
「ええ、どうやらちょっと面倒ごとのようデス」
魔法ギルドにて依頼を受注し、その目的地へ向かう中、僕らはある噂を耳にした。
「なんでも、このボラーン王国に対して、ある国が開戦を目論んでいるらしいという話のようデス」
【人同士が行う戦争というやつでしょうか?】
「ええ、それも妙な話しもセットでしタ」
現在、僕らはハルディアの森に住んではいるが、この森があるこの国、ボラーン王国に対して、戦争を仕掛けてこようとする国があるらしい。
確定ではないようだが、それでも兵や食料、薬と言った類を集めており、動きが怪しいらしいのだ。
「兵士や食料、薬と言った類なら確かに怪しいとは思えるけれども……妙な話しというのは?」
「何でもかんでも、胡散臭いですが聖女なる物が召喚されたそうデス。とは言え、噂ですと『聖』ではなく『性』というような、明かに奇妙すぎる話でしタ」
いわく、その戦争を仕掛けようとしている国というのは、ヌルダニアン王国という、ボラーン王国よりもやや国力の劣る小国らしい。なんだろう、その何か気の抜けるような国名は…‥‥
王国となっているから王政かと思いきや、議会とかいうのもあって、やや中途半端な構造らしく、国王の発言権はそれなりに弱いらしい。要は議員が牛耳っているような、もはや王国と言って良いのかどうか怪しい国のようだ。
そしてその国が今回、聖女とやらを召喚したらしいそうである。
聖女というのは、癒しの力などを持った人だそうで、回復魔法などとは異なり、どんな難病であろうともたちどころに治してしまうような存在なのだとか。
一応、魔法がこの世界にあるので、どこか別の世界の人を呼びだすようなものがあってもおかしくはないのだが‥‥‥そんな聖女とやらを呼ぶなんて、一体何を考えているのだろうか?
「ここ数年ほど、ヌルダニアン王国では不作が多いそうで、貴族たちが私腹を肥やすために増税し、国内の情勢がやや危うい状態のようなのデス。そこでおそらくは、その聖女と呼ばれる存在を呼びだした功績と、戦争によって国民の目を外へそらすのでしょウ」
で、そんなすごそうな能力を持った人を異世界から呼び出し、力を使わせ、その奇跡とも呼べるような力を民に見せて尊敬させ、そしてついでに戦争で国外へ目を向けさせるだけというが‥‥‥早い話が、ただのごまかしである。
しかも、勝利できるのならばまだしも敗北した場合も考えていないようだし、現時点でヌルダニアン王国とやらのひどさがうかがえた。
【でも、その聖女の力で怪我人などを治されたら、戦況がやや大変な事になりそうですよね?】
「いくらやってもやっても失せない兵士が出来る、と考えるのであれば怖いな」
でも、そのような聖女の利用は国際的に暗黙の了解で禁止されており、そもそもの話としてだが、そのような異世界からの召喚自体がまゆつばものらしい。
だがしかし、人の欲望というか、そのような技術は可能にしようという思いによって、何とか成功したらしいのだ。
・・・・・・成功しているのであれば、それはまゆつばものというのかな?何か違うような気がする。
何にしても、召喚できてしまったものだから仕方がない。
その聖女とやらをヌルダニアン王国は手に入れ、利用しようとし、その力で戦争を企んでいるようだが…‥‥
「ですが、その聖女とやらがとんだくせ者のようでして……どうも王国の男性議員及び国王などを手玉に取り始めたという噂もあるのデス」
「‥‥‥それもう、聖女じゃない何かだよね?」
怪しすぎるというか、その聖女が戦争を考えていたりしないだろうか。
とにもかくにも、きな臭いというよりも胡散臭い噂話なのだし気にしないことにするのであった。
まぁ、こちらに害がなければいいが…‥‥先日の件もあるし、警戒しておくに越したことはないか。
何にしても、この噂話を警戒しつつ、僕らは依頼の場所へ向かうのであった…‥‥
噂話だと軽く片付けつつも、警戒しておくシアンたち。
その判断は正しいようで、面倒ごとがやってくるようだ。
何にしても、平穏に暮らしたいのに、なぜこうも色々起きるのか……
次回に続く!
‥‥‥実は今章の話は、短編でやろうと考えていたことだったりする。数年前ぐらいに考えていた部分だったり、配役の変更をしたりしているからちょっと大変。




