エピローグ
本日3話目‥‥‥というか、最終話?
‥‥‥その後の、その世界の話をするとしよう。
シアンの亡き後、数日もしないうちにハクロも後を追うようにして亡くなり、既に幽霊となってミスティアと共に、姿を消した。
シスターズもともに姿を消し、彼女達の形跡が残っていたのは3つの移動拠点であったが‥‥‥それらもまた、人々が気が付いたときには失われていた。
けれども、それでも無くなっていないものはある。
シアンの養女であったロールの方は北の国を再興させ、新たに長い時を栄える国を作り上げた。
そして、シアンの子孫たちもまた、栄枯盛衰という言葉が関係ないように、各地で行動を起こしまくり、様々な国を作り上げていった。
けれども、いつしかその血は薄れ、魔王の話なども廃れていき、結局すべては無かったかのように戻っていった。
どうしてそうなったのか、そうなる原因をしるとある悪魔から言わせてみれば…‥‥それはバランスが取れるような造りになっているからだという。
どこかで栄え過ぎたのであれば、その滅びもまた素早くやってくるのだとか。
‥‥‥それからどれだけの月日が過ぎたのか、気が付けば新しい時代となっていた。
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「…‥‥あーもう!!つまらないじゃん、古代研究の授業なんて!!」
「そりゃ仕方がないですよー。だって私たちの知らない、かなり大昔の幻の時代とも言われる話ですからね」
ぷんすかと怒るように歩く少年に対して、彼の幼馴染の少女がそう返答する。
「だからといって、王子にその教育は必要ないじゃん!!今は今だし、古代を羨ましがるような事よりも、発展させていくのが大事なのに、何でそこに誰も着目しないのさー!!」
‥‥‥シアンたちがいた時代は、この時代になると既に幻の時代と言われていた。
使われていた魔法も失われ、魔道具自体も消え失せ、残っているのは人の力のみ。
それでもなお、なんとか水車などの動力源を作りあげ、発展しているのだが‥‥‥それなのに、幻と言われるようなことばかりを求めるような大人たちに、彼はいら立っていたのである。
「何事も、常に発展!!過去を振り返るのも大事かもしれないけど、それにすがるくらいなら新しい発見と化すればいいんだもんねー!!」
「だからと言って、古代文明の遺跡に直接突撃するのもないですよー!」
王子の発言に対して少女がそう叫ぶも、彼の歩みは止まらない。
少女は少女で、王子の将来の婚約者候補であり、そのために色々と鍛えているのだが‥‥‥それでも子供な自分だと、不安になってしまう。
そして今、彼らがいるのは、かつて幻の時代の中で、特に栄光を誇った時に存在したと言われる、魔王の住みかと言われる遺跡。
もうすでに何千年も手入れされていないというか、あちこち崩壊の危機にありそうな、枯れた湖の側にある城の中に突撃していたのだ。
「良い発見こいよー!!発展させるような材料来いよー!!先生の頭を剥げさせるような道具とか見つけたいなー!!」
「さらっと本音が出ていませんかね!?」
ついツッコミを少女がいれた…‥‥その時であった。
ガコン!!
「「…‥‥ん?」」
足元の何かを踏んだ音がして、彼らは嫌な予感を覚える。
そして、恐る恐る後ろを振り返ってみれば…‥‥
ドドドドドドドドド!!
「て、鉄砲水ですよ!?」
「なんでそんな仕掛けが――――――!?」
「「うわあああああああ!?」」
…‥‥そして流されること数分ほど。
思いのほか短い時間ではあったが、彼らはびしょぬれになっていた。
「というか明かり失くしたー!!」
「一番ヤバイ状態ですよーーー!!」
その事実に気が付き叫ぶも、どうしようもない。
どうした者かと考えていると、ふと王子はある物に気が付いた。
「‥ん?なんだ、あれ?」
よく見渡せば、流された先の奥深くに、奇妙な扉があった。
今の水流で洗い流されたがゆえに出来たようだが‥‥‥なんとなく、その先にいけばどうにかなるかもしれないという予感を感じた。
「どうしましたか、王子?」
「なんか、あの扉に向かって見ようかなと」
どうにかなるような予感は、どこから来るのかはわからない。
けれども、それが何故か、同時に物凄い呆れる結末が待っているという警鐘も鳴らしている気がしなくもないが‥‥‥それでも、直感で感じるのであればそれに従った方が良いだろう。
そう思い、彼がその扉に手をかけると、思いのほかあっさりと開き…‥‥地下へと続く階段が現れた。
「なにこれ?地下室への扉?」
「あれ、でも前に先生はここには地下室が無いみたいな話をしていたはずですよね?」
疑問に思いつつも、少女の方もまた、王子同様にここを進めばいいのかもしれないという予感を抱き、手を取り合って共に進む。
そして、階段を下りた先には広い部屋が存在しており‥‥‥‥そこには、大量の棺のような物が保管されていた。
「‥‥‥古代の、お墓だったのかな?」
「なんか不気味なんですが」
思わず少女ががしっと王子にしがみつくが、彼は気にせずに奥へ進んでいく。
気が付けば暗いはずなのに、何故か明かりがともっており、周囲が良く見えるようになっていたのだが‥‥‥それでも、そこに保存されている棺の山は数えきれない。
そうこうしているうちに、いちばん奥にたどり着くと…‥‥そこには、他の棺とは違うものが鎮座していた。
なんというか、真っ黒な棺桶と言えば良いのだが蓋が無いようにも見えるし、ただの切り崩した黒曜石にも見えなくもないだろう。
「何だろう、コレ?」
そう思い、つい王子がそれに手を触れた‥‥‥‥その瞬間であった。
ヴィ――――――ッツ!!
