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#44 それぞれが過ごす夜中デス

夏ネタもいれたいんだけど、まだかなぁ・・・・・

SIDEワゼ


……深夜、森の中で梟のような鳥の鳴き声が響き始める中、一つの作業が終わりを告げた。


「‥‥‥ふぅ、ようやく完成デス」


 汗はかいていないが、拭う動作をするワゼはそうつぶやいた。


 最後の部品も組み合わせ終わり、ちょっと予定外な部分が出たが、それでも無事に新居を完成させたのである。


 サイズは以前の家よりも大きく、屋敷サイズとし、馬車用の車庫や、その他諸々様々な仕掛けも施し、より安全かつ快適に過ごせるようになっている。


 ついでに、庭にあった畑も土ごと移動させ、新たにより大きな畑を耕作可能にし、ついでに花壇も増設したのであった。


 まぁ、屋敷に住まうのは彼女の主であるシアン、居候兼シアンの使い魔であるハクロ、そしてワゼ自身だけなので、少々広すぎる可能性もある。


 その分、掃除のしがいもありそうで、メイドとしての本分をよりやれそうなことには期待が持てていた。




 何にせよ、1日以上かかる可能性もあった建設だったが、予定よりはやや早く出来た方である。


「とは言え、ご主人様達には2泊3の宿を取らせていますからね‥‥‥まぁ、今すぐ迎えに行かなくとも、念のために各部分のテストもしておいた方が良いですカネ」


 安全のために穴も仕掛けており、そのあたりの試運転を行うのもいいかもしれない。


 そう思いつつ、ひとまずワゼは自身のメンテナンスも兼ねて、一旦稼働を停止するのであった。




―――――――――――――――――――――

SIDE???


……同時刻、とある場所ではあるモノたちが蠢き始めていた。


 それらは、元はそれぞれ別の生き物であった。


 だがしかし、ある日突然、謎の人物によってそれらは駆逐されてしまった。



 通常であれば、アンデッド化を防ぐためにそれは後で集められて火葬されるか、もしくは素材として解体され、何も起こらなかったのかもしれない。


 だがしかし、不幸なことにそれらはただ切り捨てられ、乱雑にされた結果、怨念などが集まり、最悪の状態にされたのだ。



 そして、真夜中となってその怨念などが動き始め、アンデッド化……いや、むしろ足りなくなった肉体を補うために混ざり合い始めたのである。


 うごうごと蠢き合うその様子はおぞましいが、その理由を知れば、その捨て置いた者を誰もが恨むであろう。


 そして、混ざり合ったアンデッドたちは、結果として足りない部分がどうしてもでき、それを補うために動き始める。


 同じアンデッドから、そして生きた者たちからも奪うために‥‥




 次第にその規模は増殖し、アンデッドとしては異常な状態となっていく。


 そのうえ、その者たちには運のいいことなのか、彼らを殺戮した人物の進路へ進めば、同じようなものが出来上がっており、それらも取り込めた。


 その進路を追えば追うだけ取り込んでいき、規模が大きくなっていく。


 そして、その人物への恨みも膨れ上がり、暴れ出していく。



…‥‥彼らの事が判明した時には、既に手が付けられないほどの怪物と化していたのであった。





――――――――――――――――

SIDEハクロ


【ふぅ‥‥‥今日は疲れましたね】


 宿にて、ハクロはゆったりとお風呂に浸かっていた。


 

 アラクネである彼女の体の構造的に、常人が入れるような湯舟だとちょっと手狭であるが、運のいいことにと言うか、この宿屋は使い魔なども泊まれるようにできており、大型の使い魔用のお風呂に浸かっていたのである。


 使い魔用の大型の風呂なので肩までゆっくりと浸かれ、彼女は満足する。


 ある程度温まったところで、ざばぁっと湯船から一旦あがり、薬屋の方で購入したボディソープと呼ばれるものを使い、泡立てて、自分の糸で作ったタオルでごしごしと洗い始めた。


