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閑話 たまには季節も併せてデス

‥‥‥シャンシャンシャンと鈴の音が鳴り、空からは雪が降ってくる。


 前世ではありえないようなことでも、今世ではあり得てしまう不思議というのは、何時になっても驚きを与えてくれる。


 まぁ、ちょっと幻想的なのは良いのだけれども‥‥‥‥



「‥‥‥どうして、サンタクロースの格好を僕らがしないといけないのだろうか」

「悪魔の俺も巻き添えにされて、何でサンタにならなければいけないんだろうか‥‥‥」

「ご主人様もゼリアスさんも、諦めて受け入れましょウ。流石に私でも、断ることができませんでしたからネ」

「今晩中にしないといけないし、溜息を吐いている暇なんで無いですよー」

「「はぁ‥‥」」


 僕と悪魔ゼリアスは、そろって溜息を吐いてしまった。






‥‥‥なぜこうなったのか、思い返してみて3日ほど前。


 とある一通の手紙が、子供たちと遊んでいた僕らの元へ届けられたのだが…‥‥その差出人がまさかの人からのものだった。


「え?ワゼ、なんて?その手紙、誰かだって言った?」

「サンタクロースと名乗る者からデス」

「‥‥‥ええ?」


 サンタクロース。それは、前世のクリスマスの季節になると名前があふれ出てくる者。


 サンタは存在するかしないか、プレゼントは貰えるのか貰えないか、いたとしてもその限度はどこまでなのか等、何かと話題になる人物。


 とはいえ、前世の家族の中ではそんなものはお目にかからず、クリスマスなのに両親が互いに別の相手と不倫旅行行ったり、兄がやらかしで何処かへ行って一人ぼっちなことが多かったゆえに、僕自身には縁が無かったのだが‥‥‥‥



「サンタクロースより通達で、今年のブラックサンタに私が、サンタにご主人様と後二名ほどが選ばれ、指定時刻に集合するようにというものですネ」

【あー‥‥‥シアンがサンタ役に選ばれたのですか‥‥】

「しかも、ワゼさんがブラックサンタって…‥‥何を考えてますの、サンタさん」

「?」


‥‥‥なにやら話に関して知っているのか、複雑そうな顔をするハクロに溜息を吐くミスティア。


 どういうことなのか話を聞いてみれば…‥‥驚くべきことに、この世界にはサンタクロースが存在していた。


 まぁ、魔法とかそう言うのがある時点で、いてもおかしくはないかなーっと思ってはいたのだが‥‥‥どうやら本当にいたらしい。


 ただ、正確に言うのであればこの世界には3種類のサンタが存在しており、僕の知っているようなサンタはその一種類に入るらしい。



「データによれば、差出人の詳細は『初代サンタクロース』デス」

「初代って、どういうことなのかな?」


 カクカクシカジカと詳しい説明を受けてみると、次のような内容だった。



―――――――――――――――――――――

『初代サンタクロース』

この世界にて最初のサンタクロース。

全てのサンタの元にして、引退後は年に一度、サンタクロースとブラックサンタクロースを選定する役目を持ち、選定された人物はその役目を果たさなければいけない。

果たせないほどの事情が無い限りはやらなければいけないが、望む報酬をくれるので果たさない人はいない。


『サンタクロース』

初代に任命され、その年のサンタとしての役目の意味を持つ。

とある時期のとある一夜だけに活動するだけだが、良き人々のために全世界を回り、その望みを可能な限り叶えさせていく。なお、ちょっと重労働。

プレゼント袋が最初に支給され、それからなんでも人の望みに対するプレゼントを出すことができる。


『ブラックサンタクロース』

サンタクロースが良い人へのプレゼントを与える役目を持つのであれば、こちらは悪人限定のサンタクロース。

いかなる悪人と言えども望みは持っており、その望みを叶える…‥‥のではなく、非常にすさまじい罰を執行する役目を持つサンタクロース。

こちらのプレゼント袋は、その悪人に効果的な罰執行用の道具が何でも出てくるようになっている。



―――――――――――――――――――――






‥‥‥とまぁ、そんなわけで、どういう訳か僕らがサンタに選ばれてしまい、現在に至るわけだ。


 なお、同じく後二名のサンタクロース役として選ばれたのは、悪魔ゼリアスとその妹の魔女ミーナであった。


「重労働って部分が気になるんだけど…‥‥いや、そもそもサンタって一人なイメージがあるような」

「初代は一人でその役目を両方ともこなしていたんだがな…‥‥確か、結構前に腰を痛めて引退してから複数人で行うことにしたそうだ。でも、何で悪魔の俺までサンタにされなきゃいけないんだよ…‥‥」

