#424 良い話題には謎の良い話題も続くのデス
SIDEシアン
「‥‥‥ようやく、本当にようやくですわ」
ぐっとこぶしを握りしめ、歓喜するかのように体を震わせるミスティア。
その様子を見ると、どうやらよっぽど嬉しかったようだ。
「選挙で決めようとしたのに、何故か巻き添えにされ、在位する羽目になったけれども‥‥‥ようやく隠居できましたわぁぁぁぁあ!!」
「王位を譲って、無事に女王から皇后とかそう言う風に呼ばれるようになるんだっけか」
昼間にあった、退位式と即位式。
この度無事に、彼女は女王の座を息子の一人であるラクスに譲ることができ、ようやくというか王位の立場から降りることができた。
まぁ、そもそも最初からその地位を望んでいなかったのに、成り行きでならされてしまった女王という立場。
なので、責務の山とかに非常に疲れていることが多く、なんとか譲る時まで頑張って来たのだが‥‥‥それが報われたとも言えるだろう。
でも、流石というか、この国の王族の血筋というべきか、実はこの退位までの流れは非常に苦労していたりする。
何しろ、年月が経てば経つほど、それなりに彼女との間にも子をなし、新しく王子や王女が誕生していたりしたので‥‥‥
「王位継承権争いが起きるかと思いきや、押し付け合いが起きるとはなぁ…‥‥あの時の再演みたいな感じがしたね」
「今なら、あの時のお父様が選挙に踏み切ろうとした気持ちが十分わかりましたわね…‥‥」
ワゼによる王族へのきちんとした教育を施しつつも、どうもこの王家の血筋の特徴なのか、王位継承押し付け争いが起きてしまったのである。
できればその王子・王女に王位について欲しい派閥などが生まれたりもしたのだが、当の本人たちが王位継承をできるだけ逃れようと画策したりしたので、決めるのに苦労したのだ。
ああ、なんか昔あった王位継承権争いの果てに起きた選挙を思い出すというか…‥‥何でこの国の王族は王位継承をできるだけ避けようとしてしまうのだろうか。
仕事の量の多さとか大変さとか、その他諸々の責務をこなせるだけの能力を全員持っているのだが‥‥‥その能力を逃走に使うほどに利用されるとこちらが苦労するのである。
というか、息子・娘たちが王位を嫌がるのであれば、王家の遠い親戚筋にという案も上がっていたが‥‥‥そちらはそちらですでに手を回されていたからなぁ。
「とはいえ、なんとかラクスが国王の座についてくれたのは良かったけどね」
「非常に苦労しましたわね…‥‥でも、受け入れてくれたのは良かったですわぁ…‥‥」
ううっと、うれし涙を流しつつ、ふき取るミスティア。
息子に責務を負わせるのはちょっと心苦しい所もあるが、それでも自分の意思で最後には決めてくれたようだ。
その分、王位を逃れようとしていた兄弟姉妹もその心に感動したのかその責務を手伝ってくれるようである。
「まぁ、そもそもフロンやその他のシスターズがいますので、ある程度城内での王族の責務は減りますけれどネ。ミスティア奥様の在位初めに比べて、仕事量は45%カット済みデス」
「そんなに減る物なのかな?」
「ハイ。他国との交流用のやり取りの中に、訛りがあったり、長ったらしい言い回しなども存在してますので、それらを要約するのに時間がかかったりするデータもありましたからネ。それに対応できるすべを身に付けさせつつ、処理を施すようにしたのデス」
その他にも、他国での晩餐会の招待によるドレス選びや、領地視察の際の情報収集。
その他諸々多く合った仕事なども合理的に効率的にできるようにしつつ、冷たく強欲にならないようにバランスよく施しているようだ。
「それでも、ようやく王位から離れられたのを嬉しく思いますわ…‥‥女王という立場もこれでようやくお役御免になって自由に‥‥!!」
【感極まってますねぇ…‥‥でも、良かったですね】
「ええ、そうですわ‥‥‥本当に、本当に‥‥‥ううっ」
嬉しさがあふれ出るのか、見ているだけでも自由になった気持ちが嬉しすぎるオーラという者が出ているというか、ミスティアは本当に幸せそうである。
一応、隠居したとはいえそれなりに国事に顔を出さなければいけない時もあったりするが‥‥‥それは微々たる負担にしかならず、王位を持っていた時に比べるとはるかに楽だとか。
「あとはもう、新しい後継ぎとかも見たいのですけれども‥‥‥」
「そっちはもうちょっとかかるかも。ハクロとの孫もいるけど、こっちがこっちでなかなか難しいからな」
【ええ、でももうすぐおばあちゃんと呼ばれるとは思いますよ?】
「‥‥‥うーん、そう呼ばれるのはちょっとどうなのかと思ってしまいますけれどね」
見た目的には、僕の影響も受けてかまだまだ若々しいからなぁ…‥‥この見た目でおばあちゃんとかおじいちゃんとか呼ばれても、無理があると周囲に言われてしまうだろう。
というか、容姿があまり変わらないのは良いんだけど、実感がわきにくくなるという弊害があるんだよね。
何にしても、王位からも解放され、女王ではなくなったミスティア。
普通の人であればまだ惜しいとも思えるかもしれないが、重い責務が無くなったことによりミスティアは幸せそうな笑顔を浮かべるのであった。
「というか、これで隠居ってことになるし…‥‥隠居地を決めて、そっちに引っ越すべきかな?」
「そうですわね。お父様は温泉都市でしたけれども‥‥‥わたくしたちの場合は、シアン、あなたのもともと住んでいたハルディアの森辺りが良さそうですわね」
「その方が良いかもね。ああ、でもワゼの移動拠点とかは‥‥‥いや、あれは別荘地だから良いか」
というか、あそこを隠居地にしたらそれはそれで神獣とかが多いし…‥‥うん、やっぱり隠居地を決めるのであれば、最初にいたあの森の中の家にしたらいいかも。
「湖の側に城もできているが…‥‥そこがちょうど良いか」
【何かと開発しているようですけれども、落ち着けそうなのはそこですしね】
「一応整備も欠かさずしてますので、何時でも引っ越し可能デス」
…‥‥今でこそ、ミスティアの王配となったがゆえにボラーン王国の子の王城内に住まいがあるが、元々僕とハクロがいたのはハルディアの森。
あっちの方に、隠居地を作って住まう方が楽だからね‥‥‥‥
「ああ、そう言えば報告がありまシタ」
「何?」
「ドーラさんが、魔界で魔界植物との結婚式を挙げるそうデス」
「‥‥‥ドーラって新婦?新郎?どっち側になるの?」
「それは謎デス」
…‥‥というか、植物にも結婚式ってあるのかなぁ…‥‥そもそも性別があるのかどうかという部分も謎なんだが‥‥‥うん、めでたそうな話であれば、気にしない方が良いのかもしれない。
そもそも植物に結婚の概念があるのかという話もある。
まぁ、良い話しに続けてくるのは良いのだけれども、謎が謎を呼ぶなこれ。
何にしても、そっちはそっちで良い家庭を築き上げ‥‥‥イメージ付きにくいなぁ。
次回に続く!!
…‥‥なお、今回は王位継承権選挙はなかった模様。話には出ていたけど、最終的には己の判断に任せた結果ではある。
「というかやったところで、同じようにできるか分かりませんもの」
「当時に比べて、子供たちのやれる能力が大幅に上がり過ぎているからなぁ…‥‥」
ワゼによる教育機関の力でもあるが、そのせいでやりにくくなった弊害かもしれない。できる子が増えると、その分やりにくいんだよなぁ‥‥‥