「うわ!?」
「きゃぁっ!?
突然、その物体から大きな音が鳴り響いた。
【生体反応感知、システム認識作動開始…‥‥認証可能ナ対象ヲ確認】
何かこう、機械音声のような音が周囲に響きわたる。
【コノボックスニ触レタ者ニ警告。直チニマスター登録ヲ行ワネバ、機密保持目的デ自爆スル】
「自爆!?」
【可能半径3キロ圏内。登録ヲ推奨致シマス】
「さらっととんでもない範囲で出てきたんですけれど!?王子、どうにかしてくださいよ!!」
「どうにかしろって言われても、どうしろと!?」
突然のことに慌てふためく二人だが、どうやら相手の方は冷静らしい。
【魔力認証、今回無シ。ワカラナケレバ触レルダケデ完了デス】
「とりあえず触れればいいんだな!?」
【ソウデス】
何がどうなっているのかはわからないが、取り合えず彼は言われるがままに、もう一度その物体に手を触れた。
【認証中‥‥‥‥認証終了。該当データ確認完了】
そう告げたかと思えば、ぶしゅーーーっと突然音がなり、箱から煙が漏れる。
何事かと思い、思わず彼が少女をかばうように前に出て身構えると‥‥‥‥蓋が無かったはずの物体が開き、中から一人の裸の女性が出てきた。
「‥‥‥アー、アー、あ、音声機能再稼働確認。再構成終了、今回は全領域、100%稼働確認」
そう言いながら、彼女はその体にどこからともなく侍女が着るような衣服を身に纏い、王子の元へ歩みでる。
そして彼の姿を確認して…‥‥口を開いた。
「…‥‥起動完了。マスター登録によって、貴方様を私の主と認めました」
にっこりと優しく微笑みながら、彼女は金色に光った目を彼に向ける。
「えっと‥‥‥‥誰?」
「どなたなのでしょうか?」
「私デスか?私は正式名称『万能家事戦闘人型ゴーレム01』デス。どのように私を呼ぶかについては、、そちらの都合で良いデスが…‥‥前のご主人様には、『ワゼ』と呼ばれてまシタ」
…‥‥突然の出来事に、王子と少女は驚愕しつつも、何が起きたのか直ぐには理解できない。
けれども今は、とりあえず目の前の起きていることに対処するしかないようだ。
「となると…‥‥ワゼ、と呼べばいいのか?」
「それでいいデス。ええ、今世の貴方様にもそう呼ばれることを、私は嬉しく思いマス」
そう言いながら、彼女は恭しくスカートを上げ、礼をとる。
「それではご主人様、今後ヨロシクお願いしますと同時に…‥‥命令をどうゾ」
命令が来るのを心底楽しみに、そして待ち遠しそうなそぶりに、どうしたものかと王子と少女は顔を見合わせ、悩む。
‥‥‥そしてその出会いから数日後に、失われていた文明の根本の発見という情報に、彼らが怒っていた古代学の教員が驚愕しすぎて、全部の体毛が抜け落ちたのは言うまでもない。
それと同時に、波乱万丈な日々がやってくるのだが‥‥‥‥それはまた、別のお話。
―――――完―――――
‥‥‥それはもう過去のお話。
魔法も何もかも失われた世界だが、それは今の状態での話。
ここから彼らが新しく見つけだし、メイドの無茶苦茶さに驚く羽目になるが…‥‥多分、大丈夫だとは思う。
何にしても、これでこの物語は終わりです。
長い間、ご愛読感謝いたします。
この作品を作る前のシリーズからのスピンオフ的な話しだったのに、なぜここまで長続きしちゃったのか‥‥‥やった後でも謎ですが、最後に勢いでやらかしていました。
それでも、本当に終わりでも見てくださった読者がありがたいです。
どうぞ、これからの彼らの動きを想像して楽しんでいただけると幸いです。
どうも、ありがとうございました!!




