表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
445/459

#415 終わらせませんよ、そう簡単にデス

SIDEアルドリア-----


‥‥‥かつては、アルドリア王国と呼ばれた国。


 けれどもその国は今、王国という形を失くして地名となっていた。


 というのも、その国を治めていた国王が消えうせ、王族の地は途絶し、人々はその地を手に入れたのは良いのだが…‥‥既に降伏している者がほとんどではあるが、その地に残っていたのは選別されて残された者たちであり、このままいてもどうしようもない者ばかりなのだ。




 であればどうするべきか?


 各国での話し合いが行われた結果‥‥‥いったん領地ではなく、ただの地名とした。


 地名と化した後は後の経過を見守るために、各国が引き上げれば、そこに残されたのはその国の国民だけではあったが‥‥‥そこはもう国ではなく、ただの無法地帯。


 ゆえに、法が無いのであれば自分達で収めようと残された者たちは動き出した。


 けれども、そこに残されているのは本当にどうしようもない人たちだけであり、互に補うこともできない、


 互いに主張し合い、協力することはなく、何もかも手中におさめんがゆえに争いを起こし合い‥‥‥‥結果として、何もせずに滅んでいく。


 その結果として、ひと月も経たないうちに人が消えうせ、ようやく静かになったところで各国によって分割されて行くのであった‥‥‥‥






‥‥‥そしてアルドリア王国が消えうせたその頃。


 海上にある島では、その国の王であったラッパリアが住んでいた。


 いや、強制的に移住させられたと言って良いだろう。脱出できたと思っていたら、目が覚めたその時にはこの島に放置されていたのだから。


 船も何もなく、食料だけが残されており、この島に彼一人だけが取り残された。


「なんでだ!!お前たちはどこへ行ったぁぁぁ!!」


 裏切られたと思い、臣下の名前を口々に叫ぶも、その声に返答する者はいない。


 いや、そもそも裏切る裏切らないの前に、その臣下たちが既に彼の知っている者たちではなかったのだが‥‥‥それには気が付かなかったようだ。


 無理もないだろう。名前は覚えても、詳しい部分まで見ておらず、いつの間にか入れ替わっていたことすら気が付けなかったのだから。


 そしてここまで連れてきたのも、その入れ替わった者たちであり、最初から裏切ってもないのだから。




 それからの日々はひどい物だった。


 食料があれども食べても食べても飢餓感は残っており、やめることができない。


 真夜中になれば辺り一帯から急におどろおどろしい声が響き渡り、悪霊・怨霊と言ったような類が追いかけたりするなどの強襲が続き、眠ることすら許されない。



「くそぅ!!どうしてだぁぁぁ!!」


 叫び疲れつつも、感心するほど彼の腐った心はあきらめていなかった。


 この島を脱出して向かえば、何処かにたどり着くと考え、その作業に取り掛かったのだ。


 わずかに残された食料の山でも暴飲暴食しつつ、島に生えていた木々を根性で切り倒し、いかだを作る。


 出来の悪い王だったとはいえ、それでも人間窮地に立てばある程度できるようになるのか、その勢いはその王を知る者が見れば驚くほどであっただろう。


 そして日々の真夜中の怨霊や飢餓感に襲われつつも、根性でいかだを作り上げ、脱出できたその晩…‥‥あっという間に嵐に見舞われ、再びここへ戻ってしまった。


 それでも何故か、島の食糧は尽きることが無く、切り倒したはずの木々も元通りになっていたので、諦めることなく国王は脱出を狙っていく。


 何十回、何百回、何千回…‥‥何度も何度も諦めずに動くその様は、あの腐っていた王にしては凄まじい執念を感じさせる。


 けれども、その作業がどれも完全な無駄。


 なのに、どうしてそもそも腐っていた王が、急に諦めることなく動けるようになったのか…‥‥それは彼自身には理解できない。


 

 何故かそうしないといけない(・・・・・・・・・・)という心からの思いが湧きだし、もう動けないのになぜか体が動き、休むことができない(・・・・・・・・・)