「サンタ業は全世界を回る分、あちこちへの移動の疲れもあるのよねぇ。数年前にも一度選ばれて、回るのは大変でしたよ」

「おや、既に経験者でしたカ」


 どうやら一度経験したことがあるようだが、雰囲気的にはゼリアスの方が疲れているようだ。


 というのも、意図的なのかそうでないのかは不明だが、ある程度分担するようになっているようで、各自の体力を想定してのプレゼント配布のようだが…‥‥体力があればあるほどその移動と運ぶ量が増え、より一層疲れるらしい。


「しかし、ブラックサンタは私だけですカ…‥‥何ででしょうかネ?」

「ワゼの場合、シスターズもいるからじゃないかな?」


 人海戦術を考えるのであれば、トップの方にいるワゼ自身が請け負っても不思議ではない。


 ただ、それだったら普通のサンタ役もワゼに回されそうだが…‥‥どうもそのあたりは僕らにも分らないような初代の都合が存在しているらしく、割り振れないのだとか。


「まぁ、この日のためだけのサンタ服とか結構暖かいから良いか。‥‥‥でもこれ、普通の衣服のように見えるけど、なんか違うような?」

「分析したところ、完全未知の素材ですネ。しかも、サンプルを取りたくともできまセン」

「初代サンタ自体、かなり謎の多い人物だったからな…‥‥まぁ、指定された時点で、人間だろうと悪魔だろうと、神だろうと、その他なんであろうともやらされるのは変わらないけどな」


 何にしても、褒美とかもあるのならば、うだうだ文句も言わずにさっさとやってしまうのが良いか。


 魔王という立場でもあるけど、こういう時ばかりはサンタという立場も悪くはないからね。


「ついでに預言者のやつも去年あたりブラックサンタになって、選定していたな…‥‥」

「さらっと怖い話が混じってないかな?」


 ブラックサンタ‥‥‥悪人限定だけに、それがどの様な人物か見定めることができる分、うってつけなのかもしれない。


 でも、サンタの決まりごととして毎年同じ人物はダメというらしいし…‥‥まぁ、そのあたりはもう考えない方が良いだろう。



「何にしても、こういうクリスマスの時期限定で、サンタになるのも別に良いか。夢を配ったあとは、その褒美も僕らにあるし、そのために頑張ろう!」

「ええ、やっていきましょウ」

「楽しんだもの勝ちですからね」

「俺的には、悪魔がやって良いのかという疑問があるが…‥‥気にせずにやってしまうか」


 とにもかくにも、選ばれたのであればやってしまえば良い。


 サンタをする日は聖夜でもあり、誰も彼もがプレゼントを心待ちにして、楽しむ日だからね。


 こういう日にはどこの国でも争いごとを辞め、平和に暮らすそうだし‥‥‥‥平穏を願うのであれば、このプレゼント後の褒美で願えば良い。


「それじゃ、やっていこう!!」


 そう口に出して気合いを入れ、僕らはサンタクロースとして各地を巡り、プレゼントを配っていくのであった‥‥‥‥




「ところで、サンタ服も前世のイメージ通りだけど…‥‥ワゼの場合、ブラックサンタだけあって黒いサンタ服だよね」

「サンタメイド服デス。初代、きちんとそのあたりを分かって支給してきたようデス」

「んー、それはそれで良いのかもしれないけど…‥‥ミーナさんの方もだけど、何で僕らより薄着なの?」

「あの初代、異世界にも巡っているそうで、ソーシャルゲームにはまっているらしいからな‥‥‥」


‥‥‥夢も何もない、初代サンタであった。俗世に染まり過ぎてないかな?


 聞かなかったことにして、サンタクロースとして楽しむか…‥‥

世界は多くあるようだし、こういう役目を与えられてもいいかもしれない。

サンタとして夢を配って、あちこちへさぁ行こう!

でも、ワゼのブラックサンタの場合、悪人には夢ないけどね…‥‥良いのかこのサンタ?

次回に続く!!




‥‥‥たまには季節ネタにも走りたい。というか、つい走ってしまった感じがする。

サンタネタは定番だけど、やったことないからね‥‥‥‥季節ネタに作者、合わせることできないことが多いからね。あと、この作品自体そろそろ終盤が見えてきたし…‥‥こういうのもいいかなって思った。

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― 新着の感想 ―
[一言] サンタクロースが良い人へのプレゼンを与える役目を持つのであれば、こちらは悪人限定のサンタクロース。 「プレゼンを」 → 「プレゼントを」 でしょうか? メリークルシミマス!(実はイヴ生…
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