 上半身の部分は楽なのだが、大変なのは下半身の蜘蛛の部分だ。


【うにぃぃいっ、て、手が届きにくい・・・・・」


 体を曲げ、なんとか届く範囲は手で丁寧に洗い、どうしても無理な部分は糸を使って器用に洗う。


 なぜそんな不便な部分があるのかは、どうやらアラクネの進化のために犠牲にしたらしい。


 もともとは大型の蜘蛛のモンスターが、より良い交配のための手段として、人の身体を求めた・・・・・という説もあるようだが、真偽は不明である。


 と言うか、アラクネであるハクロ自身、そのあたりは良く分かっていないのだ。


 何にせよ、全身洗いまくって泡まみれとなって、ちょっと羊のようになったハクロは、身体の泡を洗い流し、もう一度体を温めるために湯船につかるのであった。








……入浴後、部屋へ戻ると既にシアンは寝ていた。


 先に入浴し、さっさと寝てしまったようである。


【む、ちょっと早く寝られてますね】


 できれば寝るまでちょっと話し合いたかったのだが、眠気に負けたのであれば仕方がない。


 残念に思いつつも、自分の身体でも十分寝られるようにハンモックを吊るし、寝ようとしたところで……ふと、彼女はある事に気が付いた。


【‥‥‥あれ?もしかして今、二人きりな状況なのでは?】



 いつもであれば、家にはシアン、ハクロ、ワゼといて、ワゼの存在と別室での睡眠と言う状況であった。


 だがしかし、今は同室での睡眠と言う状況。


 ワゼもこの場にはおらず、ハルディアの森からここまでは少々時間がかかる。


 そしてふと視線を向ければ、ベッドの上で無防備に寝ているシアンの姿が。


「すぅ‥…すぅやぁ……」

【‥‥‥】


 寝息を立て、どうやら熟睡しているらしい。


 昼間の薬屋での依頼の際に、色々大変だった疲れもあるのだろう。



 試しにちょっと、頬をつついてみるハクロ。


むにっ

「ん‥‥」

【!!】


 起きそうになったので、慌てて後ずさるハクロ。


 ドキッとしたが、とりあえず起きなかったようで、ほっと息を吐いた。


【‥‥‥でも、どうしましょう】


 普段であれば、そこまで気にすることもなかった。


 けれども、この状況下であれば否応なく意識させられるのだ。




……あと、アラクネの本能的なモノも少々感じていた。


 そもそも、なぜアラクネのような人の姿に似たモンスターがいるのか?


 それは、同種族同士での交配よりも、人間の方が繁殖力に優れているというのがあるらしい。


 ゆえに、人間を利用すべく人の姿に似て進化するようになった‥‥‥とも言われているそうだ。



 そして今、ハクロはそのアラクネの本能も少々出てきていた。


 けれども、まだ関係的には早いようであり、今の関係を壊しそうで怖いのもある。


 だが、それでも…‥‥っと、もやもやする気持ちを抑え、とりあえず寝て心を落ち着かせようと努力するのであった…‥‥


【あああ‥‥‥こういう時に限って、何故私は意識を…‥‥】




……ちなみに、彼女はあずかり知らなかったのだが、実は風呂場には覗き魔がいたらしい。


 だがしかし、ファンクラブが出撃してフルボッコする前に、彼らは自ら作り出した血の海に沈みこんでいるようであった。


「こいつら、悔いの無さそうな顔で倒れているな‥‥‥」

「我々でさえ、見れないのだ」

「よし、もごう。そうしよう」


 そのまま覗き魔たちは、人知れず連行されるのであった‥‥‥‥






平穏な中、蠢く者たちがいた。

いや、それはもはや「者」と言って良いのだろうか?

責任感の無い行為は、周囲へ被害を及ぼし‥‥‥

次回に続く!


……なお、ハクロは知らないことであったが、この後使い魔用の風呂場にも、きちんとした覗き対策が施されるのであった。

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