 意志に背きそうで背いておらず、けれどもどこかで休みたい自分がいるのにそうさせてはくれない。


「何故だ何故だ何故だ!!」


 そう叫びつつも、ここから脱出するという目標は変わらず、諦めずに体が動いてしまう。


 脱出できたとしてもその後の事も考えることができないが、それでもただここから出るだけの動きしかできない。


「何故だぁぁぁぁぁぁ!!」


 体の動きや想い、それとは別の叫びが口から出るのに、それでも辞めることができずに、いかだをまた作り始めるのであった…‥‥‥




――――――――――――――――

SIDEワゼ


「‥‥‥っと、このように、国をおろそかにした結果『永遠に働き続ける罰』が下る可能性があるのデス。なので、あなた方が王位についたとしたら、このような目に合わないように気を使う必要がありマス」

「でもそれって、普通はやらないような…‥?」

「むしろその映像の人が、過激にやり過ぎた結末のような気がするわよ?」


‥‥‥ボラーン王国王城内。


 王族用教育室の一角にて、投影された映像を見ながらワゼが説明を終えると、ラクスとレイアがそう質問する。


 学園があるのでここで勉強する意味はないかもしれないが、それでも王族用の教育はある。


 そしてその王族への教育のために、この映像を彼女は用意したのだ。


「ええ、普通はしないのデス。王という者は民のためを思いつつ、彼らを動かす者。けれども、そのありようが思いっきり間違った方向性になったらというのを、再現した映像ですからネ」

「でも、夜中に寝る際に怨霊とかはないんじゃないかな?」

「流石にちょっとやり過ぎかなと思うほどのですが‥‥‥無いとも言いきれないのデス。人の恨みとかは、このような形をとって襲うことがありますし、また使役して利用してくる輩もいたりしますからネ。まぁ、この映像は例として出すために、わざわざ特殊加工しているのですが…‥‥」


 そう答えつつも、本日の教育は終了という事で、映像が消される。


 そこに移っていたのは、とある国の愚かな王の末路らしいが、そのような愚かな末路に陥りたくはないだろう。


 大げさにやり過ぎたかなと思うところもあるが…‥‥それでも、反面教師としては十分に役立つ映像。


 今後はもう少し増やして、ある程度レパートリーを増やし、様々な場合によっての末路映像も集めた方が良い。


「まぁ、伝手はありますし、今後も増えるでしょウ。本当は増えない方が良いのですが‥‥‥」

「ええ?だって再現した映像をやっているだけなんでしょう?たとえ話なんだしさ」

「たとえ話ですが、実話を元にしてますからネ」


 王子たちには、ただ単にこのための特別キャストで作り上げた映像と話しているが、真実は違う。


 けれども、実話を元にしたという点では間違ってはいない。



「何にしても、愚か者にならなければいいだけの話ですし、そのことを教訓にしてくだサイ」

「「はーい」」


 ワゼの言葉に彼らはそう返答し、両親と共に話したりするためにその場を出ていく。



「‥‥‥そもそも、ご主人様のご子息方を愚か者にはさせませんけれどネ」


 たたたっと元気に駆け抜けていく彼らを見て、ぽつりと彼女はそうつぶやく。


「まぁ、あそこに食料を出し続けるのも、遠距離からの薬物操作なども費用が掛かりますし…‥‥ちょうどいい頃合いで、解放してあげましょうかネ。預言者の元へ引き渡すので、解放と言えないかもしれませんが‥‥‥」



…‥‥何にしても、その真実は彼女及び姉妹機たちしか知らないだろう。


 そして今日も、愚かな王は映像通りに動くだけであった‥‥‥‥


‥‥‥愚か者の末路は、何も命を失うばかりではない。

生きて償うという事もあるだろうし、償いにもならない、ただの罰だという事もある。

何にしてもそれは、その者が結局招いたことなのである…‥‥

次回に続く!!



‥‥‥ちょうどいい反面教師の悪すぎる王としてのデータは取れた模様。

でも今後も増やしたくはないけど、教育に利用できそうでもあり、ちょっと悩みどころだったりする。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言]  いや、強制的に自由させられたと言って良いだろう。脱出できたと思っていたら、目が覚めたその時にはこの島に放置されていたのだから。 「自由させられた」 → 「移住させられた」  真夜中…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